幼馴染の初恋は月の女神の祝福の下に

景空

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第203話 女子バスケットボール部のIH⑧

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 高校女子バスケットボールインターハイ3回戦。光野高校女子バスケットボール部の対戦相手はいよいよ強豪校の一角といえる寒山高校。自信に満ちた表情、それでいて初出場の光野相手でも真剣な態度、その全てが油断はしないと言っている。
「んん、やっぱりこのクラスになると相手がどうでも油断はしてくれないわね」
初出場の光野相手だからと緩んでくれたら初っ端だけでも楽が出来たのにと桜が苦笑する。
「3回戦。勝つつもりで行くわよ」
「いい、地力が上のチームに勝つには先取点よ」
「光野ファイ!!」
円陣を組み末成が気合を込め、桜が声をあげた。
審判の合図で両チームがコートに出てくる。一列に並びホイッスルと共に礼をしお互いに軽い握手を交わしポジションについた。
主審がボールをトスアップする。桜たち光野高校女子バスケットボール部はこのジャンプボールは確保不能と判断していた。そのため、センターサークルに末成が立つものの見せかけだけのジャンプで引きディフェンスに動く。その中で桜だけが相手ポイントガードに向かって走る。データではボール確保後このチームはポイントガードにボールを渡す確率が100パーセント。そこに相手がマークしに走るとこのポイントガードはスモールフォワードにパスを出す傾向があった。その確率83パーセント。そのため、あえて桜はスモールフォワード側を僅かに開けてポイントガードをマークに走る。
桜の動きに気付いた寒山チームポイントガードはスッとパスを出した。その先はデータ通りのスモールフォワード。当然のように桜は横っ飛びに飛びパスカットに成功する。そのままスピード重視のドリブルでゴール下に入り込みレイアップシュートをというところで、さすがは強豪校の一角寒山高校、桜のシュートをブロックに入った。桜もそれに対応し右手で上げていたボールを左手に持ち替えブロックを躱しシュートを放つ。バックボードに一度当たったボールが”パサリ”ゴールに吸い込まれた。
先制点を挙げ味方コートに走る桜。
「Give me Five!」
「Year!!」
いつも通りの動きでハイタッチを交わしチームメンバーを鼓舞する。
先取点を取れたことでメンバーの緊張もほぐれる。
「マーク確認!ディフェンス1本」

事前の検討で相手の動き癖を把握している光野メンバーは地力が上の相手に食らいつき簡単には抜かせない。パスカットを成功させ、速攻を決める。桜もインサイドにアウトサイドに八面六臂の活躍をする。それでも
ファーストクォーター22対23、セカンドクオーター42対47と抵抗しつつもジリジリと離される。
ハーフタイム、さすがにやや疲れの見える桜に末成が声を掛けた。
「桜、大丈夫?」
「まだまだ、いけるわよ。得点だってまだ5点差。スリーポイント2回で逆転できる程度よ」
折れない桜にチームメンバーもまだ気炎を上げる。
「そうよね、私達がんばれてるよね」
「充分にチャンスあるって」
愛翔の差し入れたスポーツドリンクを口にしながらやる気をみせている。

「あの光野の5番、なんで光野なんかにいるのよ。あんな無名校にいるような選手じゃないわ」
「光野の5番、どこかで見たような気もするのよね。なんて名前だっけ」
「えーと、華押桜ね。華押?私もどこかで聞いた気が……」
「そうよ、華押桜、中学時代全国常連だった。中学時代もあのこやりたい放題だったわ。なんで光野なんかに」
寒山高校のベンチが騒がしくなっている。
「とにかく光野では、あの5番がキーパーソンなのは間違いないわ。他のメンバーも悪くは無いけど感じとしてこちらが上よ。あの5番さえ抑えれば……」
「あと、あの子のスリーは気をつけて、フェイドアウェイで絶妙にバスカン狙ってくるわ」
結局寒山高校はハーフタイムを桜対策で終わっていた。
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