幼馴染の初恋は月の女神の祝福の下に

景空

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第177話 港

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”ガチャ”自宅のドアを開け部屋に入る愛翔。
「ふぅ。ただいまっと」
”パタパタ””パタパタ”スリッパの足音を鳴らして桜と楓がとんでくる。
「あいとー、おかえり」
「愛翔、おかえりなさい」
トン。桜が愛翔に飛びつき愛翔の頭を抱き寄せた。
「お、おい桜」
愛翔は慌てたように体勢を変えようとするけれど、桜は離さない。
「あたしたちだけの時には無理しなくていいのよ」
ピクリと反応をした愛翔の背中から楓が愛翔を包み込むように抱きしめる。
「そう、私たちには隠さなくていいの。辛いなら辛い、苦しいなら苦しいって言って欲しい」
「あたし達と愛翔の間はそんなことで揺らがない。つらいのならあたし達に吐き出して、あたしの胸で泣いて」
「ちょっと桜、さらっと愛翔を胸で泣かせるのは自分だけにするのはいただけないわよ」
そのまま部屋に移動し桜が愛翔の左側、楓が愛翔の右側に愛翔を挟んでベッドに腰をおろす3人。
愛翔を見つめる桜と楓に愛翔も溜息をつき、しかたないと口を開いた。
「まあ、時枝が上にあがることについて自体は良いんだ。あいつは結構凄い奴だし。だけどな、やっぱり一緒に日米交流戦を肩を並べて戦い、欲目もあるかもしれないけれど実力的に並んでたと思ってるやつが上に上がって、俺自身は育成枠アカデミーに残ってるってなるとな。まあもちろん上としては病気の影響でフルタイム戦えない人間を上げられないってのはわかる。頭ではわかるんだ。でもな……」
愛翔は両手を頭の後ろで組みそのままベッドに倒れ込み天井を見上げる。
「なんで俺だけがこんなことにって気持ちが無いと言えばウソになる。でもそんなことを言っても現実は変わらないから……」
そこまで愛翔が口にしたところで桜が愛翔の頭をその胸に抱き寄せる。
「現実は変わらないかもしれない。でも何もかも我慢する必要は無いの。その悔しさ、やるせなさをあたし達に吐き出して。愛翔は強い。でも愛翔だって人間だもの。あたし達に支えさせて。たまにはあたし達に甘えて欲しい。ほんの一時でも愛翔の気持ちが楽になるなら……」
桜が愛翔の頭を抱えるように胸元に抱き寄せる。そして楓も愛翔を背中から抱きつき愛翔の頭から背中を撫でる。
「人は人生という大きな海の航海に出るの。そこには大きな宝物が隠されているの。でも宝物を探す旅の中には嵐の日ももあるわ。傷つくこともあるでしょう。そんな時私達は愛翔の港になるの。桜と私で愛翔を支えさせて。私達にだけは甘えて。これからの愛翔の人生を私達に支えさせて」
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