幼馴染の初恋は月の女神の祝福の下に

景空

文字の大きさ
74 / 314

第74話 取り返しのつかないこと

しおりを挟む
会議室を離れて最初に口を開いたのは楓だった。
「ねぇ愛翔。どうしてこんな時間をつくったの?」
「まぁそうだな。実感させるためかな」
「どういうこと?」
「さっき林さんの保護者、直也さんて人なんだけど、が自分の娘は認めているって言っただろ?」
「そうね。その割には林さん自身は納得してない感じだったけど」
「あの林直也さんて人、エスゲイルのスカウトなんだよ。まぁ俺の担当じゃないけどね。で、楓には話しただろエスゲイルとステラスターのどっちかを選ぶつもりだって。今回の事を理由にエスゲイル断ったんだ。で、金曜日に林さんが休んだだろ、あれはその絡みだと俺は思ってるんだよね。そういう事を共有させるための時間。そうすれば特に斎藤さんには効果抜群だろうな」
「あ、愛翔とスポンサード契約を結びたいって言ってた?」
「そう、林さんの事を聞けば、自分の娘のしでかしたことが跳ね返ってくることを予想できるだろうからね。でそういった部分を共有させて謝罪したほうが良いと思わせる。まぁこんな損得での謝罪には意味は無いけどね。ここまでが今日の第1段階」
「第1段階ってことは第2段階もあるの?」
「あるよ、第1段階が罪を認めて謝罪なら、第2段階は、それに対する罰と補償って感じかな」
「罰と補償?」
4人の疑問の声が重なった。
「いくら事実を認めても、形だけ謝罪して痛みもなく終わりなら繰り返すよ。だから、こういうことをすると痛い目に合うとわからせる必要がある。それに桜も楓も彼女たちが傍にいることに耐えられるか?俺は嫌だぞ。大切な人を傷つけられてそれでも一緒にいる?俺には無理だ」
いつしか愛翔の手が拳を握っていた。爪が手のひらに食い込み、食いしばる歯はガリガリと音を立てる。普段冷静で負の感情を表に出すことの無い愛翔が怒りに震えていた。
 数回の深呼吸で愛翔は冷静さを取り戻し
「そろそろ時間だな。戻ろう」

愛翔たちが会議室に戻ると明らかに雰囲気が変わっていた。席に着いた愛翔は、そんなものは関係ないとばかりに口を開いた。
「結論は出ましたか?」
西園寺校長が代表して答える。
「ええ、こちらの生徒たちが嫌がらせを行った事を認め、謝罪をすると言っています」
それに対して愛翔の返事は冷たい。
「ああ、言葉だけの謝罪など不要です。本心から反省した謝罪ならともかく外部要因によってイヤイヤ行われる謝罪に価値などありませんから」
「しかし、ケジメとして……」
校長が続けようとするのに被せて愛翔が口を開く。
「いえ、不要です。しかし、自分たちが加害者であると認めたのですよね。ならば言葉による謝罪でなく形に残る賠償をしていただきます。また、こちらから要請するようなものではありませんが学校からも厳正な処分をされることを希望します。私たちはこのような一方的な嫌がらせをしてくる方たちと机を並べて高校生活を送りたくありません」
「賠償だと、処分だと謝罪すると言っているのだからそれでいいじゃないか」
「謝罪されても時間は戻りません。心の傷は残るんです。本心でない謝罪になど、なんの価値もありません。それを補うのが補償であり、罪を犯した者には罰が与えられるのが法治国家での原則です。それも無しで終われば彼女たちは本当の意味での反省をしないでしょう」
「結局は金でしょう。金が欲しいから、こんな事をしたんでしょう」
加害者の女生徒の一人が叫んだ。
「ならば、別の何かで補償をしてもらってもいい、こちらが受けた被害に相応したものを提示してもらいたい」
「だから謝るって言ってるじゃない」
「ふざけるな!謝ればすべて済むとなど思っているのか。いい度胸だ、俺がお前の顔を蹴りぬいてやろうか。サッカー選手の蹴りを甘く見るなよ。二度と見られない顔にしてやる。そして『申し訳ございません』と謝って終わりでいいんだろう。お前たちの言っていることをそういう事だ」
「ぼ、暴力と一緒にするな」
「は?一緒なんだよ。知らないのか心を傷つける行為は傷害罪に問われるんだ。つまりお前たちが行ったのは犯罪なんだよ。良いか、こちら側は別に賠償を受け取る必要は無いんだ。このまま立ち去って警察に届けるだけで排除できるんだからな」
そこに理事長がおさめに入った。
「心の傷にしろ、時間にしろ取り返しのつかないことに変わりはありません。そういう場合、結局はお金で話をつけるしかないのはお判りでしょう。また現状にあたり学校側からもなんらかのペナルティを課さざるをえません。そのペナルティにつきましても被害者の心証も考慮したものにならざるをえません。そのうえで話をすすめてください」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件

沢田美
恋愛
「きょ、今日からお世話になります。有馬蓮です……!」 高校二年の有馬蓮は、人生初のアルバイトで緊張しっぱなし。 そんな彼の前に現れたのは、銀髪ピアスのギャル系先輩――白瀬紗良だった。 見た目は派手だけど、話してみるとアニメもゲームも好きな“同類”。 意外な共通点から意気投合する二人。 だけどその日の帰り際、店長から知らされたのは―― > 「白瀬さん、今日で最後のシフトなんだよね」 一期一会の出会い。もう会えないと思っていた。 ……翌日、学校で再会するまでは。 実は同じクラスの“白瀬さん”だった――!? オタクな少年とギャルな少女の、距離ゼロから始まる青春ラブコメ。

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

桜庭かなめ
恋愛
 高校1年生の逢坂玲人は入学時から髪を金色に染め、無愛想なため一匹狼として高校生活を送っている。  入学して間もないある日の放課後、玲人は2年生の生徒会長・如月沙奈にロープで拘束されてしまう。それを解く鍵は彼女を抱きしめると約束することだった。ただ、玲人は上手く言いくるめて彼女から逃げることに成功する。そんな中、銀髪の美少女のアリス・ユメミールと出会い、お互いに好きな猫のことなどを通じて彼女と交流を深めていく。  しかし、沙奈も一度の失敗で諦めるような女の子ではない。玲人は沙奈に追いかけられる日々が始まる。  抱きしめて。生徒会に入って。口づけして。ヤンデレな沙奈からの様々な我が儘を通して見えてくるものは何なのか。見えた先には何があるのか。沙奈の好意が非常に強くも温かい青春ラブストーリー。  ※タイトルは「むげん」と読みます。  ※完結しました!(2020.7.29)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

この男子校の生徒が自分以外全員男装女子だということを俺だけが知っている

夏見ナイ
恋愛
平凡な俺、相葉祐樹が手にしたのは、ありえないはずの超名門男子校『獅子王院学園』からの合格通知。期待を胸に入学した先は、王子様みたいなイケメンだらけの夢の空間だった! ……はずが、ある夜、同室のクールな完璧王子・橘玲が女の子であるという、学園最大の秘密を知ってしまう。 なんとこの学園、俺以外、全員が“訳アリ”の男装女子だったのだ! 秘密の「共犯者」となった俺は、慣れない男装に悩む彼女たちの唯一の相談相手に。 「祐樹の前でだけは、女の子でいられる……」 クールなイケメンたちの、俺だけに見せる甘々な素顔と猛アプローチにドキドキが止まらない! 秘密だらけで糖度120%の学園ラブコメ、開幕!

俺をフッた幼馴染が、トップアイドルになって「もう一度やり直したい」と言ってきた

夏見ナイ
恋愛
平凡な大学生・藤堂蓮には忘れられない過去がある。高校時代、告白した幼馴染の星宮瑠奈に「アイドルになるから」とこっ酷くフラれたことだ。 数年後、瑠奈は国民的アイドル『LUNA』として輝いていた。遠い世界の住人になった彼女との再会なんて、あるはずもなかった――そう、変装した彼女が俺の前に現れ、「もう一度やり直したい」と泣きつくまでは。 トップアイドルの立場を使い強引に迫る元幼馴染と、過去の傷。揺れ動く俺の日常を照らしてくれたのは、俺の才能を信じてくれる後輩・朝霧陽葵の存在だった。 俺をフッた幼馴染か、俺を支える後輩か。過去の清算と未来の選択を描く、ほろ苦くも甘い、逆転ラブコメディ、開幕。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...