幼馴染の初恋は月の女神の祝福の下に

景空

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第171話 遠征の移動中のひとこま

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1月末の週末、ステラスターFCU18チームは東京遠征の途にあった。相手は東京バンデットFCU18。土曜日の昼すぎステラスポーツセンター駐車場で送迎バスに乗り込むステラスターFCU18メンバーとスタッフ。
「今シーズンのバンデットは守りが硬いからなあ」
「あの攻め込むとすぐに寄せてくるディフェンダーの動きはやっかいだよな」
「まあ、その分って訳じゃないだろうけどオフェンスがやや弱いのは助かるけどな」
「おう、カウンターアタックさえ気をつけておけばそれほど脅威じゃない」
移動時間の雑談でも相手チームの話が出てくる。
「ところでチーム住吉は今回も来るのか」
時枝がやや茶化しながら愛翔に話を振った。
「チーム住吉ってのはなんだよ。俺は別にクラブ外にチームなんか作ってねぇぞ」
愛翔の呆れたような返事に時枝の返しは笑顔だ。
「どこでの試合でも応援にくる5人いや、最近は1人増えて6人か。チーム内でチーム住吉って呼ばれてるぞ」
桜、楓、丘、加藤、高野、そして加藤と付き合い始めた新本。そしてこの6人がステラスターFCU18の試合があれば必ず愛翔の応援に駆け付け、ステラスターFCU18の中で密かに”チーム住吉”と呼ばれるようになっている。
 あのハロウィンパーティーの後、加藤は新本と交友を持ちバレンタインデーに新本から告白され付き合うようになっている。新本と付き合い始めるにあたって愛翔の状態を理由に加藤が渋り、それに対し愛翔が背中を押したのも新本が愛翔の応援メンバーに入った理由でもあった。


「みんな乗ったね。ちゃんとシートベルトを着けてね」
大型ワゴンの運転席に座った理沙が後ろを振り向きながら確認を取っている。桜と楓の住むマンションの駐車場。遠征に向かった愛翔の応援に向かうため集まったメンバーが華押家の所有するワゴンに乗り込んでいた。
「はーい、おーけー」
桜がウキウキと明るく答える。他のメンバーも表情は明るい。
「今回から愛翔君ハーフの出場許可が出たんですよね」
助手席に座った丘がわがことのように嬉しそうだ。
「あのところで、丘先輩。ここでこんなことを言うのは無粋かもしれませんが、受験とか大丈夫ですか?」
そう、丘は高校3年生、普通であれば受験の大詰めで週末に出掛けるなどとても難しい時期のはずだった。
「ふふ、先日のセンター試験も問題なかったし、2次試験対策も十分進めているので大丈夫よ。むしろ愛翔君の応援に行かないと気になって勉強なんて手につかないわ」
そう言えばと楓が気になったと口を開く。
「丘先輩は、どこを狙ってるんですか?」
「第一志望はT大の英文ね。卒業後は英語に関わる仕事をしたいって思ってるわ。そういえばあなた達はどうなの?」
「あたしは経済志望ですね。で、出来たら愛翔のマネジメントを……」
桜はそこまで口にしてくねくねとしながら頬を染める。
「私は法律関係に進みたいと思ってます。目標は国際弁護士です。法律面で愛翔のサポートが出来たら最高ですね」
楓もブレない。
「まったく、あなた達2人はブレないわね」
丘も桜と楓の答えに苦笑しつつも暖かい視線を向ける。
そんな中加藤も何となくですがと口を開いた。
「僕はエンジニアになりたいなと思っているんですよね。ですから大学もそっち方面を選ぶと思います」
そんな周囲の言葉に新本は憧れと羨望の眼差しを向けつつ。
「みんな凄いなあ。私はまだはっきりとした目標って見つからないんですよね。でも大学はいきたいと思っています」
「そういえば住吉君はどうするんだろう?」
ポロリともらした加藤の言葉に少しばかり会話が止まった。
「愛翔は、まだ迷っているみたいね。思い切って海外のテストをなんてのも頭の中にはあるみたいだけど、逆にとりあえず大学行ってインカレでサッカー続けながらってのも選択肢に入れてる感じ」
桜のこぼした言葉に皆が何を想ったかしばらく無言の空間が続いた。
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