幼馴染の初恋は月の女神の祝福の下に

景空

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第257話 戦略

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翌日、光野高校は2学期の終業式。午前中で帰宅した愛翔たちは女子バスケットボール部、軽音部の協力を得て近隣の防犯カメラ設置施設に頭を下げて回っていた。
「ええ、どうやらこの日の夜に盗撮犯が出たようなんです。それで身を守るためになんとかお願します」
「まあ、住吉君たちをあんないかがわしい雑誌に売りつけるてのは許しがたいんだが、私も立場上簡単に許可は出来なくてね」
「そこを何とかお願いできませんか」
そこの担当者は”んー”と悩み
「ああ、そう言えば住吉君はPC得意だったね」
突然の話題に愛翔が何事かと目を見張るが
「実はね、今防犯カメラのデータを管理するPCのメンテナンスを予定しているんだけど、私はどうにも苦手でね。バイトでやってくれると助かるんだが。どうかな?」
「は、はい、喜んでやらせていただきます。ありがとうございます」
”つまりバイトで触っているときに見ていいってことだよな。ありがたい”愛翔たちは普段から近隣の住民とコミュニケーションをとっており、ちょっとした”お手伝い”をよくしていた。だからこそ、自分の立場ギリギリの協力をしてくれる人が何人もいた。

その結果。
「こいつが実行犯で間違いないな」
「そうね、そしてこの人がデータを受け取っているようね」
「ここからは、興信所に頼むしかないか。で、証拠が揃った段階で……」
愛翔が、両手を握りしめ歯を食いしばった。
愛翔たちの周りには女子バスケットボール部、軽音部のメンバー達がいる。だからこそ愛翔は言い淀んだ。そんな愛翔に対して誰も急かさない。そして彼女たちは知っている。愛翔が、その愛するものに手を出した敵に一切の慈悲を持たない事を。
そして落ち着いた愛翔が口を開く。
「まず、この実行犯。おそらく年代的に高校生。自分のやった事の重大さやリスクに気付いていない。県の迷惑防止条例違反、軽犯罪法違反、そしてカメラの設置においてバカなことに他人の財産に穴をあけた器物損壊、そして俺たち自身を無断で撮影したことに対して損害賠償請求をする。前科がつき金も払わざるを得ない状況にもっていく」
”そして”と続ける
「出版社に対しては損害賠償請求が主軸だな。楓に過去の事例を探してもらった。500から600万の賠償がみとめられている事例があったそうだ」
楓が愛翔の横で頷く。
「だけどな、それだけじゃ納得できるものじゃないからな。せめて俺たちを載せた号は赤字になってもらう」
そこから愛翔はその写真週刊誌の発行部数からおおよその売り上げ、粗利を想定してみせる。その金額売り上げ1億、粗利2000万。
「でも、それじゃ赤字になんて出来ないんじゃないの?」
末成が疑問の声を上げる。
「まあ、普通にやるだけならね」
「それじゃ?」
「出版社って裁判対応は弁護士に依頼するのはわかるよな」
愛翔の言葉に揃って頷くメンバー達。
「で、裁判における弁護士費用ってのは手付金と成果報酬なんだが、この成果報酬ってのが成果の30%ってのが相場らしいんだよ」
”それで?”とメンバー達が先を促す。
「だから裁判でこちらが5000万を請求して、500万に落ち着いたら?」
”あ!!”メンバー達が愛翔の言葉に驚きを隠さない。”それに”とさらに愛翔が続ける。
「今回被害者側が全員未成年なんで、500万では済まない可能性も結構あるって弁護士の先生は息巻いてた。楓の見つけた事例はあくまでも成人した芸能人への賠償だったそうだからね。5000万てのもそれを見込んだ金額。あまりに常軌を逸した金額だと裁判では棄却される可能性もあるそうだけど、今回の事例ならこの程度なら戦えるだろうって話だ」
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