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第217話 愛にささげる
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翌日、コンテスト当日の朝、”春”のメンバーたちはやる気に満ち溢れていた。
「楓ちゃんのアレンジで目の前がパーッと明るくなった感じだものね」
「そうそう、これが目から鱗ってことなんだってね」
意気揚々とでもいうのだろうか、ご機嫌で会場入りする。
「楓」
”春”のメンバー達が振り返った時にはギターを背負ったままの楓が飛び出していた。
「愛翔。きてくれたのね」
頬を緩め愛翔に抱きつく。愛翔も楓を優しく抱きしめていた。
「そりゃ来るだろ。楓の全国コンテストだからな」
「桜も、ありがとう。あ、そういえば愛翔練習は?」
「うん、俺今日は夏風邪で38度の熱で寝込んでいるんだ」
愛翔がウィンクをすると、
「あたしは、その愛翔の看病で付き添いなの」
桜がいたずらっ子の笑顔で続けた。
「もう大丈夫なの?今、上に上がる大事な時期なんでしょ」
「大丈夫さ、1日休んだくらいどうと言うことは無いよ。それとも迷惑だったか?」
「そんなわけないじゃない。嬉しいわよ。でも愛翔も今大切な時期だからって思ったの」
「公式戦で結果出しさえすればいいんだから1日くらい気にする必要ないさ。それに」
「それに、何?」
「やっぱり気になって今日は練習にならないと思うから。そんな状態で練習するより思い切って楓の応援に来る方がいいさ」
楓は愛翔の胸に顔を埋める。それは照れて赤くなった顔を隠そうとしているのが丸わかりで、それでも赤く愛翔には染まった耳が見えており気持ちははっきりとしていた。
「楓ちゃん、その盛り上がってるところ悪いのだけど、そろそろ良いかしら」
長嶺が申し訳なさそうに声を掛けてきた。楓は、しぶしぶ愛翔から離れる。
「俺と桜は客席から応援してるからな。頑張れ」
離れ際に頬に唇を寄せ愛翔が楓に囁いた。楓は少しばかり頬を染めたまま”春”のメンバーと共に会場に向かう。
「ふふふ、あなた達って相変わらずね」
長嶺がクスクスと笑い、市野と大家が目を伏せ頬を染めている。どうやら目の当たりにした愛翔と楓のやり取りに当てられてしまったらしい。
「も、もう揶揄わないで。でも、もう少し……。そんなことより控室に急ごう。もうあまり時間ないから」
楓が、言葉を濁し話題を変える。
「時間が足りなくなったのは楓ちゃんたちのせいだけどね」
そっと長嶺が囁いたところでメンバーが急いで移動を開始した。
”春”のメンバーは控室に入るとさっそくチューニングを始める。とは言っても、実際にチューニングをしているのはギター担当の楓とベース担当の市野だけ、大家と長嶺は特にチューニングを必要としないためコンテストの進み具合を確認しながら雑談に興じていた。
「楓ちゃん達っていつ見ても、あまーいわよね。普段コーヒー飲まない私でもブラックコーヒー欲しくなる甘さだもの」
「そうそう、あれで1線を超えてないっていうのだから本当に住吉君のメンタルってどうなてるのかしらね」
そんな話をしているとチューニングを終えた楓が後ろから2人の頭にチョップを落とした。
「「いたーい。楓ちゃん、なにするのよ」」
「こんなところで、しかも私の目の前で私たちの噂話をしてるからです。もう少し緊張感を……」
そこまで口にしたところで楓が気付いた。大家の手が小刻みに震えている。
「はあ、わかったわよ。私たちの話で緊張がほぐれるなら、少しくらいは話してあげるわ」
そしていよいよ、”春”の順番が来た。ライトの落とされたステージに立ち、準備をする4人。客席では愛翔と桜がギュッと手をつなぎながら見ている。そこで会場アナウンスが入った。
「ではエントリーナンバー6番。光野高校軽音楽部”春”の皆さんお願いします。曲はオリジナルソング”愛にささげる”です」
ステージライトが灯り、楓がスタンドマイクに近づく。
「光野高校軽音楽部所属”春”です。”愛にささげる”聴いてください」
楓がギターを振り下ろすように弾き始める。前日まで温めていたのとは違う、シンプルなメロディラインのイントロ。そこに長嶺と市野のリズム隊が8ビートで合流し、大家のキーボードが控えめに華を添え、楓が歌い始める。
「一緒にいると誓ったあの日
私の全てを賭けて愛すると決めた
あなたの全てを守る
あなたに全てを捧げる
あなたと共に苦しみ
あなたと共に悲しみ
あなたと共に喜び
あなたと共に笑い
あなたと共に生きる
たとえあなたが私のためと言っても
私の全てはあなたと共にあるわ
だから今
私の全てを受け取って
決して離しはしない
共に生きると誓ったあの日
あなたのすべてを受け入れ愛すると決めた
私の全てを捧げる
あなたの全てを下さい
あなたと共に苦しみ
あなたと共に悲しみ
あなたと共に喜び
あなたと共に笑い
あなたと共に生きる
たとえあなたが受け入れなくても
私の全てはあなたと共にあるわ
だから今
私の全てを受け取って
決して離しはしない
決して離れないと誓ったあの日
あなたの愛と私の愛で幸せを作ると決めた
2人のすべてを愛し
2人のすべてを共にする
あなたとなら苦しくない
あなたとなら悲しくない
あなたとの喜びも
あなたとの笑顔も
あなたとの人生も
きっと愛と輝きに満ちているから
ずっと2人で共に生きたい
だから今
私の全てを受け取って
決して離しはしない」
静かにリズム隊が音を消し、キーボードがフェイドアウトする。最後にギターがせつないメロディを奏であげた。
僅かな静寂の後、会場から拍手が沸いた。序盤のグループへとは思えない拍手が客席から審査員席から送られた。
「ありがとうございました」
楓の挨拶に合わせ4人が頭を下げ、ステージ袖にはける。
控室に戻ったメンバーたちは緊張から解放されほっと脱力をした。
「お疲れ様。よかったよ」
「おつー、素敵だったわよ」
そんな”春”のメンバーたちに控室を訪れた愛翔と桜がねぎらいの言葉を投げかけた。
「楓ちゃんのアレンジで目の前がパーッと明るくなった感じだものね」
「そうそう、これが目から鱗ってことなんだってね」
意気揚々とでもいうのだろうか、ご機嫌で会場入りする。
「楓」
”春”のメンバー達が振り返った時にはギターを背負ったままの楓が飛び出していた。
「愛翔。きてくれたのね」
頬を緩め愛翔に抱きつく。愛翔も楓を優しく抱きしめていた。
「そりゃ来るだろ。楓の全国コンテストだからな」
「桜も、ありがとう。あ、そういえば愛翔練習は?」
「うん、俺今日は夏風邪で38度の熱で寝込んでいるんだ」
愛翔がウィンクをすると、
「あたしは、その愛翔の看病で付き添いなの」
桜がいたずらっ子の笑顔で続けた。
「もう大丈夫なの?今、上に上がる大事な時期なんでしょ」
「大丈夫さ、1日休んだくらいどうと言うことは無いよ。それとも迷惑だったか?」
「そんなわけないじゃない。嬉しいわよ。でも愛翔も今大切な時期だからって思ったの」
「公式戦で結果出しさえすればいいんだから1日くらい気にする必要ないさ。それに」
「それに、何?」
「やっぱり気になって今日は練習にならないと思うから。そんな状態で練習するより思い切って楓の応援に来る方がいいさ」
楓は愛翔の胸に顔を埋める。それは照れて赤くなった顔を隠そうとしているのが丸わかりで、それでも赤く愛翔には染まった耳が見えており気持ちははっきりとしていた。
「楓ちゃん、その盛り上がってるところ悪いのだけど、そろそろ良いかしら」
長嶺が申し訳なさそうに声を掛けてきた。楓は、しぶしぶ愛翔から離れる。
「俺と桜は客席から応援してるからな。頑張れ」
離れ際に頬に唇を寄せ愛翔が楓に囁いた。楓は少しばかり頬を染めたまま”春”のメンバーと共に会場に向かう。
「ふふふ、あなた達って相変わらずね」
長嶺がクスクスと笑い、市野と大家が目を伏せ頬を染めている。どうやら目の当たりにした愛翔と楓のやり取りに当てられてしまったらしい。
「も、もう揶揄わないで。でも、もう少し……。そんなことより控室に急ごう。もうあまり時間ないから」
楓が、言葉を濁し話題を変える。
「時間が足りなくなったのは楓ちゃんたちのせいだけどね」
そっと長嶺が囁いたところでメンバーが急いで移動を開始した。
”春”のメンバーは控室に入るとさっそくチューニングを始める。とは言っても、実際にチューニングをしているのはギター担当の楓とベース担当の市野だけ、大家と長嶺は特にチューニングを必要としないためコンテストの進み具合を確認しながら雑談に興じていた。
「楓ちゃん達っていつ見ても、あまーいわよね。普段コーヒー飲まない私でもブラックコーヒー欲しくなる甘さだもの」
「そうそう、あれで1線を超えてないっていうのだから本当に住吉君のメンタルってどうなてるのかしらね」
そんな話をしているとチューニングを終えた楓が後ろから2人の頭にチョップを落とした。
「「いたーい。楓ちゃん、なにするのよ」」
「こんなところで、しかも私の目の前で私たちの噂話をしてるからです。もう少し緊張感を……」
そこまで口にしたところで楓が気付いた。大家の手が小刻みに震えている。
「はあ、わかったわよ。私たちの話で緊張がほぐれるなら、少しくらいは話してあげるわ」
そしていよいよ、”春”の順番が来た。ライトの落とされたステージに立ち、準備をする4人。客席では愛翔と桜がギュッと手をつなぎながら見ている。そこで会場アナウンスが入った。
「ではエントリーナンバー6番。光野高校軽音楽部”春”の皆さんお願いします。曲はオリジナルソング”愛にささげる”です」
ステージライトが灯り、楓がスタンドマイクに近づく。
「光野高校軽音楽部所属”春”です。”愛にささげる”聴いてください」
楓がギターを振り下ろすように弾き始める。前日まで温めていたのとは違う、シンプルなメロディラインのイントロ。そこに長嶺と市野のリズム隊が8ビートで合流し、大家のキーボードが控えめに華を添え、楓が歌い始める。
「一緒にいると誓ったあの日
私の全てを賭けて愛すると決めた
あなたの全てを守る
あなたに全てを捧げる
あなたと共に苦しみ
あなたと共に悲しみ
あなたと共に喜び
あなたと共に笑い
あなたと共に生きる
たとえあなたが私のためと言っても
私の全てはあなたと共にあるわ
だから今
私の全てを受け取って
決して離しはしない
共に生きると誓ったあの日
あなたのすべてを受け入れ愛すると決めた
私の全てを捧げる
あなたの全てを下さい
あなたと共に苦しみ
あなたと共に悲しみ
あなたと共に喜び
あなたと共に笑い
あなたと共に生きる
たとえあなたが受け入れなくても
私の全てはあなたと共にあるわ
だから今
私の全てを受け取って
決して離しはしない
決して離れないと誓ったあの日
あなたの愛と私の愛で幸せを作ると決めた
2人のすべてを愛し
2人のすべてを共にする
あなたとなら苦しくない
あなたとなら悲しくない
あなたとの喜びも
あなたとの笑顔も
あなたとの人生も
きっと愛と輝きに満ちているから
ずっと2人で共に生きたい
だから今
私の全てを受け取って
決して離しはしない」
静かにリズム隊が音を消し、キーボードがフェイドアウトする。最後にギターがせつないメロディを奏であげた。
僅かな静寂の後、会場から拍手が沸いた。序盤のグループへとは思えない拍手が客席から審査員席から送られた。
「ありがとうございました」
楓の挨拶に合わせ4人が頭を下げ、ステージ袖にはける。
控室に戻ったメンバーたちは緊張から解放されほっと脱力をした。
「お疲れ様。よかったよ」
「おつー、素敵だったわよ」
そんな”春”のメンバーたちに控室を訪れた愛翔と桜がねぎらいの言葉を投げかけた。
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