19 / 26
第1章
Ⅰ―XⅨ
しおりを挟む
魔王のみみっちさが分かった所で、僕達は少女にしか見えない女王様から具体的なお使いの内容を聞いていた。
「魔王もそのお供も魔化聖品についてよく知らなさそうだから」という理由からだ。
魔王もよく知らないのか…。
「魔王はきっと見た事あると思うが、お供もこの城で見たはずだぞ」
え…?僕、そんな固有名詞の物を見た事無いと思うんだけど。
「お主、ちゃんとトイレを使ったのか?」
戸惑いの表情を浮かべていると急にトイレの話が。
ちゃんと使ったので頷く。
別に普通のトイレだったけど……。
「アレを見て何も感じないのか」
アレとは…?僕は首を傾げた。
「お主は一体、どこで用を足したのじゃ…」
ため息をつく女王様。
正直、僕にはこの子が言っていることが分からない。何もおかしな所なんて無かった…はず。
「わらわの城のトイレは世界広しと言えども最高級の魔化聖品を使っておる!!」
急に大声で何を言い出すんだこの人。
「何せ魔法で動くからな」
ドヤ顔で語る女王様。
魔法?
急にファンタジーっぽい物が。
「この城のトイレは水魔法や風魔法が自動的に発動する様になっておるのじゃ」
…………………?
……………………ああ。
まさか、僕が用を足し終えた後にすぐ水が流れたのも、洗った手を乾かすために手をかざして風が吹いたのも。
全部、魔法だったんだ…。
何も違和感無かったけど、ここは異世界…トイレから出るとセンサーで水が流れたりするのが普通なわけ無い。
じゃあ…
「その……魔法が発動する物を…まかせいひんって言うんですか?」
「そうじゃ、やっと分かったか」
一応、分かったので頷く。
魔法って結構、神秘的なモノだと思ってたけど日用品に使われてるのか。
何か期待を裏切られた気分…。
「魔化聖品は魔法式を組み込み、自動的に発動する物じゃ。希少ゆえ滅多に見れないが、旅をすれば 見る事もあるだろう」
だからお主等に頼んでおるのじゃ。と女王様は言った。
流石、女王様。頼み事もお使いってレベルじゃない。
姿は少女にしか見えないから、子供の無理なワガママに聞こえてくる。
「頼み事は分かった。ただ実行するのは報酬による」
魔王のみみっちさは変わらない。
この人、報酬次第で何でもやらかしそうで怖いよ。
「報酬は高級肉一年分でどうじゃ?」
ニヤリと口角を上げ、魔王に商談を持ちかける少女。表情が全く子供らしくない。
高級肉一年分…。何かのクイズで正解すると貰えそうな報酬だなぁ。
「肉か!良いぞ!!その頼み引き受けた!!」
顔色を変え身を乗り出しながら、承諾する魔王。
世界の支配者が高級肉で、こんなに喜ぶなんて…。
「引き受けてくれると思っておった。お主は昔から食べる事が好きだからのう…」
安心したように笑う女王様。
食べる事が好きって…確かに豪快によく食べてるけど。
「ああ!唯一の生きがいだ!!」
そう言って、黒い物が入っている飲み物を勢いよく飲み干す魔王。
魔王の生きがいが食べる事って…
「では…そろそろ出るとしよう」
「何じゃ、もう行くのか?」
「先程も言った通り、暇ではないのでな」
そう言って、魔王は僕の方を見て笑った。
そうか、今日は念願のゆっくりする日。
色々な事がありすぎて、忘れていたけど魔王は忘れて無かったみたいだ。
「分かった。この件、宜しく頼むぞ」
女王様は少し落ち込んでいる様に見えたけど「頼む」と言った瞬間、真剣な顔付きに変わった。
子供の様な姿をしているけど、立派に王としての責務を果たしているのが分かる表情だった。
「相棒も早くそれを飲んでしまえ」
目の前の女の子の表情に目を奪われていたら、魔王に急かされた。
「それ」とは、未だに僕の手のひらの中にある少しも減っていない黒い飲み物の事。
まさか、この美味しいのかも不味いのかも分からない謎の飲み物を飲み干せと言われるとは…。
正直、飲みたくなどないんだけど出された物を飲まないなんて…しかも魔王に言われたことによって、飲まないといけない雰囲気になってるし……。
ゴクリ…
抗い難い雰囲気に負け、そっとコップを口元に近づける。
こういう時は勢いでなんとかなる…!!!
そう心で念じ、勢いよくコップを傾けた。何とも言い難い舌触りの液体が喉に向かって流れていく。
…ゴクン
………………飲み終えた。
戦いは終わったのだ。
!!
やっぱ終わってなかった。
口内中に…苦い…いや臭い…そんな味が広がった。
昔、食べたタイヤのグミの味に似てる……。
何とか吹き出したり、吐いたりしなかったけど。
この飲み物の感想はそれぐらいです。
「魔王もそのお供も魔化聖品についてよく知らなさそうだから」という理由からだ。
魔王もよく知らないのか…。
「魔王はきっと見た事あると思うが、お供もこの城で見たはずだぞ」
え…?僕、そんな固有名詞の物を見た事無いと思うんだけど。
「お主、ちゃんとトイレを使ったのか?」
戸惑いの表情を浮かべていると急にトイレの話が。
ちゃんと使ったので頷く。
別に普通のトイレだったけど……。
「アレを見て何も感じないのか」
アレとは…?僕は首を傾げた。
「お主は一体、どこで用を足したのじゃ…」
ため息をつく女王様。
正直、僕にはこの子が言っていることが分からない。何もおかしな所なんて無かった…はず。
「わらわの城のトイレは世界広しと言えども最高級の魔化聖品を使っておる!!」
急に大声で何を言い出すんだこの人。
「何せ魔法で動くからな」
ドヤ顔で語る女王様。
魔法?
急にファンタジーっぽい物が。
「この城のトイレは水魔法や風魔法が自動的に発動する様になっておるのじゃ」
…………………?
……………………ああ。
まさか、僕が用を足し終えた後にすぐ水が流れたのも、洗った手を乾かすために手をかざして風が吹いたのも。
全部、魔法だったんだ…。
何も違和感無かったけど、ここは異世界…トイレから出るとセンサーで水が流れたりするのが普通なわけ無い。
じゃあ…
「その……魔法が発動する物を…まかせいひんって言うんですか?」
「そうじゃ、やっと分かったか」
一応、分かったので頷く。
魔法って結構、神秘的なモノだと思ってたけど日用品に使われてるのか。
何か期待を裏切られた気分…。
「魔化聖品は魔法式を組み込み、自動的に発動する物じゃ。希少ゆえ滅多に見れないが、旅をすれば 見る事もあるだろう」
だからお主等に頼んでおるのじゃ。と女王様は言った。
流石、女王様。頼み事もお使いってレベルじゃない。
姿は少女にしか見えないから、子供の無理なワガママに聞こえてくる。
「頼み事は分かった。ただ実行するのは報酬による」
魔王のみみっちさは変わらない。
この人、報酬次第で何でもやらかしそうで怖いよ。
「報酬は高級肉一年分でどうじゃ?」
ニヤリと口角を上げ、魔王に商談を持ちかける少女。表情が全く子供らしくない。
高級肉一年分…。何かのクイズで正解すると貰えそうな報酬だなぁ。
「肉か!良いぞ!!その頼み引き受けた!!」
顔色を変え身を乗り出しながら、承諾する魔王。
世界の支配者が高級肉で、こんなに喜ぶなんて…。
「引き受けてくれると思っておった。お主は昔から食べる事が好きだからのう…」
安心したように笑う女王様。
食べる事が好きって…確かに豪快によく食べてるけど。
「ああ!唯一の生きがいだ!!」
そう言って、黒い物が入っている飲み物を勢いよく飲み干す魔王。
魔王の生きがいが食べる事って…
「では…そろそろ出るとしよう」
「何じゃ、もう行くのか?」
「先程も言った通り、暇ではないのでな」
そう言って、魔王は僕の方を見て笑った。
そうか、今日は念願のゆっくりする日。
色々な事がありすぎて、忘れていたけど魔王は忘れて無かったみたいだ。
「分かった。この件、宜しく頼むぞ」
女王様は少し落ち込んでいる様に見えたけど「頼む」と言った瞬間、真剣な顔付きに変わった。
子供の様な姿をしているけど、立派に王としての責務を果たしているのが分かる表情だった。
「相棒も早くそれを飲んでしまえ」
目の前の女の子の表情に目を奪われていたら、魔王に急かされた。
「それ」とは、未だに僕の手のひらの中にある少しも減っていない黒い飲み物の事。
まさか、この美味しいのかも不味いのかも分からない謎の飲み物を飲み干せと言われるとは…。
正直、飲みたくなどないんだけど出された物を飲まないなんて…しかも魔王に言われたことによって、飲まないといけない雰囲気になってるし……。
ゴクリ…
抗い難い雰囲気に負け、そっとコップを口元に近づける。
こういう時は勢いでなんとかなる…!!!
そう心で念じ、勢いよくコップを傾けた。何とも言い難い舌触りの液体が喉に向かって流れていく。
…ゴクン
………………飲み終えた。
戦いは終わったのだ。
!!
やっぱ終わってなかった。
口内中に…苦い…いや臭い…そんな味が広がった。
昔、食べたタイヤのグミの味に似てる……。
何とか吹き出したり、吐いたりしなかったけど。
この飲み物の感想はそれぐらいです。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
異世界でまったり村づくり ~追放された錬金術師、薬草と動物たちに囲まれて再出発します。いつの間にか辺境の村が聖地になっていた件~
たまごころ
ファンタジー
王都で役立たずと追放された中年の錬金術師リオネル。
たどり着いたのは、魔物に怯える小さな辺境の村だった。
薬草で傷を癒し、料理で笑顔を生み、動物たちと畑を耕す日々。
仲間と絆を育むうちに、村は次第に「奇跡の地」と呼ばれていく――。
剣も魔法も最強じゃない。けれど、誰かを癒す力が世界を変えていく。
ゆるやかな時間の中で少しずつ花開く、スロー成長の異世界物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる