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第1章
Ⅰ―XXII
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僕は目の前の彼に対して、初めて積極的に話かけた気がする。
僕にとって、魔王というイメージは最初よりも良いイメージになってきた。
彼は優しい。
だからこそ、色々な人に慕われているんだ。
一生懸命、考える。
彼がまた名前を捨ててしまわない様に。
一つ、思いついた。
でも、この名前は少し皮肉めいて聞こえるかもしれない。
「………クラージュ…なんてどうかな?」
「…クラージュ?」
魔王は微妙な反応を示した。
クラージュ。
勇気という意味。フランス語だった気がするけど詳しくは覚えていない。
あるゲームに出てくる、僕の好きな主人公の名前。
果たして、魔王はこの言葉の意味を知っているのだろうか?
「どうして、そんな名前を…?」
どうやら知っているらしい。
その証拠に困惑の表情が浮き出ている。
どうして?
僕は微笑みながら、これは皮肉では無いと伝わる様に理由を説明する。
「魔王は勇気があるヒトだから」
彼には勇気がある。
そう、勇者とは違う人を困らせない勇気。
人を笑顔にさせる勇気を持っている。
僕はこの世界での勇者の有様を聞いたとき、とても衝撃的だった。
でも、僕の知っている勇者に近い存在がいない訳じゃない。むしろ、結構近くにいる。
だって隣にいたからね。
「僕がそう思っただけだけどね」
「………………………」
もしかしたら、怒らせてしまったかもしれない。
目の前の青年は肩を震わせている。
軽率な事をしてしまったし、言ってしまったかも。
謝らないと―――
「‥あ‥」
?
「‥‥り‥が‥」
アリが?
「‥とうっっ……!!!」
僕より、はるかに背が高い男が目から大粒の汗を流している。
彼は必死に流れをせき止めようと手で拭うけど、それでも留めなく溢れてくる様だ。
………どうしよう……泣かせてしまった。
相手が女子でしかも小学生なら、周りから罵声が飛んでいたと思う。
でも、例え大人の男だとしてもこれは対処に困る…!
何か、出来る事は無いかとゲーム知識が大半の頭を回転させた。
結局、魔王が泣き止むまで僕はその場でオロオロしてるしかありませんでした。
*****
宿屋にて。
僕は、この国の地図を見ていた。
今から、僕が選ぶ好きな所に行くらしい。
もう午後だけど、こういうご褒美は嫌じゃない。
どこにしようかと悩んでいるのが一番楽しいもんだよね。
「リヒト!!」
急に僕を呼ぶ声がした。
すぐ近くに座っているというのに、そんな大声を出す必要性があるのか。
「なに?」
実はわざわざ聞かなくても分かっているけど一応、言っとく。
「我の名前は何だ!?」
予想通りの言葉に、ため息が出そうだ。
だって、このやり取りを宿に戻ってからずっと繰り返しているんだもん。
「クラージュ」
飽きたので少し声色を下げて言ってみた。
僕は一体、何度、勇気と言えば良いんだろう。
そんな愛と勇気だけが友達という訳でも無いのに。
近くであぐらをかいている青年は、僕の言葉を聞いて嬉しそうにしている。
僕も何度目か分からない、笑みを零した。
僕にとって、魔王というイメージは最初よりも良いイメージになってきた。
彼は優しい。
だからこそ、色々な人に慕われているんだ。
一生懸命、考える。
彼がまた名前を捨ててしまわない様に。
一つ、思いついた。
でも、この名前は少し皮肉めいて聞こえるかもしれない。
「………クラージュ…なんてどうかな?」
「…クラージュ?」
魔王は微妙な反応を示した。
クラージュ。
勇気という意味。フランス語だった気がするけど詳しくは覚えていない。
あるゲームに出てくる、僕の好きな主人公の名前。
果たして、魔王はこの言葉の意味を知っているのだろうか?
「どうして、そんな名前を…?」
どうやら知っているらしい。
その証拠に困惑の表情が浮き出ている。
どうして?
僕は微笑みながら、これは皮肉では無いと伝わる様に理由を説明する。
「魔王は勇気があるヒトだから」
彼には勇気がある。
そう、勇者とは違う人を困らせない勇気。
人を笑顔にさせる勇気を持っている。
僕はこの世界での勇者の有様を聞いたとき、とても衝撃的だった。
でも、僕の知っている勇者に近い存在がいない訳じゃない。むしろ、結構近くにいる。
だって隣にいたからね。
「僕がそう思っただけだけどね」
「………………………」
もしかしたら、怒らせてしまったかもしれない。
目の前の青年は肩を震わせている。
軽率な事をしてしまったし、言ってしまったかも。
謝らないと―――
「‥あ‥」
?
「‥‥り‥が‥」
アリが?
「‥とうっっ……!!!」
僕より、はるかに背が高い男が目から大粒の汗を流している。
彼は必死に流れをせき止めようと手で拭うけど、それでも留めなく溢れてくる様だ。
………どうしよう……泣かせてしまった。
相手が女子でしかも小学生なら、周りから罵声が飛んでいたと思う。
でも、例え大人の男だとしてもこれは対処に困る…!
何か、出来る事は無いかとゲーム知識が大半の頭を回転させた。
結局、魔王が泣き止むまで僕はその場でオロオロしてるしかありませんでした。
*****
宿屋にて。
僕は、この国の地図を見ていた。
今から、僕が選ぶ好きな所に行くらしい。
もう午後だけど、こういうご褒美は嫌じゃない。
どこにしようかと悩んでいるのが一番楽しいもんだよね。
「リヒト!!」
急に僕を呼ぶ声がした。
すぐ近くに座っているというのに、そんな大声を出す必要性があるのか。
「なに?」
実はわざわざ聞かなくても分かっているけど一応、言っとく。
「我の名前は何だ!?」
予想通りの言葉に、ため息が出そうだ。
だって、このやり取りを宿に戻ってからずっと繰り返しているんだもん。
「クラージュ」
飽きたので少し声色を下げて言ってみた。
僕は一体、何度、勇気と言えば良いんだろう。
そんな愛と勇気だけが友達という訳でも無いのに。
近くであぐらをかいている青年は、僕の言葉を聞いて嬉しそうにしている。
僕も何度目か分からない、笑みを零した。
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