218 / 314
第218話 内緒のデートコース
しおりを挟む
”控室で騒ぐとこれから演奏する人たちに迷惑になるから”という理由で愛翔と桜と”春”のメンバーの6人と顧問の田口は会場である市民会館内のカフェで話をしていた。
「え、それじゃ今日のアレンジは昨日作ったってこと?」
桜が目をまんまるにしている。
「ええ、それまで2つのアレンジで迷っていたんだけど、昨日、リハーサル後に楓ちゃんが変えたいって言ってね。それで昨日作ったの。2つのアレンジで迷うくらいしっくり来てなかったのもあるけれどね」
”その結果が今日のアレンジよ”と長嶺がつぶやいた。
「それで、これからどうするんだ?」
愛翔の問いかけに”春”のメンバーが何のことかと首を傾げる。
「結果発表まで時間があるんだろう。それまでの時間は自由なのか、それとも何かやることがあるのかって聞いてるんだ」
ここで”春”のメンバーが田口に視線をむけた。
「え?わちゃし?」
たったこれだけのセンテンスでも噛む田口に6人は溜め息をつきつつ
「顧問でしょう。これから結果発表までは私たちのやるべきことは会場内ではありませんので、自由時間を認めていただければ近場で散策できるのですけど」
「あ、俺と桜は、先生の許可いらないですけどね。時間があるのなら出来れば一緒に散策というか多少の観光したいかなって」
愛翔が田口にむかって右目を閉じてみせる。
「いちょう、課外かちゅどうの一環なにょできゃん全フリーはみとみぇられなやいけぢょ。しゃい後3グリュープにょ演奏まぢぇにもどっちぇくえば良いでしゅよ」
愛翔が桜を見た。桜が首を傾げているのを確認すると楓を含む”春”のメンバーに視線を向ける。
「悪いけど翻訳を頼めるか?」
愛翔の言葉に、”春”のメンバー4人が思わず吹き出した。その笑いの発作の収まらないままに楓が説明を始めた。
「簡単に言えば、最後の3グループの出番までに戻ってくれば遊んできていいよってことね」
楓のまとめ方に田口は少しばかり気に入らないようで頬を膨らませた。そこで長嶺が言い換え
「遊ぶんじゃなく、この近くの様子を見学ということじゃないと、さすがに田口先生も黙認はしにくいわよ」
と笑った。
荷物をクロークに預け、6人で出かけることにした。
「ここからなら赤レンガ倉庫が近いけど、どうだ?」
愛翔が提案し
「あ、あたし行ってみたかったの」
「ふふ、横浜デートの定番スポットよね」
「モールも素敵らしいわよ」
と乗り気だ。
徒歩とバスで移動した先は夏休み期間ということもあるのだろう、デート中のカップルや友人同士の学生でにぎわっていた。
「あ、エンジェルウィングス。写真撮ろう」
「ここって桟橋の形から象の鼻パークっていうらしいよ」
「ここのソフトクリームが人気なんだって」
6人揃って赤レンガ倉庫近くのベイエリアを楽しんだ。
「そろそろ昼飯にしようか」
昼近くになり、愛翔が声を掛けた。
「どこか良いところ知ってる?」
長嶺が愛翔に聞き、5人の目が愛翔を見つめる。
「ん~、そうだな。以前クラブの遠征で来た時に入った店で、船のレストランがあるんだけど、どうかな?」
「船のレストランって?」
「そのままさ、まあ船って言ってもクルーズ船みたいなのじゃなくて海の上に浮いている家みたいな感じだけどね、まあ行ってのお楽しみだ。結構いい雰囲気のレストランだよ」
「「「「「行きたい」」」」」
6人は世界中に家を持ち猫を愛した巨匠作家の名を持つ海上レストランに腰を落ち着けた。
「本当に海に浮いているのね」
「そう言っただろ」
「でも、まさか本当にここまで浮いているとは思わなかったもの」
桜が愛翔の左腕に抱きつきながらきょろきょろと見回しながらはしゃぎ、愛翔が優しく頭を撫でる。その頃には楓も愛翔の右腕に抱きついていつもの3人になっていた。
”春”のメンバーも慣れてしまい、自然な感じだ。
「ご注文はお決まりでしょうか」
ウェイターがオーダーを取りに来たため、慌ててメニューに顔を寄せる女子5人に愛翔が苦笑を浮かべ。
「すみません。まだ決まっていないので、もう少し後でお願いします」
「わかりました、後程お伺いします」
軽く頭を下げウェイターが下がっていった。
そこから選んだのが
愛翔が300gのステーキランチ、桜はスープカレーを、楓も一瞬カレーを選ぼうとしたところで喉を気にしてハニーレモンベーグルフレンチトーストを選択、他の面々もそれぞれに料理をオーダーした。
「インテリアも凝っていて雰囲気あるわね」
「あ、デッキにプールがある。泳げたりするのかしら」
「あのプールって入れるのかな?前に来た時も誰もいなかったから、どっちかというと雰囲気づくりのアイテムじゃないかなって思ってる。泳ぐなら、ここはマリンスポーツの基地にもなってるからそっちかな」
海を眺めながら雑談と食事を楽しむ。
食後のドリンクタイム、長嶺が愛翔たちに向かって口を開いた。
「午前中は住吉君の案内で素敵な時間をありがとう。午後はあなた達3人で過ごしなさいな。そして、そうね3時半に会場前のホールに集合でいいかしら」
「いや、これ軽音楽部”春”としての活動だろう……」
「住吉君。今回案内してくれたコースって本当は華押さんや楓ちゃんとのデートコースとして考えていたんじゃないの?」
図星を指された愛翔は言葉に詰まる。
「ほんの2時間くらいだけど、デートしていらっしゃい」
「え、それじゃ今日のアレンジは昨日作ったってこと?」
桜が目をまんまるにしている。
「ええ、それまで2つのアレンジで迷っていたんだけど、昨日、リハーサル後に楓ちゃんが変えたいって言ってね。それで昨日作ったの。2つのアレンジで迷うくらいしっくり来てなかったのもあるけれどね」
”その結果が今日のアレンジよ”と長嶺がつぶやいた。
「それで、これからどうするんだ?」
愛翔の問いかけに”春”のメンバーが何のことかと首を傾げる。
「結果発表まで時間があるんだろう。それまでの時間は自由なのか、それとも何かやることがあるのかって聞いてるんだ」
ここで”春”のメンバーが田口に視線をむけた。
「え?わちゃし?」
たったこれだけのセンテンスでも噛む田口に6人は溜め息をつきつつ
「顧問でしょう。これから結果発表までは私たちのやるべきことは会場内ではありませんので、自由時間を認めていただければ近場で散策できるのですけど」
「あ、俺と桜は、先生の許可いらないですけどね。時間があるのなら出来れば一緒に散策というか多少の観光したいかなって」
愛翔が田口にむかって右目を閉じてみせる。
「いちょう、課外かちゅどうの一環なにょできゃん全フリーはみとみぇられなやいけぢょ。しゃい後3グリュープにょ演奏まぢぇにもどっちぇくえば良いでしゅよ」
愛翔が桜を見た。桜が首を傾げているのを確認すると楓を含む”春”のメンバーに視線を向ける。
「悪いけど翻訳を頼めるか?」
愛翔の言葉に、”春”のメンバー4人が思わず吹き出した。その笑いの発作の収まらないままに楓が説明を始めた。
「簡単に言えば、最後の3グループの出番までに戻ってくれば遊んできていいよってことね」
楓のまとめ方に田口は少しばかり気に入らないようで頬を膨らませた。そこで長嶺が言い換え
「遊ぶんじゃなく、この近くの様子を見学ということじゃないと、さすがに田口先生も黙認はしにくいわよ」
と笑った。
荷物をクロークに預け、6人で出かけることにした。
「ここからなら赤レンガ倉庫が近いけど、どうだ?」
愛翔が提案し
「あ、あたし行ってみたかったの」
「ふふ、横浜デートの定番スポットよね」
「モールも素敵らしいわよ」
と乗り気だ。
徒歩とバスで移動した先は夏休み期間ということもあるのだろう、デート中のカップルや友人同士の学生でにぎわっていた。
「あ、エンジェルウィングス。写真撮ろう」
「ここって桟橋の形から象の鼻パークっていうらしいよ」
「ここのソフトクリームが人気なんだって」
6人揃って赤レンガ倉庫近くのベイエリアを楽しんだ。
「そろそろ昼飯にしようか」
昼近くになり、愛翔が声を掛けた。
「どこか良いところ知ってる?」
長嶺が愛翔に聞き、5人の目が愛翔を見つめる。
「ん~、そうだな。以前クラブの遠征で来た時に入った店で、船のレストランがあるんだけど、どうかな?」
「船のレストランって?」
「そのままさ、まあ船って言ってもクルーズ船みたいなのじゃなくて海の上に浮いている家みたいな感じだけどね、まあ行ってのお楽しみだ。結構いい雰囲気のレストランだよ」
「「「「「行きたい」」」」」
6人は世界中に家を持ち猫を愛した巨匠作家の名を持つ海上レストランに腰を落ち着けた。
「本当に海に浮いているのね」
「そう言っただろ」
「でも、まさか本当にここまで浮いているとは思わなかったもの」
桜が愛翔の左腕に抱きつきながらきょろきょろと見回しながらはしゃぎ、愛翔が優しく頭を撫でる。その頃には楓も愛翔の右腕に抱きついていつもの3人になっていた。
”春”のメンバーも慣れてしまい、自然な感じだ。
「ご注文はお決まりでしょうか」
ウェイターがオーダーを取りに来たため、慌ててメニューに顔を寄せる女子5人に愛翔が苦笑を浮かべ。
「すみません。まだ決まっていないので、もう少し後でお願いします」
「わかりました、後程お伺いします」
軽く頭を下げウェイターが下がっていった。
そこから選んだのが
愛翔が300gのステーキランチ、桜はスープカレーを、楓も一瞬カレーを選ぼうとしたところで喉を気にしてハニーレモンベーグルフレンチトーストを選択、他の面々もそれぞれに料理をオーダーした。
「インテリアも凝っていて雰囲気あるわね」
「あ、デッキにプールがある。泳げたりするのかしら」
「あのプールって入れるのかな?前に来た時も誰もいなかったから、どっちかというと雰囲気づくりのアイテムじゃないかなって思ってる。泳ぐなら、ここはマリンスポーツの基地にもなってるからそっちかな」
海を眺めながら雑談と食事を楽しむ。
食後のドリンクタイム、長嶺が愛翔たちに向かって口を開いた。
「午前中は住吉君の案内で素敵な時間をありがとう。午後はあなた達3人で過ごしなさいな。そして、そうね3時半に会場前のホールに集合でいいかしら」
「いや、これ軽音楽部”春”としての活動だろう……」
「住吉君。今回案内してくれたコースって本当は華押さんや楓ちゃんとのデートコースとして考えていたんじゃないの?」
図星を指された愛翔は言葉に詰まる。
「ほんの2時間くらいだけど、デートしていらっしゃい」
0
あなたにおすすめの小説
バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件
沢田美
恋愛
「きょ、今日からお世話になります。有馬蓮です……!」
高校二年の有馬蓮は、人生初のアルバイトで緊張しっぱなし。
そんな彼の前に現れたのは、銀髪ピアスのギャル系先輩――白瀬紗良だった。
見た目は派手だけど、話してみるとアニメもゲームも好きな“同類”。
意外な共通点から意気投合する二人。
だけどその日の帰り際、店長から知らされたのは――
> 「白瀬さん、今日で最後のシフトなんだよね」
一期一会の出会い。もう会えないと思っていた。
……翌日、学校で再会するまでは。
実は同じクラスの“白瀬さん”だった――!?
オタクな少年とギャルな少女の、距離ゼロから始まる青春ラブコメ。
小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!
竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」
俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。
彼女の名前は下野ルカ。
幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。
俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。
だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている!
堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!
∞
桜庭かなめ
恋愛
高校1年生の逢坂玲人は入学時から髪を金色に染め、無愛想なため一匹狼として高校生活を送っている。
入学して間もないある日の放課後、玲人は2年生の生徒会長・如月沙奈にロープで拘束されてしまう。それを解く鍵は彼女を抱きしめると約束することだった。ただ、玲人は上手く言いくるめて彼女から逃げることに成功する。そんな中、銀髪の美少女のアリス・ユメミールと出会い、お互いに好きな猫のことなどを通じて彼女と交流を深めていく。
しかし、沙奈も一度の失敗で諦めるような女の子ではない。玲人は沙奈に追いかけられる日々が始まる。
抱きしめて。生徒会に入って。口づけして。ヤンデレな沙奈からの様々な我が儘を通して見えてくるものは何なのか。見えた先には何があるのか。沙奈の好意が非常に強くも温かい青春ラブストーリー。
※タイトルは「むげん」と読みます。
※完結しました!(2020.7.29)
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
この男子校の生徒が自分以外全員男装女子だということを俺だけが知っている
夏見ナイ
恋愛
平凡な俺、相葉祐樹が手にしたのは、ありえないはずの超名門男子校『獅子王院学園』からの合格通知。期待を胸に入学した先は、王子様みたいなイケメンだらけの夢の空間だった!
……はずが、ある夜、同室のクールな完璧王子・橘玲が女の子であるという、学園最大の秘密を知ってしまう。
なんとこの学園、俺以外、全員が“訳アリ”の男装女子だったのだ!
秘密の「共犯者」となった俺は、慣れない男装に悩む彼女たちの唯一の相談相手に。
「祐樹の前でだけは、女の子でいられる……」
クールなイケメンたちの、俺だけに見せる甘々な素顔と猛アプローチにドキドキが止まらない!
秘密だらけで糖度120%の学園ラブコメ、開幕!
俺をフッた幼馴染が、トップアイドルになって「もう一度やり直したい」と言ってきた
夏見ナイ
恋愛
平凡な大学生・藤堂蓮には忘れられない過去がある。高校時代、告白した幼馴染の星宮瑠奈に「アイドルになるから」とこっ酷くフラれたことだ。
数年後、瑠奈は国民的アイドル『LUNA』として輝いていた。遠い世界の住人になった彼女との再会なんて、あるはずもなかった――そう、変装した彼女が俺の前に現れ、「もう一度やり直したい」と泣きつくまでは。
トップアイドルの立場を使い強引に迫る元幼馴染と、過去の傷。揺れ動く俺の日常を照らしてくれたのは、俺の才能を信じてくれる後輩・朝霧陽葵の存在だった。
俺をフッた幼馴染か、俺を支える後輩か。過去の清算と未来の選択を描く、ほろ苦くも甘い、逆転ラブコメディ、開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる