終わりを願った者への鎮魂歌

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第三話 異世界

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ゲラニウムと共に村へと向かいながら俺は分けてもらった食料と水を食べながら歩く。

「ぷはぁ~生き返るわ~」

 まるでおっさんであるがそれは仕方ない。
 だって昨日から食べてないんだもん。そりゃただの水だってうまく感じるってもんだ。

「しかしそんな軽装でよく森の中にいたな?村を知らないってことは村の人間でもないんだろう?一体どこから来たんだ?」

 う~ん…返しにくい質問が来てしまった。正直に話しても恐らく信用されないだろうし…ふと思ったがなんで言葉が通じているんだろう?
 ゲラニウムって名前から察するに外人っぽいしな。だとしたらさっきのあれはなんだ?もしかして…
 俺は冷静さを取り戻すために首を横に振り、落ち着こうとする。
 とりあえずそっちは後にしよう。それよりも今はどうやって返答するかを考えなくては!困ったなぁ。
 ひとしきり考えた後、やはり俺の中で伝わりやすそうな答えは出ないので

「とりあえず村にいって何処か落ち着けるところに着いてからでもいい?結構込み入った事情があって…」

 と言って、この場はそれで良しとさせて貰うことにした。
 それを聞いたゲラニウムは「わかった。今は詮索しない」とだけ言ってくれた。

 俺は「ありがとう…」とだけ返し、少しの間二人の間に沈黙が訪れた。

 ゲラニウムは髪をぽりぽりと掻いており、少しばつが悪そうであった。
 すまんゲラニウム…お前は悪くない。悪いのはあんなところに送った自称神様のせいだ!まあ、逆に考えればあそこに送られなければこの出会いもなかったのかもしれないけど…
 そういえばゲラニウムに一つ聞きたいことがあった。
 あの透明な壁は一体何だったのだろうか?
 漫画とかアニメにあるような結界みたいなもんなんだろうか?
 正直とても気になる…ので聞いてしまった。

「そういやあの透明な壁は一体何なの?」

 ゲラニウムはその言葉を聞いた時少しとゆうよりもだいぶ驚いていた。
 まあ、仮面の下にある表情は見えてないのでそうっぽく見えるってだけだけど。
 少し考えているのか返事はすぐには来ない。
 だがその返答を待つ前に森の先に開けた場所が見えてきた。
 ようやく森から脱出できる!と少し感動していたのも束の間で
 目の前には謎の巨大蛙の死体?が落ちていたのだ!
 脳が理解できなかった。
 もういい大人なのにちょっとちびっちゃいそうだ。

「な…なんだこれ?」

 俺は間抜けな声でそうゆうとゲラニウムが教えてくれた。
 これは【オヤカタペロン】とゆう魔獣らしい。なんでもこの魔獣は村を襲ったらしく丁度いた勇者達によって討伐されたらしい。
 よかった…一人の時に出会わなくって。多分熊以上にやばいだろ?
 出会った瞬間人生が終わる…熊も十分やばいんだけどね。
 てかさっきの黒い獣といい…このオヤカタペロンといい…さらに勇者だ。
 もしかしたらといいますかてかもう確実だ…
 ここ地球ですらない…つまり全く知らない異世界って奴だ。
 
すごいな…サラリーマンの時は現実逃避したいために「異世界行きたいわ~」なんて軽口言ってたけど、現実に起きると全く笑えない。

 そういえばあいつなんて一言も言ってなかったもんな。
 もしあっちの世界に帰ったらもう少し賢くなろうと俺は遠い目をしながらボーとしていた。

 そんな俺の顔の前に手を振り振りさせてゲラニウムは「おーい大丈夫かー」と声をかけてくれていた。

 俺は「はっ!!」と意識を取り戻すとゲラニウムと共に村へと向かうのだった。

 村の入り口に到着すると前から鎧を着た2人が歩いてくるのが分かった。
 一人は金髪の女性で緑の目のめちゃ美人。もう一人はいかにも元気が有り余ってそうな若い赤髪の兄ちゃんだった。
 兄ちゃんの方は全く興味がないが、すれ違いざまに隣の女性につい目が追いかけてしまった。
 羨ましいものである…あんな綺麗な女性が隣にいるとは。
 少なくとも俺の人生にあんなにも綺麗な女性の横を歩く機会は今のところなさそうである。
 悲しきかな。俺の隣を歩くやつは大体いつも男である。今だって…あれ?
 ゲラニウムがいない…あいつどこ行っちゃったんだ?
 周りを見渡すとゲラニウムはまだ後ろの方で突っ立ていたままだった。
 一体どうしたのだろうか?
 俺が手を振るとそれにゲラニウムは気づいて、再び歩き出す。

「なんかあったの?」と俺は聞くも、ゲラニウムは

「いや何でもない…じゃあ宿にでも行くか!」といって歩いて行ってしまった。

 俺は不思議に思いつつもゲラニウムの後を追うのであった。
 宿に着くとゲラニウムが必要な手続きをしてくれてやっと部屋にてゆっくりすることができたのだった。
 丁度良かったので晩飯ができるまでまだ時間があるため、俺はこの二日間に起こった出来事の整理をし始めることにした。

 一つ…ここは異世界であって地球ではない
 二つ…救わないといけない対象がこの世界にいる…はず
 三つ…帰る方法がない
 四つ…もしかしたら戦わないといけなくなる可能性大
 五つ…あの透明な壁は何?

 まあ、他にもあるかもだけどパっと出てきた限りではこのぐらいだろう。
 どのみち魔物がいる世界なのでこれ以上は一人で旅もできないだろう…
 なんせ俺は戦い方なんて知らない。そんな奴が例え武器を持って旅に出てもすぐ死んでしまうのがオチだろう。
 だったらゲラニウムに頼み、付いて行かせて貰うのが吉だろう。
 そのためには飯を食った後に誠心誠意事情を説明しないと…
 少し気が重くなったが、顔をパシッと叩いて気を引き締めた俺だった。
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