終わりを願った者への鎮魂歌

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第四話 古き心の傷は誰を思いて

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 俺は晩飯を食べるために部屋から出て、とりあえず人の声がする方へ向かった。
 そこには酒場があり、辺りを見渡すと村人がかなり集まっていた。既に出来上がっている人もおり、とても楽し気な会話が辺りに飛び交っている。
 どうやら宿屋は村の酒場としての経営もしているみたいだったのだ。
 
しばらくゲラ二ウムの姿を探しながら歩くと、「お!兄ちゃん!噂になってるぜ~」と左手に木のジョッキを持ったおっちゃん村人Aがいきなり肩を組んできた。

 口からアルコールの匂いがプンプン匂ってくるのが分かる。これは勘だけども多分めんどいやつだな…匂いが語ってきやがる。
 さすがに5年も社会に出ていれば大体わかってくる。
 この匂いが苦しみの始まりだとゆう事を。

 俺は愛想笑いをしながら、「すみません。友人を探してるので」と言うと「まあまあ!」と言いながらおっちゃん村人Aは自分たちの席へと連行しようとしてくる。

 悪気があってやってるわけじゃないので、それにはさすがに強く拒否することができなかった。まあそこが質の悪いところなんだが…
 そんなおっちゃん村人Aの前に見かねたゲラニウムが現れた。先程とは仮面が少し違い、口元が見える。あれ口元の部分取り外し可能だったのか!そりゃそうか。取り外せんと飯食えないしな。

「悪いな!おっちゃん!そいつとちょっと大事な話があるんでね。今は貸せないんだ」と笑いながら言ってくれた。
 おー助かる!さすがゲラニウムだ!臆せずに説得してくれるとは。

 だが、続けざまに「だから話が終わった後に、貸すってことで頼むわ」と俺の希望を打ち砕きやがった…
 それに満足したのか、おっちゃんは「じゃあ仕方ない!終わったらみんなで呑むぞ~!」とガハハと高笑いしながら集団の中に戻っていった。

 助かったのだが…助かっていない気がする。俺あんまりこうゆう酒の席のガヤガヤとゆう雰囲気得意じゃないんだけどなぁ…
 次の日頭痛くなるし。
 ゲラニウムは俺の周りに漂う負のオーラを感じ取ったのか、「悪かったな。これも酒場の宿命だ」と肩にポンっと手を乗せてきた。

「まあ、チャチャっと話して合流するとしますか!」

 そう言って、俺を席へと案内してくれた。
 どうやら先に頼んでいてくれたらしく、運ばれてきた夕飯を食べ終えてから俺達は酒を呑みながら本題に入る。
 まず俺がこの世界の人間ではない事を話した。ゲラニウムは最初は驚きすごく懐疑的な様子でこちらを見て長考する。やがて考えをまとめ終えたのか俺に自らが出した答えを告げて来る。

「信じるよ」

 一言だけであった。信用してくれた理由はわからない。
 一体何に信用できる程の根拠があったのだろうか?
 でもその一言は今の俺にはとてもありがたい。
 はっきり言って俺がゲラ二ウムだったら信じない。頭の狂ってるやつの妄言としか思えないからだ。
 でも彼は信じてくれた。

 俺は余計な言葉は付けずにただ「ありがとう」とだけ伝えた。

 本当なら宿屋の代金と飯の代金そして命まで助けてもらっているのだから何かお礼をしたいが…今の俺にはお礼の言葉くらいしか返せるものがなかった。
 なんせ金もなければ持ち物もない…
 あるのは今着ている患者衣だけである。
 売ったら高く売れそうだが、着るものが無くなるのでその選択肢はない。
 そして次に神が言ってた「救われてほしい奴」とゆう正体不明の存在を探している事を告げた。
 再び考え始めたゲラニウムが「他に何か相手の特徴とか言ってなかったのか」と聞いてきたので、俺は自称神から教えて貰った手掛かりを話す。
 それを聞いて動揺していた…
 驚きとゆうよりかは、何か思うことがあるのだろう。
 ただ唇を噛み締めてこちらを凝視していた。
 明らかに先程とは雰囲気が違う。少し怒気を纏っていた。いや…少しどころじゃない!
 今にも殴りかかってきそうな、めちゃくちゃやばそうな雰囲気である。
 でもどこか苦しそうで悔しそうなのだ。

 小さな声で「そうか…求お前が…」と口ずさむも、言いかけている途中で口を噤む。
 やがて冷静さを取り戻したのか突然ニッと笑い「それは自分で探しな」とだけ言って残っていた酒を呑みほした。

 俺はチンプンカンプンであった。
 何か怒らせることを言ったのは間違いなさそうだが、何に対して怒ったのかがわからない…

「ごめん。俺気に障るようなことを言っちゃった?」と心配しながら問いかけるが、「いや求が悪いわけじゃないさ」と首を振りながら言われる。

 よくわからないがゲラニウムはこの話題に対してこれ以上触れようとしていない事は読み取ることができたので、俺も問い詰めることはしないことにした。
 ムリに問い詰めたとしてもおそらくいい結果は生まれないだろう。
 それに現状この世界の事もあまり知らなければ、金もない。
 もしもムリに問い詰めて嫌われれば放り出されてしまうかも。そんな事になってしまえば戦うこともできない俺は一生この村にいる事になるかもしれない。
 仮に戦うことができるようになっても元の世界に帰れるのはいつになる事やら…

「じゃあ今回はここまでにして呑もう呑もう」と俺はゲラニウムを元気づける事にした。

「そうだな!景気づけに吞むとするか!」そういって同調してくれた。

 少し大きな声で言ったため声が聞こえたのか先程のおっちゃん達も「お!話が終わったのか?こっち来いよ~」というのでみんなで吞むことにした。
 今はこの酒場の雰囲気がとても有難かった。やはり気分が落ちたときは酒である!一人で呑む時のほうが好きだけどもたまにはこうゆうのもいいだろう。俺達はおっちゃん達に合流した後、酒を存分に楽しんだ。
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