「リスポーン地点は魔王の城でした。」

師芭

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第1章

Ⅰ―XⅧ

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 長い名前…。子供にしか見えない女王様。
 

 僕は現状が全く理解出来ていない。
 

 いやさ、王様って言われてたから普通はふくよかなオジサンを想像するじゃん。あくまで僕の普通だけど。
 

 でも誰も、こんな幼い女の子がこの国の王様なんて分からない…よね?。
 
 
 大体、この子から一切言われてなかったよね?
 
 
 「言わなかった事は謝る。じゃが、良かったではないか。こんな可愛い王様で」
 
 
 ニコッと笑いながら、彼女は僕達の横を通り過ぎて玉座に座った。
 

 そして長い袖から、杖の様な物を出す。
 
 
 「ん?もしや、相棒と既に会っていたのか?」
 
 
 魔王はキョトンとした顔で、僕と女の子を交互に見る。
 
 
 「お主が呑気に迷子になっている時にな」
 
 
 杖の先にある扇形に広がった部分を口に当てて、話す少女。
 

 動作はそれらしいけど、僕の頭はまだ彼女が女王様だと信じきれていない。
 
 
 「ほう…では例の件とやらはもう話してあるのか?」
 
 

 「いや、まだじゃ。お主が来たら話そうと思っておった」
 
 

 例の件…?
 
 

 「では手短に話してくれ。我等も暇ではないからな」
 
 
 「お主が迷子なんかになってたせいで遅れたというのに…自分勝手な奴じゃなぁ」
 
 

 一体、何の話をするつもりなんだ?魔王からはそんな事、聞かされていなかったよ?
 

 普通に挨拶とかで終わると思ってたのに。
 
 
 「場所を変えて話すとしようかのう」
 
 
 彼女はそう言うと、玉座から立ち上がり歩き出した。
 
 
 *****
 
 
 僕は幼い女王様から出された飲み物を見つめている。
 

 なんか黒い…。黒いぞこれ…。
 
 
 「さて、要望通り手短に話すとしよう」
 
 
 目の前の女の子は、僕に出したものと同じ黒い飲み物を上品に一口だけ飲み、話をし始めた。
 
 
 「例の件というのはのう、魔王への頼み事じゃ」
 
 
 頼み事…。と魔王は呟き、僕と同じく出された黒い飲み物をすする。
 

 美味しいのか…?…これ
 
 

 「頼み事の内容は…」
 
 
 内容は…?
 

 僕は黒い飲み物が入っている陶器に手を添える。
 
 

 「ぶっちゃけお使いじゃ」
 
 
 …………お使い?
 

 その時、僕の耳にドーレミファーソーラシードと流れてきたのは気のせいだろう。
 
 

 「この我にお使いを頼むとは…お前も偉くなったものだな」
 
 

 黒い飲み物をまたすする魔王。怒っているというよりも何か嬉しそうだ。
 
 

 「お主のお陰でな」
 
 
 ニヤッと口角を上げる女王様。魔王とは旧知の仲なのか?
 
 

 「それで、そのお使いの内容は何だ?」
 
 
 女王様が魔王に頼む様なお使い…。
 
 
 「魔化聖品を買ってきてほしいのじゃ」
 
 

 まかせいひん?
 

 何だか聞きなれない固有名詞が出てきた。
 
 

 「魔法式を組み込んだ機械か。お前の城に既にあるだろう」
 
 

 まほうしき…を組み込んだ…機械?
 
 

 「確かにあるが、他の国の物はどの様なやつか知りたくてな」
 
 

 「自分で買いに行けば良いであろう」
 
 
 「めんど…立場上無理なのじゃ」
 
 

 今、絶対、面倒くさいって言おうとしたこの子。
 でも面倒くさいからって魔王に頼むの…?普通。
 
 

 「お主が旅をすると聞いてな。丁度いいじゃろ?」
 
 
 丁度良いで、旅の目的が勝手に追加されるのは流石の魔王でも…断るんじゃ
 

 魔王も珍しく唸っているし。
 
 

 「報酬は出すぞ」
 「じゃあ、やる」
 
 
 ええっ!?即答!?
 

 さっきまでの唸りは何だったの?報酬でコロッと変わるってみみっちいよ魔王!!
 

 僕は心の中で叫んだ。

 
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