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第1章
Ⅰ―XX
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「健闘を祈っておるぞ」
子供らしい無邪気な笑顔で見送る女王様。
それに対し深々とお辞儀をする。まだ口内中にあの味が広がっている。
「では見つけたら、送るからな」
魔王は魔法が使えるらしく、見つけたら転送魔法とやらでこの城に送るらしい。
一度も魔法らしい魔法を見たこと無いけど、旅先で見れるのかな?
そう思うと少しだけ期待してしまう。
白い建造物の外に出ると、日は頭上より少し傾いている。もう午後らしい。
口内に変わらず居座っている悪魔のせいで少し、吐きそうになった。
「まさかクレアに使いを頼まれるとはな…」
城門の外へ向かう途中、魔王が呟くのが聞こえた。
クレア…あの女王様の事だよね?
結局、名前は覚えられなかった。
………名前
…………名前かぁ…
…………………………。
何か忘れてるという違和感。
うーん…何だろう。
凄い大事な事な気がするけど思い出せない。
「相棒!!」
一人、考えていると魔王が急に話しかけてきた。何だどうした。
「お前の名前は何だ!?」
それだ。
唐突に魔王に質問されたけどそのお陰で僕は、今しがた感じていた違和感の正体に気付く事が出来た。
僕達はお互いの名前をまだ知らないままだ。
今更過ぎるけど、確かに僕の名前を名乗ったこともないし魔王の名前を聞いたこともない。
魔王は僕の事を「相棒」としか呼ばないし、僕はそもそもあまり魔王に話しかけたりしない。
もう5日間も一緒にいるのにお互いの名前を知らないなんて……。
割と名前って必要ないんだな。
「相棒!聞いているのか!!?」
名前の必要性の無さを感じていると魔王が耳元で叫んだ。
元気ですか!?とでも言われている様な気迫。そして鼓膜が爆発するんじゃないかと思うくらいの大声。
このヒトは何度、僕の耳を使い物にならなくすれば気が済むのか…。
「聞こえてるよ…」
ダメージがいったのは左の耳だったけど念の為、両耳を抑えながら僕は応える。
「………お前は名前を覚えているのか?」
そうだ。記憶喪失と疑われてたんだった。
僕としては一週間前に食べた夜ご飯も、読んだ漫画の内容もしっかり覚えているけど…。
「名前は……覚えているよ」
ずっと相棒と呼ばれ続けるのも嫌なので、名前だけは覚えているという事にしておく。
「ほう…何という名だ?」
僕は学校では先生にすらも呼ばれたことの無い名前を言った。
「……理人」
子供らしい無邪気な笑顔で見送る女王様。
それに対し深々とお辞儀をする。まだ口内中にあの味が広がっている。
「では見つけたら、送るからな」
魔王は魔法が使えるらしく、見つけたら転送魔法とやらでこの城に送るらしい。
一度も魔法らしい魔法を見たこと無いけど、旅先で見れるのかな?
そう思うと少しだけ期待してしまう。
白い建造物の外に出ると、日は頭上より少し傾いている。もう午後らしい。
口内に変わらず居座っている悪魔のせいで少し、吐きそうになった。
「まさかクレアに使いを頼まれるとはな…」
城門の外へ向かう途中、魔王が呟くのが聞こえた。
クレア…あの女王様の事だよね?
結局、名前は覚えられなかった。
………名前
…………名前かぁ…
…………………………。
何か忘れてるという違和感。
うーん…何だろう。
凄い大事な事な気がするけど思い出せない。
「相棒!!」
一人、考えていると魔王が急に話しかけてきた。何だどうした。
「お前の名前は何だ!?」
それだ。
唐突に魔王に質問されたけどそのお陰で僕は、今しがた感じていた違和感の正体に気付く事が出来た。
僕達はお互いの名前をまだ知らないままだ。
今更過ぎるけど、確かに僕の名前を名乗ったこともないし魔王の名前を聞いたこともない。
魔王は僕の事を「相棒」としか呼ばないし、僕はそもそもあまり魔王に話しかけたりしない。
もう5日間も一緒にいるのにお互いの名前を知らないなんて……。
割と名前って必要ないんだな。
「相棒!聞いているのか!!?」
名前の必要性の無さを感じていると魔王が耳元で叫んだ。
元気ですか!?とでも言われている様な気迫。そして鼓膜が爆発するんじゃないかと思うくらいの大声。
このヒトは何度、僕の耳を使い物にならなくすれば気が済むのか…。
「聞こえてるよ…」
ダメージがいったのは左の耳だったけど念の為、両耳を抑えながら僕は応える。
「………お前は名前を覚えているのか?」
そうだ。記憶喪失と疑われてたんだった。
僕としては一週間前に食べた夜ご飯も、読んだ漫画の内容もしっかり覚えているけど…。
「名前は……覚えているよ」
ずっと相棒と呼ばれ続けるのも嫌なので、名前だけは覚えているという事にしておく。
「ほう…何という名だ?」
僕は学校では先生にすらも呼ばれたことの無い名前を言った。
「……理人」
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