農家の娘さん、〖百合結婚できないバグ〗解消のためコツコツ努力していたら、人類最強になっていた。

狭間こやた

文字の大きさ
74 / 119

74,人体素材。

しおりを挟む
〈呪殺返しのキュウリ〉の効果は、
『食すことで、《呪殺返し》スキルを会得できる。これは自らにかけられた呪いスキルを、そのまま発動者に跳ね返すスキル。このとき自らにかかっていた呪いは、無効化される』。

 さっそく〈呪殺返しのキュウリ〉を食し、《呪殺返し》スキルを獲得。だけど、まだ使わない。

「ベロニカさん、視界のカウントダウンをお願いします」

「えーと、まってね、いまは98、97」

 そこから、私は脳内で続けつつ、単身《操縦》で飛翔。空の高みから、周囲を見下ろす。
 いない、どこにも発動者らしき者がいない。
 つまらない。それは、つまらない。つまらないっっっ! 
 ふと影が見えた。私が先ほどまでいた場所──〈のっぺらぼう〉に飛翔能力はないようで、まだそこにいる──から、5ブロックほどの距離。建物を遮蔽物にするようにして、誰かがいる。

 私は急降下し、滑り込むようにして着地。遮蔽物の陰にいた男が、ビクッとした。なんだ、補佐官のベルトさんか。

「ベルトさん。あなたが呪いスキルの発動者だったのですね。しかし、なにが目的ですか? なにかあるでしょう、なにか」

 私に正体を見破られ、つかのまベルトさんは驚き、焦っていた。だがすぐに勝ち誇ってみせる。

「僕の正体が分かったところで、もう遅い。君はあと、数十秒で死ぬのだからなぁ!」

 私はベルトさんを指さし、にこっと笑いかけてから、《呪殺返し》を発動。
 さすがに己の呪いスキルが丸ごと返ってきたので、ベルトさんも分かったようだ。いきなり叫び出す。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! なぜ僕に、《顔のない呪い》がぁぁぁぁぁ!!??」

〈のっぺらぼう〉を用いた呪いスキルの正式名称が、《顔のない呪い》というのかぁ。ふーん。あと50秒もないね。

「解除だ、解除だぁぁあ! うわぁぁぁぁなんで解除できないんだぁぁぁぁあ!?!」

 と、頭をかきむしりながら叫びに叫ぶベルトさん。それはそうだろう。いま《顔のない呪い》の主導権は、私が握っているのだから。《呪殺返し》によって、ある意味では《顔のない呪い》を乗っ取ったと同じことなのだ。
 そのことを伝えると、ベルトさんが土下座してきた。額を地面にガンガン叩きつけるようにして、頭を下げまくってくる。

「お゛お゛お゛お゛願いじまぁぁぁぁす助けてぇぇぇぇ助けてくだざぁぁぁぁぁぁ!!!」

 ふむ。ベルトさんには、いろいろと聞きたいことがある。イズラ卿を不死者に仕立てあげたのは、なにも酔狂というわけではあるまい。
 何か目的があってのことだ。
 私は、それは陽動ではないかと思っている。王に対して、さらに宮廷に対しての陽動ではないかと。その点を聞き出すまでは、ベルトさんには死んでもらっては困る。

「分かりました。いま解除しますからね」

 涙と鼻水を流しつつも、安堵した様子のベルトさん。

「ああぁぁぁぁぁありがとうございまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁす!」

「さてと解除……解除、解除、ふむ、まってくださいね、解除……………あの、解除って、どうやるんですか?」

 ベルトさん、絶望の叫び。

「なんじゃそりぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! 解除は解除だろうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! 解除しろよボケがぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

 あー、これ解除できないんだ。
 おそらくカウントダウンが始まったら、もう後戻りはできないスキル。それこそ呪いという名にふさわしい。
 ベルトさんは、これまで解除しようとしたことがないのだろう。だから己のスキルでありながら、もう解除不可ということを知らない。

 そんなベルトさんは、「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」と叫び、取り乱し、嘆き悲しんでいた。
 うーむ。このまま死なすのは気の毒だ。死ぬのならば、心穏やかに死んでほしい。私にできることは、なんだろう? 
 よし、歌おう。

「らんらんららららんらんらんらーーーん♪♪♪」

 ベルトさん、凍り付く。

「…………なに、して、いるんだ?」

「はい、和むかと思いまして。私、歌には自信があるんですが?」

「ふっっっっっっっっっっっっっっっざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁアアアアアアァアァァァア!!!!」

 ばたんと、ベルトさんが倒れる。
 ご臨終です。

 死体を眺めていたら、ふいに体が動いていた。
 まずベルトさんの死体を裸にする。それから魔改造くわ〈スーパーコンボ〉を繊細に動かし、ベルトさんの皮を剥ぐ。
 いや、皮じゃない。もっと内部だ。胴体をY字切開して、内臓を取り出していきましょう。そして、心臓を引き抜いたとき、それが赤い粒子となり、〈スーパーコンボ〉に降り注ぐ。
 瞬間、〈スーパーコンボ〉のスキルツリーに、新たな領域【呪術領域】が生まれた。

「おお、〈スーパーコンボ〉の新たな力。ありがとうございます、ベルトさんっっ!!」

 ベルトさんの衣服を、探る。隠しポケットから、メッセージカードが出てきた。

『贖い日 時刻鐘が23回鳴ったとき ストル庭園にて  S』

 贖いの日は、古い暦であり、たしか21日後。
 時刻鐘が23回は、夜の11時。ただしストル庭園というのが、どこかは分からない。
 とにかくそのストル庭園で、『S』という人が待っているようだ。

 ベルトさんは、イズラ卿を陽動にして、何か企んでいた。この『S』という人を問いただせば、何か分かるのかもしれない。
 だけど、私は無視してもいいんだよね。
 別に、贖いの日にストル庭園へと行き、『S』という人を見つける必要はない。人生がゲームならば、これはサブイベントみたいなものだもの。無視してもいいし、続けてみてもいい。

 さて、どうしたものかな。まぁ、まだ先の話だし、ゆっくりと決めよう。
 唸り声がしたので見てみると、3匹の野良犬が、ベルトさんの死体に食らいついていた。

 ほほえましく思って、私は言った。

「ワンちゃん、ゆっくり食べないと、喉につまらせますよー」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

追放された俺の木工スキルが実は最強だった件 ~森で拾ったエルフ姉妹のために、今日も快適な家具を作ります~

☆ほしい
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺は、異世界の伯爵家の三男・ルークとして生を受けた。 しかし、五歳で授かったスキルは「創造(木工)」。戦闘にも魔法にも役立たない外れスキルだと蔑まれ、俺はあっさりと家を追い出されてしまう。 前世でDIYが趣味だった俺にとっては、むしろ願ってもない展開だ。 貴族のしがらみから解放され、自由な職人ライフを送ろうと決意した矢先、大森林の中で衰弱しきった幼いエルフの姉妹を発見し、保護することに。 言葉もおぼつかない二人、リリアとルナのために、俺はスキルを駆使して一夜で快適なログハウスを建て、温かいベッドと楽しいおもちゃを作り与える。 これは、不遇スキルとされた木工技術で最強の職人になった俺が、可愛すぎる義理の娘たちとのんびり暮らす、ほのぼの異世界ライフ。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

処理中です...