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第204話 女子バスケットボール部のIH⑨
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「く、このー。あきらめてたまるか」
桜の渾身のスリーポイントシュートが”パサリ”ゴールに吸い込まれた。
「よっし。ディフェンス1本」
桜が人差し指を差し上げた次の瞬間”ピー”主審のホイッスルが鳴り響き光野高校女子バスケットボール部のインターハイ3回戦敗退が決まった。
「89対94、寒山高校の勝ち」
「ありがとうございました」
涙をこらえ引き上げる光野高校女子バスケットボール部。
「惜しかった。負けちゃったけど、全然戦えてたよ」
桜がメンバーを慰めている。
そこに寒山高校の4番ポイントガードの選手がやってきた。
「ねえ、あなた。華押さん。華押桜さん」
「ほえ?何?試合直後に負けたチームの人間に勝者が声を掛けるのはちょっとマナー違反じゃないかしら?」
「あ、ご、ごめんなさい。でも、どうしても聞いておきたいことがあって」
「聞きたい事?」
「あの、その……」
桜の頭の上にまるでクエスチョンマークが浮かんでいるようだ。
「あたし寒山高校女子バスケットボール部部長でポイントガードの河邑紘子(かわむら ひろこ)といいます」
「あ、うん。知ってる。あたし光野高校女子バスケットボール部ポイントガードの華押桜です」
そこで河邑は深呼吸をすると
「華押さん、中学時代に全中に出てた華押さんよね」
いきなり中学時代のことを持ち出されて桜が目を白黒させる。
「え、えと。出てたけど」
桜はますます混乱し言葉が出てこない。そんな桜の様子に構わず河邑がたたみ掛ける。
「あたし光野は進学校だからスポーツ特待とか無いって思ってたから、今回華押さんが居てびっくりしたの。チームのレベルも高かったし」
この人は何が言いたいのだろう?桜はさらにそんなことを想いながら話を聞いていると、河邑は更に言葉を続けた。
「それで、その華押さんは大学進学?それとも社会人?」
「一応進学予定ですけど……」
怪訝な顔で桜が答えると
「わ、あたしもそうなんだけど。華押さんだったら幾つかお誘いあってるわよね。どこに行くの。出来たら一緒にやりたいなって思って」
「おさそい?おさそいの意味は分からないけど、あたしはT大文2志望ですよ」
「えT大?T大にスポーツ推薦なんてあるの?」
「いえ、一般入試ですけど」
「え?光野だとスポーツ特待からでもT大行くの?」
「いえ、そもそも光野にスポーツ特待ありませんよ。あたしも一般生ですし」
「え?一般生?で。え???」
「お話がそれだけなら、そろそろみんなのところに行きたいのですけど」
「あ、うん。ありがとう。おじゃましてごめんね」
桜はチームメンバーの元に走った。体育館前のベンチ、そこでは香川が盛大に涙を流していた。
「あ、あたしが、あそこでミスしなかったら勝てたのに」
「そ、それを言うなら私だって……」
次々と涙腺が崩壊するメンバーたち。そんな4人に桜がそっと寄り添い声を掛ける。
「誰のせいでもないわ。相手が1枚上手だった。それと運が向こうにちょっとだけあった。それだけよ。ほら、あんないい試合できたんだからもっと胸をはって、顔を上げて。ね」
そんな桜の言葉に少しずつ顔を上げるメンバーたち。
「それに、高校時代にこんないい思い出が出来たのよ。インターハイ3回戦なんてほんの一握りの人しか体験できないんだからね。最高の仲間と最高の思い出よ。笑顔で帰ろ」
「う、うん、そうね。私達、光野に入ってこんなところに来られるって思ってなかったものね」
「それに、えりりんは泣いてる暇なんかないからね」
桜は更に香川にウィンクをしながら声を掛ける。
「あたし達3年生は、これで引退。明日から光野高校女子バスケットボール部を引っ張っていくのはえりりんよ。ウィンターカップもあるしガンバよ」
「はい!」
すっかり涙が止まった香川にニッコリと笑顔を見せ、頭をポンポンと撫でると
「あ、あたしちょっとトイレ行ってくる。悪いけど荷物お願い」
そう言うと飄々としたふんいきで離れていった。
体育館の角を曲がりメンバーたちの死角に入ると桜は表情を歪め足を速める。その瞳は潤んでいた。そんなところに声が掛かる。
「桜」
桜がふと目を上げるとそこには優しく微笑み腕を広げる愛翔とその横には楓がいた。我慢の限界が来た桜は愛翔の胸に飛び込み泣きじゃくる。
「あいとー、負けちゃった。負けちゃったよお。あんなにみんなで頑張ったのに」
愛翔は黙ってやさしく桜を抱き寄せ、頭から背中を撫でている。そこに楓が桜の後ろからそっと寄り添うように抱きついた。
「もっとみんなと一緒に居たい。一緒にプレイしたい。ここまでなんて嫌だよぉ」
愛翔も楓も何も言わずにそっと寄り添ってる。こんな時に言葉はいらないと分かっているように。何より3人の絆が癒せると信じているように。
「桜遅いわね。トイレ混んでるのかしら」
末成が少しばかり心配を口にしたところで
「あ、あたしが見てきます」
香川が腰を上げる。
「あ、もう。マッキー一緒にいってあげて」
やれやれと表が香川を追いかける。
そして体育館の角で香川に追いついた表が声を掛けた。
「えりりん、ちゃんと確認してから動かないと……。どうしたの?」
香川の様子に表が尋ねると
「え、あ。うん、なんでも……」
何か隠している様子の香川に、表が覗こうとする
「あ、いや先輩。そっちじゃ……」
香川が止めるのが間に合わず
「あ、……」
そこには泣きじゃくる桜をやさしく抱き寄せ、慰める愛翔と楓の姿があった。
僅かに逡巡した表が
「戻ろうか、あれは邪魔しちゃダメよ」
桜の渾身のスリーポイントシュートが”パサリ”ゴールに吸い込まれた。
「よっし。ディフェンス1本」
桜が人差し指を差し上げた次の瞬間”ピー”主審のホイッスルが鳴り響き光野高校女子バスケットボール部のインターハイ3回戦敗退が決まった。
「89対94、寒山高校の勝ち」
「ありがとうございました」
涙をこらえ引き上げる光野高校女子バスケットボール部。
「惜しかった。負けちゃったけど、全然戦えてたよ」
桜がメンバーを慰めている。
そこに寒山高校の4番ポイントガードの選手がやってきた。
「ねえ、あなた。華押さん。華押桜さん」
「ほえ?何?試合直後に負けたチームの人間に勝者が声を掛けるのはちょっとマナー違反じゃないかしら?」
「あ、ご、ごめんなさい。でも、どうしても聞いておきたいことがあって」
「聞きたい事?」
「あの、その……」
桜の頭の上にまるでクエスチョンマークが浮かんでいるようだ。
「あたし寒山高校女子バスケットボール部部長でポイントガードの河邑紘子(かわむら ひろこ)といいます」
「あ、うん。知ってる。あたし光野高校女子バスケットボール部ポイントガードの華押桜です」
そこで河邑は深呼吸をすると
「華押さん、中学時代に全中に出てた華押さんよね」
いきなり中学時代のことを持ち出されて桜が目を白黒させる。
「え、えと。出てたけど」
桜はますます混乱し言葉が出てこない。そんな桜の様子に構わず河邑がたたみ掛ける。
「あたし光野は進学校だからスポーツ特待とか無いって思ってたから、今回華押さんが居てびっくりしたの。チームのレベルも高かったし」
この人は何が言いたいのだろう?桜はさらにそんなことを想いながら話を聞いていると、河邑は更に言葉を続けた。
「それで、その華押さんは大学進学?それとも社会人?」
「一応進学予定ですけど……」
怪訝な顔で桜が答えると
「わ、あたしもそうなんだけど。華押さんだったら幾つかお誘いあってるわよね。どこに行くの。出来たら一緒にやりたいなって思って」
「おさそい?おさそいの意味は分からないけど、あたしはT大文2志望ですよ」
「えT大?T大にスポーツ推薦なんてあるの?」
「いえ、一般入試ですけど」
「え?光野だとスポーツ特待からでもT大行くの?」
「いえ、そもそも光野にスポーツ特待ありませんよ。あたしも一般生ですし」
「え?一般生?で。え???」
「お話がそれだけなら、そろそろみんなのところに行きたいのですけど」
「あ、うん。ありがとう。おじゃましてごめんね」
桜はチームメンバーの元に走った。体育館前のベンチ、そこでは香川が盛大に涙を流していた。
「あ、あたしが、あそこでミスしなかったら勝てたのに」
「そ、それを言うなら私だって……」
次々と涙腺が崩壊するメンバーたち。そんな4人に桜がそっと寄り添い声を掛ける。
「誰のせいでもないわ。相手が1枚上手だった。それと運が向こうにちょっとだけあった。それだけよ。ほら、あんないい試合できたんだからもっと胸をはって、顔を上げて。ね」
そんな桜の言葉に少しずつ顔を上げるメンバーたち。
「それに、高校時代にこんないい思い出が出来たのよ。インターハイ3回戦なんてほんの一握りの人しか体験できないんだからね。最高の仲間と最高の思い出よ。笑顔で帰ろ」
「う、うん、そうね。私達、光野に入ってこんなところに来られるって思ってなかったものね」
「それに、えりりんは泣いてる暇なんかないからね」
桜は更に香川にウィンクをしながら声を掛ける。
「あたし達3年生は、これで引退。明日から光野高校女子バスケットボール部を引っ張っていくのはえりりんよ。ウィンターカップもあるしガンバよ」
「はい!」
すっかり涙が止まった香川にニッコリと笑顔を見せ、頭をポンポンと撫でると
「あ、あたしちょっとトイレ行ってくる。悪いけど荷物お願い」
そう言うと飄々としたふんいきで離れていった。
体育館の角を曲がりメンバーたちの死角に入ると桜は表情を歪め足を速める。その瞳は潤んでいた。そんなところに声が掛かる。
「桜」
桜がふと目を上げるとそこには優しく微笑み腕を広げる愛翔とその横には楓がいた。我慢の限界が来た桜は愛翔の胸に飛び込み泣きじゃくる。
「あいとー、負けちゃった。負けちゃったよお。あんなにみんなで頑張ったのに」
愛翔は黙ってやさしく桜を抱き寄せ、頭から背中を撫でている。そこに楓が桜の後ろからそっと寄り添うように抱きついた。
「もっとみんなと一緒に居たい。一緒にプレイしたい。ここまでなんて嫌だよぉ」
愛翔も楓も何も言わずにそっと寄り添ってる。こんな時に言葉はいらないと分かっているように。何より3人の絆が癒せると信じているように。
「桜遅いわね。トイレ混んでるのかしら」
末成が少しばかり心配を口にしたところで
「あ、あたしが見てきます」
香川が腰を上げる。
「あ、もう。マッキー一緒にいってあげて」
やれやれと表が香川を追いかける。
そして体育館の角で香川に追いついた表が声を掛けた。
「えりりん、ちゃんと確認してから動かないと……。どうしたの?」
香川の様子に表が尋ねると
「え、あ。うん、なんでも……」
何か隠している様子の香川に、表が覗こうとする
「あ、いや先輩。そっちじゃ……」
香川が止めるのが間に合わず
「あ、……」
そこには泣きじゃくる桜をやさしく抱き寄せ、慰める愛翔と楓の姿があった。
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