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第52話 早く帰ってきて
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駅前も普段に比べ人が多い夏祭り当日。
「なぁなぁ、一緒に祭りに行かないか」
そんな捻りも無いセリフでナンパをしている男がいる。そんな男を氷点下の視線で見やりながら相手にもしないのは腰までの黒髪をなびかせ、黒地に艶やかな百合をあしらった浴衣を着こなした少女と、困惑しながらも目をそらしている薄紫色の地に桜の花を散らした浴衣を可愛らしく着つけ栗色のショートボブを揺らす小柄な少女。桜と楓の2人だ。
「しつこいですね。待ち合わせしているだけだって言っているでしょう。いい加減にしないと警察呼びますよ」
「ちぇ、そっちの栗色の髪の子だけでも一緒にいかないか?」
「え、いえ。お断りします」
「そう言わないでさぁ。楽しいよ。なんでもおごるし」
そう言って桜の手を握ろうと手を伸ばす男だったけれど、するりと躱す桜。
「逃げんなよ。いいことしようぜ」
「お断りしたはずです」
待ち合わせ場所に着いた剣崎の前にはナンパをあしらう桜と楓の姿があった。あわてて駆け付ける剣崎。
「おまたせ。で、この男ってお前らの知り合い?」
「違うわよ。こんな下品な知り合いはいないわ」
「ふーん、それじゃ移動しようか」
「てめぇ、何を言って……」
「おう、ちょっと後から来ると女神さまと天使さまには虫が寄るんだなぁ」
この状態でナンパ男が引きそうもない状態に多賀が現れると、さすがにスポーツで鍛えた男2人を相手にはしたくなかったようで
「ち、結局男連れかよ」
ナンパ男も立ち去った。
「ふたりとも済まなかった。考えてみれば2人がこんなとこに居れば、ああいったのが寄ってくるのは予想できたのにな。もっと早く来ていれば……」
剣崎が謝罪するけれど
「別に私たちが早く来ただけで、悪いのはあいつなんだから良いわよそんなの。いざとなれば警察でも呼べばなんとでもなるし。気にしなくていいわ」
「そうそう、それにあたしが、あんなのにどうこうされないのは知っているでしょう」
「それでもな」
多賀も申し訳なさそうにしている。
「それより、そろそろ時間なのだけど、理子と藤島君はまだかしら?」
ちょうどそこに2人が到着した。理子は赤地に扇子を散らした浴衣に髪を結い上げ普段より大人の雰囲気だ。「理子、素敵じゃない。大人っぽくて似合ってるわ」
さっそく桜が口にする。
「桜も素敵、可愛い。楓も大人の女の人ね」
キャイキャイとお互いを褒め合う女子3人に圧倒されて黙ってしまっている男子3人。それでも藤島が剣崎の脇を肘でつつく。
「ん?なんだよ」
相変わらずの剣崎を横目に、意を決した多賀が女子3人の中に突撃を敢行した。
「3人とも、凄いな。橘さん浴衣似合ってる。大人っぽくて素敵だよ。華押さんも可愛らしくていいね。北浦さんは……あはは、藤島しか見てないか」
それを見た藤島は、再度剣崎をつつくがどうにも剣崎はこういうったところに鈍感で動きが鈍い。
溜息をついて、それでも気を取り直し
「じゃあ行こう。人出が多いから気をつけてね」
そう言うと藤島はそっと理子の手を取り先に進み始めた。
「おぉ。久しぶりに来たけどやっぱり大きいお祭りね」
桜が笑顔ではしゃいでいる。
「中1以来だものね」
楓の言葉に桜も少ししんみりしてしまった。
ふたりの瞼の裏に浮かぶのは中一の夏休み。わずかな時間をやりくりして愛翔と3人で楽しんだ夏祭り。
「早く帰ってきてよね」
呟く言葉は愛翔に届くことは無い。
そんなふたりの手を理子が引っ張る。
「さ、行こうよ」
「なぁなぁ、一緒に祭りに行かないか」
そんな捻りも無いセリフでナンパをしている男がいる。そんな男を氷点下の視線で見やりながら相手にもしないのは腰までの黒髪をなびかせ、黒地に艶やかな百合をあしらった浴衣を着こなした少女と、困惑しながらも目をそらしている薄紫色の地に桜の花を散らした浴衣を可愛らしく着つけ栗色のショートボブを揺らす小柄な少女。桜と楓の2人だ。
「しつこいですね。待ち合わせしているだけだって言っているでしょう。いい加減にしないと警察呼びますよ」
「ちぇ、そっちの栗色の髪の子だけでも一緒にいかないか?」
「え、いえ。お断りします」
「そう言わないでさぁ。楽しいよ。なんでもおごるし」
そう言って桜の手を握ろうと手を伸ばす男だったけれど、するりと躱す桜。
「逃げんなよ。いいことしようぜ」
「お断りしたはずです」
待ち合わせ場所に着いた剣崎の前にはナンパをあしらう桜と楓の姿があった。あわてて駆け付ける剣崎。
「おまたせ。で、この男ってお前らの知り合い?」
「違うわよ。こんな下品な知り合いはいないわ」
「ふーん、それじゃ移動しようか」
「てめぇ、何を言って……」
「おう、ちょっと後から来ると女神さまと天使さまには虫が寄るんだなぁ」
この状態でナンパ男が引きそうもない状態に多賀が現れると、さすがにスポーツで鍛えた男2人を相手にはしたくなかったようで
「ち、結局男連れかよ」
ナンパ男も立ち去った。
「ふたりとも済まなかった。考えてみれば2人がこんなとこに居れば、ああいったのが寄ってくるのは予想できたのにな。もっと早く来ていれば……」
剣崎が謝罪するけれど
「別に私たちが早く来ただけで、悪いのはあいつなんだから良いわよそんなの。いざとなれば警察でも呼べばなんとでもなるし。気にしなくていいわ」
「そうそう、それにあたしが、あんなのにどうこうされないのは知っているでしょう」
「それでもな」
多賀も申し訳なさそうにしている。
「それより、そろそろ時間なのだけど、理子と藤島君はまだかしら?」
ちょうどそこに2人が到着した。理子は赤地に扇子を散らした浴衣に髪を結い上げ普段より大人の雰囲気だ。「理子、素敵じゃない。大人っぽくて似合ってるわ」
さっそく桜が口にする。
「桜も素敵、可愛い。楓も大人の女の人ね」
キャイキャイとお互いを褒め合う女子3人に圧倒されて黙ってしまっている男子3人。それでも藤島が剣崎の脇を肘でつつく。
「ん?なんだよ」
相変わらずの剣崎を横目に、意を決した多賀が女子3人の中に突撃を敢行した。
「3人とも、凄いな。橘さん浴衣似合ってる。大人っぽくて素敵だよ。華押さんも可愛らしくていいね。北浦さんは……あはは、藤島しか見てないか」
それを見た藤島は、再度剣崎をつつくがどうにも剣崎はこういうったところに鈍感で動きが鈍い。
溜息をついて、それでも気を取り直し
「じゃあ行こう。人出が多いから気をつけてね」
そう言うと藤島はそっと理子の手を取り先に進み始めた。
「おぉ。久しぶりに来たけどやっぱり大きいお祭りね」
桜が笑顔ではしゃいでいる。
「中1以来だものね」
楓の言葉に桜も少ししんみりしてしまった。
ふたりの瞼の裏に浮かぶのは中一の夏休み。わずかな時間をやりくりして愛翔と3人で楽しんだ夏祭り。
「早く帰ってきてよね」
呟く言葉は愛翔に届くことは無い。
そんなふたりの手を理子が引っ張る。
「さ、行こうよ」
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