23 / 26
第1章
Ⅰ―XXIII
しおりを挟む
「有難う御座いました」
とカウンターに立っている女性が言った。
僕はそれに対し2日間、お世話になったお礼として頭を下げる。
今日から、また旅が始まる。
「リヒト、日が傾く頃には泊まる所を見つけたい」
早く行く様にと急かすクラージュ。
次はどこに行くんだろうか。そんな早くに着く所なのかな?
街は早朝だというのに多くの人で賑わっている。もう少しだけ、この国に居たかった。
「次はどこに行くの?」
「海都だ。クレアに頼まれた物も買わないといけないから、少し遠回りになるがな」
海都……海かぁ。
そういえば暫く、海なんか行ってないや。
まかせいひんがある場所、分かってたんだ。
それなら結構、早くにお使いは終わるんだね。
「そういえば今日、泊まれる所は行く先の近くにあるの?」
日が傾く頃には見つけたいと言っていたから、どこに泊まるかまでは考えていないらしいし。
「我の知っている限りだと無い」
「え」
え。
ぼそっと「野宿の可能性もある」とか言ってる。もしかして、もしかして僕、人生初の野宿を経験する羽目に…?
こういう時って、ダンボールとか用意しなくて良いのか?凍え死なないよね?大丈夫だよね?
「む?何だあの人だかりは」
クラージュが突然、止まった。目線を追ってみるとそこには確かに人だかりが出来ている。
僕達は顔を見合わせて、その人だかりへと突っ込んで行った。
どうやら、人々は一枚の張り紙を見ているようだ。
「WANTED?」
張り紙にはそう書いてある。
文字の下には、仏頂面で髪型がとても個性的な男の子の絵が描かれていた。
絵の下にはやたらとゼロが多い数字が書かれている。
つまり、この子は賞金をかけられているのか。
僕と同い年ぐらいなのに、大変だな。
「コイツが勇者だ」
「え!?」
この子が今、僕達が探している勇者?あの、不法侵入とかモロモロをやらかした勇者?
にわかに信じ難い。
特にこのよく分からないヘアスタイルのやつが勇者なんて信じたくない。
「この国にまで張り出される様になるとは…。早く倒さねばならないな」
そう言って踵を帰すクラージュ。
僕も慌ててそれについて行く。
勇者の外見は覚えたけど、本当に倒さなきゃいけないのか…。
和解…とかは出来ないのかな。
聞いてみようとクラージュの方を見るけど、僕の視線に気付かない様だ。
彼はただ前を見て、進んでいる。
目的の為だけに動くその様は、今までに無い魔王らしさが見えた気がした。
とカウンターに立っている女性が言った。
僕はそれに対し2日間、お世話になったお礼として頭を下げる。
今日から、また旅が始まる。
「リヒト、日が傾く頃には泊まる所を見つけたい」
早く行く様にと急かすクラージュ。
次はどこに行くんだろうか。そんな早くに着く所なのかな?
街は早朝だというのに多くの人で賑わっている。もう少しだけ、この国に居たかった。
「次はどこに行くの?」
「海都だ。クレアに頼まれた物も買わないといけないから、少し遠回りになるがな」
海都……海かぁ。
そういえば暫く、海なんか行ってないや。
まかせいひんがある場所、分かってたんだ。
それなら結構、早くにお使いは終わるんだね。
「そういえば今日、泊まれる所は行く先の近くにあるの?」
日が傾く頃には見つけたいと言っていたから、どこに泊まるかまでは考えていないらしいし。
「我の知っている限りだと無い」
「え」
え。
ぼそっと「野宿の可能性もある」とか言ってる。もしかして、もしかして僕、人生初の野宿を経験する羽目に…?
こういう時って、ダンボールとか用意しなくて良いのか?凍え死なないよね?大丈夫だよね?
「む?何だあの人だかりは」
クラージュが突然、止まった。目線を追ってみるとそこには確かに人だかりが出来ている。
僕達は顔を見合わせて、その人だかりへと突っ込んで行った。
どうやら、人々は一枚の張り紙を見ているようだ。
「WANTED?」
張り紙にはそう書いてある。
文字の下には、仏頂面で髪型がとても個性的な男の子の絵が描かれていた。
絵の下にはやたらとゼロが多い数字が書かれている。
つまり、この子は賞金をかけられているのか。
僕と同い年ぐらいなのに、大変だな。
「コイツが勇者だ」
「え!?」
この子が今、僕達が探している勇者?あの、不法侵入とかモロモロをやらかした勇者?
にわかに信じ難い。
特にこのよく分からないヘアスタイルのやつが勇者なんて信じたくない。
「この国にまで張り出される様になるとは…。早く倒さねばならないな」
そう言って踵を帰すクラージュ。
僕も慌ててそれについて行く。
勇者の外見は覚えたけど、本当に倒さなきゃいけないのか…。
和解…とかは出来ないのかな。
聞いてみようとクラージュの方を見るけど、僕の視線に気付かない様だ。
彼はただ前を見て、進んでいる。
目的の為だけに動くその様は、今までに無い魔王らしさが見えた気がした。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる