幼馴染の初恋は月の女神の祝福の下に

景空

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第265話 薬指

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「はー、楽しかったねぇ」
桜がふにゃふにゃした顔でつぶやく。夕食のあとのホッとする時間ではあるけれど久しぶりの気の抜けた表情に愛翔も優しい気持ちになっていた。
「ここのところちょっと緊張感があったものね。私もちょっと肩の力が抜けてほっとしたわ」
楓も気心の知れた仲間との時間は楽しめたようだ。”それに”と楓が続ける。
「お義姉さんからT大の様子を聞けたのも嬉しかったわね」
「あ、そういえば愛翔はすぐにイメージ掴めたみたいだったけれど……」
桜がコテンと首を傾げ”知ってた?”と愛翔をみる。
「俺の場合、アメリカでの学校生活があるからな。アメリカだと中学高校も単位制で似たような感じなんだよ」
「そういえばアメリカだと単位制でスキップもあるんだったわね。愛翔もスキップしたのよね」
「ああ、教育課程が違うんで帰ってきたとき念のため1年に編入にしたけどな。ま、2人と一緒に過ごせたからそれも正解だったと思ってる」
そう言うと愛翔は桜と楓をそっと抱き寄せた。


「っと、ごめん。ちょっと用事があったんだった。1時間で戻る」
時計を見た愛翔が少し慌てて立ち上がる。
「うん?クリスマスイブに用事?」
桜がちょっと頬を膨らませる。
そんな桜を愛翔は抱き寄せ頭を撫でる。
「ごめん、本当は昨日の予定だったんだけど、向こうが遅れて今日になっちゃったんだ。その代わりじゃないけど帰ってきたら今日はいっぱい甘やかすから」
愛翔がそっと囁くと、桜は照れて赤くなりながら、それでも頬をさらに膨らませる。
「愛翔、それはズルい。愛翔にそんな風に言われたら、あたしは嫌って言えないの分かってるくせに」
「ごめん。でも桜も楓もきっと喜んでくれると思うから」
「むうう。わかった。でも今日は本当に甘えるからね」
桜が頷いた。
「ねえ愛翔。桜だけ?」
そこに楓がにっこりと笑顔で口を開いた。
「楓もに決まってるだろ。ちょっと期待していてくれ」
愛翔は楓の頭もそっと撫ぜるとジャケットを羽織り駆け出していった。


愛翔が向かったのは駅前の繁華街。そこの一角にあるジュエリーショップ。クリスマスイブということで前日までは人があふれていたであろう店内には数人の店員と仲睦まじい様子のカップルが一組だけ。
愛翔は迷うことなくカウンターに向かった。
愛翔に気づいた店員が笑顔で迎える。
「住吉さん。出来てますよ。今回は納期が遅れてすみませんでした」
「いえ、俺ももっと早くにお願いすればよかったので」
「では、ご注文の品はこちらになります」
店員が取り出したのは小ぶりではあるけれど華のある赤い小箱2つ。それを愛翔に向かって開けてみせる。
「うん、確かに。注文通りだ」
「では、お支払いをお願いします」
支払いを済ませ、愛翔は店を出た。”ふたりとも喜んでくれるかな”愛翔の口元が緩み、足も動きが早い。

「ただいま」
結局愛翔はほとんどランニングの勢いで帰宅した。さすがの愛翔も軽く息がはずんでいる。
「おかえりー」
「おかえりなさい」
桜と楓が小走りに玄関まで出迎えた。愛翔も目を細め幸せをかみしめる。そして2人を抱き寄せ頬にキスを落とす。
「もう、愛翔。そんなに慌てて帰ってきたの」
愛翔の息が上がっているのをみて楓が呆れたように言った。
「愛翔が急いで帰ってきてくれたの、あたしは嬉しいけどなあ」
桜は嬉しそうに愛翔の胸に顔を擦り付ける。

リビングに移動したところで愛翔が2人の前で箱を取り出した。
「え、愛翔。それ」
「まずは、これは桜。左手を出して」
愛翔が桜の左手をとり薬指に指輪をはめた。きらりと光る透明な石の指輪。桜が両手を頬に当て涙を浮かべた。
「そしてこっちは楓」
そうして愛翔が楓の左手薬指に指輪をはめる。楓も言葉を失っている。
「本当は、昨日のうちに受け取れる予定だったんだけど1日遅れちゃってね。クリスマスプレゼントというのとは違うし、順番が後先になったけど受け取ってくれるよね」
とたんに愛翔の両側に抱きつく桜と楓。
「嬉しい。受け取るにきまってるじゃないの」
感情を爆発させ喜ぶ桜と、言葉にならずコクコクと頷く楓に、愛翔もホッとした顔で2人の頭を撫でる。”それと”と愛翔が続ける。
「近々、一緒にジュエリーショップに行って欲しいんだ」
愛翔の言葉に桜も楓も?を頭の上に浮かべるような顔をした。
「それは、いわゆるエンゲージリングだからさ。そのマリッジリングも。ね」
照れてソッポを見ながら愛翔が告げ、桜と楓は更に愛翔に抱きつきキスの雨を降らした。
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