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73,収穫〈呪殺返しのキュウリ〉。
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何事にも、良い面はあるものだ。
〈のっぺらぼう〉の呪術スキルが、強化武器によるスキルツリーで発動されていた場合。その強化武器は、私の魔改造鍬〈スーパーコンボ〉のための立派な強化素材となるのでは?
ただし問題は、スキルツリー覚醒者が発動していた場合だ。その場合は──その人物のパーツが、強化素材となる?
これは一考に値する。つまり、地下迷宮〈死の楽園〉の魔物ならば、撃破したとたん強化素材だけが残った。
では、それがスキルツリー覚醒者だとどうなるのだろう? つまり、人体でも強化素材となりえるのか?
これまでスキルツリー覚醒者の人体が強化素材となった、という話は聞いたことがない。だけど、いま〈スーパーコンボ〉は強化素材を受け入れる状態になっている。
はじめに〈倦怠艶女(ミスティナ)〉さんの角(つの)を強化素材にしたあの瞬間から。
今ならば、〈死の楽園〉の魔物以外でも、たとえば他者の強化武器、そしてスキルツリー覚醒者の人体からでも、強化素材とさせることができるのではないか?
それを確かめるためには、まずこの〈のっぺらぼう〉の発動者を見つけ出す。そして、その人が善意ある方ではないことを確かめる。収穫させていただいても、倫理的に問題ないと分かったならば、『人体とは強化素材となりえるのか?』という問題に終止符を打とうではないか。
では、はじめの第一歩として、この〈のっぺらぼう〉さんだ。
〈のっぺらぼう〉さんが、死の呪いスキルの媒介的役割を担っていることは疑いようがなさそう。そして本体というわけではないので、物理攻撃での破壊も無理そう。もっと特殊効果的なスキルならば対処できるのかもしれないけど、私はその手のスキルはまだ育てていない。
だたひとつだけ攻略法がある。
《耕作:熟練者》だ。
『バトル中。発動とともに耕地が出現。そのバトルに必要なスキル実が発芽される。収穫までの時間は、バトルの状況に左右される。収穫したスキル実は、一度使用すると効果を終える』。
実は《熟練者》の下位互換《一人前》のときと、スキル内容は同じ。ただ『一人前』が『熟達者』になったので、その収穫速度が爆上がりしていることは間違いない。
そして現在、私は呪術スキルによる攻撃を受けているのだから、バトル中という条件にも満たされるでしょう。
というわけでさっそく発動──するのは、外のほうがいいかな?
《耕作》スキルで創り出した耕地って、確かスキル実を収穫したあとも放置されていた気がする。【覇王魔窟】ならば階移動時に初期化されるけど、せっかくのカブギルド居室で使って、床を台無しにするのは抵抗がある。
というわけで、もう夜も遅くなっているので、窓から外に出る。外出理由を聞かれたら面倒なので。少し行ったところに、王都内の公園があった。そこでならば耕地を作っても片付けやすそう。
公園に向かっていると、「ダ~リン♪」という呼びかけが聞こえてきた。どこのバカップルだろうと思ったら、駆け寄ってきたのはベロニカさん。え、するとバカップルの片割れは、私?
「どうしたんですか、ベロニカさん?」
「カブギルドの本拠地内には入れないから、外でアリアが出てくるのを待っていたの。徹夜する覚悟だったけど、こっそり抜け出してきてくれて良かったわぁ」
それはストーカーというような。
「ベロニカさん。私、ちょっと用事がありまして」
ベロニカさん、怪訝そうな顔で、目の前の何もない空間を右手で触ろうとする。それから、「現実に出現しているわけではなく、あたしの視界内にうつりこんでいるの?」と呟いた。
その状況には、覚えがある。
「もしかしてベロニカさん。視界に、カウントダウン表示が出現しました?」
「え? そーなのよ、アリア。いま188秒だって。どんどん数字が減っていくんだけと──なんか不気味。0になったら、あたし、死ぬんじゃない??」
死ぬのは、私ですよー。
私は、〈のっぺらぼう〉を指さした。
「見えますか?」
「え、見えるって? そこの通行人さん? もちろん見えるけど──わっ、顔がないわっ!!」
なるほど。ベロニカさんは、〈のっぺらぼう〉は、ただの通行人だと思っていたのか。もう暗いので、じっくり顔を見ないと、のっぺらぼうには気づかない。ベロニカさんの注意は、私にだけ向けられていたし。
ふーむ。だいたい分かったぞ。
〈のっぺらぼう〉に憑かれると、別の誰かが〈のっぺらぼう〉を見た瞬間、カウントダウンが開始。おそらく毎回201秒から。
カウントダウンが0になったら、憑かれている者は死ぬ。さっきのイズラ卿のように。
そして〈のっぺらぼう〉は、カウントダウンを見た者に新たに憑く。イズラ卿のときの私であり、いまはベロニカさんだ。
ただ辻褄があわない点も。
イズラ卿は、〈のっぺらぼう〉を見えていないようだったけども? それは、イズラ卿が『〈のっぺらごう〉に憑かれた初めの犠牲者』だったからでは?
とにかく、カウントダウンが終わる前に、対処しておかないと。イズラ卿のときのように、私もぽっくりと死んでしまう。
公園まで行くヒマはないので、ここで《耕作:熟練者》を発動。
耕地ができ、スキル種が発芽。ベロニカさんが耕地を眺めながら、「あたし、歌う?」と提案してきた。
「いえ、結構です」
スキル実が収穫可能に成長するまで、25秒かかった。さっそく耕地より引っこ抜く。
〈呪殺返しのキュウリ〉を収穫したよっっっ!!!
〈のっぺらぼう〉の呪術スキルが、強化武器によるスキルツリーで発動されていた場合。その強化武器は、私の魔改造鍬〈スーパーコンボ〉のための立派な強化素材となるのでは?
ただし問題は、スキルツリー覚醒者が発動していた場合だ。その場合は──その人物のパーツが、強化素材となる?
これは一考に値する。つまり、地下迷宮〈死の楽園〉の魔物ならば、撃破したとたん強化素材だけが残った。
では、それがスキルツリー覚醒者だとどうなるのだろう? つまり、人体でも強化素材となりえるのか?
これまでスキルツリー覚醒者の人体が強化素材となった、という話は聞いたことがない。だけど、いま〈スーパーコンボ〉は強化素材を受け入れる状態になっている。
はじめに〈倦怠艶女(ミスティナ)〉さんの角(つの)を強化素材にしたあの瞬間から。
今ならば、〈死の楽園〉の魔物以外でも、たとえば他者の強化武器、そしてスキルツリー覚醒者の人体からでも、強化素材とさせることができるのではないか?
それを確かめるためには、まずこの〈のっぺらぼう〉の発動者を見つけ出す。そして、その人が善意ある方ではないことを確かめる。収穫させていただいても、倫理的に問題ないと分かったならば、『人体とは強化素材となりえるのか?』という問題に終止符を打とうではないか。
では、はじめの第一歩として、この〈のっぺらぼう〉さんだ。
〈のっぺらぼう〉さんが、死の呪いスキルの媒介的役割を担っていることは疑いようがなさそう。そして本体というわけではないので、物理攻撃での破壊も無理そう。もっと特殊効果的なスキルならば対処できるのかもしれないけど、私はその手のスキルはまだ育てていない。
だたひとつだけ攻略法がある。
《耕作:熟練者》だ。
『バトル中。発動とともに耕地が出現。そのバトルに必要なスキル実が発芽される。収穫までの時間は、バトルの状況に左右される。収穫したスキル実は、一度使用すると効果を終える』。
実は《熟練者》の下位互換《一人前》のときと、スキル内容は同じ。ただ『一人前』が『熟達者』になったので、その収穫速度が爆上がりしていることは間違いない。
そして現在、私は呪術スキルによる攻撃を受けているのだから、バトル中という条件にも満たされるでしょう。
というわけでさっそく発動──するのは、外のほうがいいかな?
《耕作》スキルで創り出した耕地って、確かスキル実を収穫したあとも放置されていた気がする。【覇王魔窟】ならば階移動時に初期化されるけど、せっかくのカブギルド居室で使って、床を台無しにするのは抵抗がある。
というわけで、もう夜も遅くなっているので、窓から外に出る。外出理由を聞かれたら面倒なので。少し行ったところに、王都内の公園があった。そこでならば耕地を作っても片付けやすそう。
公園に向かっていると、「ダ~リン♪」という呼びかけが聞こえてきた。どこのバカップルだろうと思ったら、駆け寄ってきたのはベロニカさん。え、するとバカップルの片割れは、私?
「どうしたんですか、ベロニカさん?」
「カブギルドの本拠地内には入れないから、外でアリアが出てくるのを待っていたの。徹夜する覚悟だったけど、こっそり抜け出してきてくれて良かったわぁ」
それはストーカーというような。
「ベロニカさん。私、ちょっと用事がありまして」
ベロニカさん、怪訝そうな顔で、目の前の何もない空間を右手で触ろうとする。それから、「現実に出現しているわけではなく、あたしの視界内にうつりこんでいるの?」と呟いた。
その状況には、覚えがある。
「もしかしてベロニカさん。視界に、カウントダウン表示が出現しました?」
「え? そーなのよ、アリア。いま188秒だって。どんどん数字が減っていくんだけと──なんか不気味。0になったら、あたし、死ぬんじゃない??」
死ぬのは、私ですよー。
私は、〈のっぺらぼう〉を指さした。
「見えますか?」
「え、見えるって? そこの通行人さん? もちろん見えるけど──わっ、顔がないわっ!!」
なるほど。ベロニカさんは、〈のっぺらぼう〉は、ただの通行人だと思っていたのか。もう暗いので、じっくり顔を見ないと、のっぺらぼうには気づかない。ベロニカさんの注意は、私にだけ向けられていたし。
ふーむ。だいたい分かったぞ。
〈のっぺらぼう〉に憑かれると、別の誰かが〈のっぺらぼう〉を見た瞬間、カウントダウンが開始。おそらく毎回201秒から。
カウントダウンが0になったら、憑かれている者は死ぬ。さっきのイズラ卿のように。
そして〈のっぺらぼう〉は、カウントダウンを見た者に新たに憑く。イズラ卿のときの私であり、いまはベロニカさんだ。
ただ辻褄があわない点も。
イズラ卿は、〈のっぺらぼう〉を見えていないようだったけども? それは、イズラ卿が『〈のっぺらごう〉に憑かれた初めの犠牲者』だったからでは?
とにかく、カウントダウンが終わる前に、対処しておかないと。イズラ卿のときのように、私もぽっくりと死んでしまう。
公園まで行くヒマはないので、ここで《耕作:熟練者》を発動。
耕地ができ、スキル種が発芽。ベロニカさんが耕地を眺めながら、「あたし、歌う?」と提案してきた。
「いえ、結構です」
スキル実が収穫可能に成長するまで、25秒かかった。さっそく耕地より引っこ抜く。
〈呪殺返しのキュウリ〉を収穫したよっっっ!!!
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