幼馴染の初恋は月の女神の祝福の下に

景空

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第109話 バランス

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スライダーの下につくと登る階段が2つ。登り口にいる案内係の人に愛翔が聞くと
「右は人だけで滑るスライダーで、左はこちらの浮き輪に乗って滑るスライダーになります。浮き輪に乗って滑るスライダーの方がスピードがでますのでスリルがあって楽しいと思いますよ」
「愛翔、左いこ左。ほら楓も」
桜は当たり前のように左に誘う。
「えぇ、左はスピードが出るのよね?私はとりあえず、右で様子見るわ」
そう言ってさっさと右の階段を上っていく楓。
「ええ?楓そっち行っちゃうの?あたしは浮き輪で滑る方行くわよ。むう、じゃぁまたスライダーの下でねぇ」
そう言うと愛翔の腕を引いて左の階段を上る桜。一人で乗るには少々大きい浮き輪をその手にもっていた。
「愛翔ほらぁ、早く乗って」
大きな浮き輪の前部分に乗り愛翔を呼ぶ桜にやや困り顔の愛翔。後ろでは監視員が意図せず流れていかないように留めている。
「あーいと、後ろの人が待ってるから早くぅ」
そう言いながら浮き輪の後ろ部分をポンポンと叩く桜。
「はいはい、彼氏さんも覚悟決めて乗ってくださいね」
監視員も早く行けとばかりにせかす。そのため愛翔もやむを得ず、おずおずと桜の後ろに座った。
「ではいってらっしゃーい」
監視員の声に押し出され愛翔と桜の乗った浮き輪は滑り出す。監視員の目が届かない位置まで滑ると早速桜は身体を伸ばし愛翔にもたれかかった。のみならず愛翔の手を取り自分のお腹に回す。はたから見れば愛翔が桜を抱き寄せているように見えただろう。
「えへ、愛翔ちゃんとあたしを掴まえておいてね」
愛翔の胸に頭を預け嬉しそうな桜に
「桜、階段の登り口ところから狙ってたな」
苦笑する愛翔。
「あったりまえでしょ。せっかく二人乗りがあるのよ。愛翔と乗りたいもの」
笑顔で桜は返事をする。とたん2人を乗せた浮き輪がコースのカーブでぐるりと振られる。
「ひゃぁー」
桜が叫びつつ愛翔の腕につかまる。
「はぁ、わざとらしいんだよ。桜がこのくらいで悲鳴を上げるわけないだろ」
愛翔はそう言いつつもぎゅっと桜を抱き寄せる。
「えへへ、ばれた?でも愛翔はぎゅってしてくれるのよね」
桜が、によによと頬を緩ませる。
そうしている間に屋内型のスライダーはあっという間に2人の乗った浮き輪を出口のプールに吐き出す。”ザッバーン”と、段差のある出口から放り出され、2人は愛翔が桜を抱き寄せたままプールに投げ出された。
当然のように愛翔が桜を抱き上げるように立ちあがる。
「あー、桜ずるいー」
2人の様子を見た楓が愛翔に飛びついてくる。
「なによぉ、さっきは楓が愛翔にお姫様抱っこしてもらったんじゃない」
「あれは上からの水でプールに落とされたから仕方なくだから」
キャイキャイと騒ぐ桜と楓。それでも決して険悪な雰囲気にならないのは流石に幼馴染だからか。
「じゃぁ今度は私が愛翔と一緒に滑るから」
結局、楓も一度愛翔と一緒に浮き輪でスライダーを滑ることで落ち着いたらしい。楓が愛翔の腕につかまって引っ張る。
「わかったわかった、そう引っ張らなくても行くって」
その後も数回ずつ愛翔と一緒に滑り愛翔が監視員の羨まし気な視線に慣れた頃
「あはは、楽しー」
桜が歓声を上げるけれど
「でも、少し休憩しようか」
愛翔の呼びかけに
「うーん、それじゃぁ流水プールでプカプカしよ」
楓が提案し、3人は流水プールに移動する。

「桜、それは無いでしょぉ」
「ふふふ、いいでしょー」
桜が持ち込んでいたエアマットに愛翔と2人で寝そべる姿に楓が文句を言っている。
「最初からこうしたかったのよねえ」
桜がしてやったりと良い笑顔だ。
対して楓は頬を膨らませて仏頂面のまま。
それでもやいのやいの言いつつもじゃれ合いの範囲を超える事が無い。
そんな中ふと、桜が思いついたようにニヤリと笑い、楓に見せつけるように愛翔に身体を寄せた。
「ちょ、桜。水着では手加減を……」
愛翔が離れようとするけれど
「あーいと、暴れると落ちちゃうわよ」
「こら桜、愛翔が嫌がってるでしょ。離れなさい」
楓がどうにか離れさせようと口にするけれど
「ええ、愛翔嫌なの?」
「嫌なわけじゃないけど、それでもちょっと……」
「ほらぁ、愛翔も嫌じゃないって言ってる」
「だからと言って、そのままで良いって言ってるわけじゃないからな」
ワイワイと騒いでいると
「あ」
「きゃっ」
”バシャン”
バランスを崩し絡み合ったまま落水する愛翔と桜。
「愛翔、桜」
楓が慌てて浮き輪から降り泳ぎよる。
”ザバッ”
愛翔が桜を抱きかかえて立ち上がっていた。
「まったく、今度は桜かよ」
「ゲホッゲホッ」
咳き込む桜を抱えながら呆れの中にも優しさのまじる呟きを口にし愛翔が桜の頭を撫でる。
「ほらもう大丈夫だから」
桜はこっそり楓にペロリと舌をだしてみせる。

そんなこんなで遊び倒した3人。
「そろそろ帰るか」
夕方近くになり、愛翔が声を掛けると、プールサイドの時計を見て桜と楓も
「ああ、もうこんな時間かあ」
「うふふ、楽しかった。また来ようね」
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