幼馴染の初恋は月の女神の祝福の下に

景空

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第176話 でも、ありがとう

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ステラスターFCU18のメンバーがブリーフィングを終え三々五々雑談をしながらAJKスタジアムのロビーに出て来た。
「じゃあ、明日17時、ステラスポーツセンター駅集合でいいな」
ステラスターFCU18のメンバーは練習休みの月曜日を利用して時枝の昇格祝いのパーティーを行う打ち合わせをしていた。そんなところにやってきたのは当然
「あーいと。おつかれー。今日はいつもより派手だったねえ」
「愛翔、お疲れ様。桜の言う通りね。何かあったの?」
いつもの通り左右の腕に抱きつく桜と楓の不思議そうな顔をみながら加藤に声をかける。
「まあ、ちょっとな。加藤君なら分かるんじゃないか」
愛翔の問いかけに、新本と手をつないでいる加藤は、やっぱりそうなのかと予想を口にする。
「変則なリベロに見えたんだけど。でもあの感じ、それだけじゃないよね住吉君」
「ああ、織部のおっさん、リベロ司令塔とか無茶振りしてきやがった。あんな運動量のあるポジションをプレイ時間に縛りのある人間にやらせるかっての」
「ふふ、でも愛翔君。しっかりできてたように見えたわよ」
最近はサッカーを見る目がついてきた丘にも高評価なようだ。
「でも住吉君だけ端から端まで走り回ってましたよね。他の選手の方はおさぼりなのでしょうか?」
サッカーについてまだ詳しくない新本からは少し(?)的外れな感想が漏れて周囲が苦笑する。
「前にも少しだけ説明した気はするけど、ディフェンスとオフェンスの役割分担があってね。攻撃時はディフェンダーは少し引き目で布陣するんだ。逆に攻められてるときにはフォワードは少し前で抑える。なんでああいった感じなんだよ」
愛翔の簡易の説明に新本は逆に疑問を感じたようで
「なら住吉君は何故あんな端から端まで走り回っていたんですか?」
「新しく与えられたポジションがそういうのだったんだよ」
「住吉君、まだ完調じゃないですよね。その織部監督?でしたかちょっと無茶ぶりがすぎるんじゃないでしょうか」
「まあ、時枝とのセットでだと今回が最後になるからってことらしい。今回うまくいったから、後は俺の回復状態見てだってさ」
「え?時枝さん、何かあったの?」
愛翔との息の合ったコンビだったこともあり楓が気にして聞いてきた。
「ああ、どうやら上にあがるそうだ」
なるほどとうなずいた楓の横で
「上?」
新本はピンとこなかったらしい。
「ああ、トップチームのリザーブ枠。今日のゲームを最後に時枝はJリーガーの一角に入り込むことになったんだと」
「へえ、時枝さんて凄いんですね」
新本だけが無邪気な感想をこぼした。加藤が目をそらしながら新本と繋いでいた手を思わずグッと握り、他の4人も微妙に悔しそうな辛そうな複雑な表情で愛翔から視線をはずしている。
加藤に手を強く握られた新本が何かあったのかと加藤に視線を送りハッと気づき自分も思わず目をそらした。
 そんな様子を見た愛翔はクスクスと笑いながら
「そんな気にするなよ。そのあたりはもう乗り越えたから。……でも、ありがとう。それに一時停滞した回復状態も最近はまた順調だからな。うまくすれば夏までにはフルタイム参戦できるようになるかもしれないって言われてるくらいだ」
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