幼馴染の初恋は月の女神の祝福の下に

景空

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第230話 トップチームでの初練習

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「住吉愛翔です。今日から、週末の練習だけではありますが合流させてもらいます。よろしくお願いします」
ステラスポーツセンターの第1グラウンド。トップチームの練習場に愛翔はいた。
「やっと来たな。住吉」
愛斗の後ろから声が掛かった。
「時枝か」
「久しぶりだな住吉」
「ああ、どうだトップチームの居心地は」
「厳しいけど、サッカー三昧だからな。サッカーで食っていくなんて贅沢な事を考えたらこれ以上の環境は中々無いな」
「1度ゲームに出ているのは見たぞ。中々定着は難しいみたいだな」
「ああ、みんな必死だからな。その中で定着ってのはな。だが俺はあきらめんぞ」
「ふっ、それでこそ時枝だ」
愛翔と時枝はお互いに右手を握り軽くぶつけ合った。
トップチームの練習は奇をてらったものではなくひたすらに王道だった。そのレベルがただただ高いだけで。単なるパス回しの精度が、ドリブルのスピードとフェイントの巧みさが、シュートの威力とコースを狙うコントロールがU18と比べ1枚も2枚も上だった。
「ふう、こういうの良いな。やっぱりレベルの高いサッカーは楽しいな」
「よ、お疲れ。で、いつもの彼女はどうしたんだ。今日は居ないみたいだけど」
「あのなあ、俺たちはまだ高校生だ。受験に向けて色々あるんだよ。それでもそのうち……。ああ、ちょうど今来たな」
一息入れる愛翔に時枝がからんできたちょうどその時、観覧席に桜と楓が姿を見せ、その横には加藤・新本のカップルと高野の姿もあった。その後ろから理沙と麗奈、そして直樹と慎一郎まで姿を現した。
すぐに愛翔の姿に気付き手を振り声を掛ける桜と楓。
「あいとー、頑張ってー」
「愛翔ー、愛してるー」
後ろから楓を麗奈がたしなめ、慎一郎が苦笑いをしている。
「愛翔君ー、応援してるからねえ」
高野も遠慮なく応援をしている。
愛翔も苦笑いしつつ軽く手を振り応えた。
「で、まだ決められないのか?」
時枝がぼそりと愛翔に問いかけてきた。
「まあ、覚悟は決めたさ」
「ふん、まあいざとなった時にヘタレるなよ」


「よーし、今日は初参加の住吉がいることだし、ミニゲームで歓迎会だ」
トップチームの監督八森光秀(はちもり みつひで)が指示を出し、メンバーが振り分けられる。レギュラー中心のユニフォームチームと若手中心のビブスチーム。愛翔は当然のようにビブスチームだ。
ユニフォームチームは司令塔アグラ・悠を中心に一線級のメンバーが揃っている。
ビブスチームの司令塔は時枝、愛翔もここに来て遠慮するつもりはない。
「住吉、ライトウィングスタートでいいな」
時枝の確認に愛翔は軽く頷き
「U18の最後のゲーム覚えているか?」
「当たり前だろ。で、出来るんだろうな」
簡単な打ち合わせを終え両チームがポジションにつく。
ビブスチームボールでのキックオフ。
センターフォワードから時枝にボールが戻され、一気に前線にフィード。愛翔が大胆に右サイドを抉る。ユニフォームチームのディフェンダー中林も愛翔へのチェックが早い。
「トップスピードに乗ったお前は手に負えないからな。早めに潰させてもらう」
「2年前はスピード以外ではどうにもなりませんでしたけど、あのままのオレじゃありませんよ」
愛翔はJ1トップクラスのディフェンダーと堂々と渡り合う。大きくなったフィジカルでボディチェックに耐え磨き上げたテクニックでボールを支配下に置く。そしてクルリと体をまわし得意のマルセイユルーレットで中林を抜き去る。中林も抜かれたままにはしないと愛翔に追いすがるけれど、それでも愛翔はあっという間に右奥いつものエリアに到達していた。そこまでボールを運びながら味方の動きを見ていた愛翔はハイボールでクロスを左サイドに上げる。
中央付近で待ち構えていた敵味方の頭の上を絶妙な高さで抜け、フリーでポジショニングしていたレフトウィング田淵晋(たぶち すすむ)の足元にボールはふわりと着地し停止する。
「撃て」
愛翔の無言の視線にシュートを撃つ田淵。ゴール左隅を狙ったシュートはそれでも咄嗟に飛びついた正ゴールキーパー倉内雅弘がパンチングで防ぎ枠内には入らずゴールラインを割る。
ビブスチームのコーナーキック。田淵はピッチ内を見やる。
「こっちによこせ」
ここでも愛翔のプレッシャーにゴール前右サイドにハイボールを放り込む田淵。
ゴール前の混戦の中、愛翔はダイビングで頭を合わせゴール右隅にコントロールする。それでもと右手の拳で倉内がゴール外にボールをはじき出す。
はじき出された先にはいつの間にか更に距離を詰めていた愛翔がいた。そして小さく鋭く愛翔の右足が閃きボールはゴールネットを揺らした。
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