公爵令嬢、過保護な父と毒舌な弟に結婚を妨害されています~誰かこの家の男どもを止めてください~【完】

午前3時の雨音

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第11話『王子の隣に立つということ』

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アルヴェルト王国――
灰色の石造りの王都、アストレリア。

列車が駅に滑り込むと、その先に広がるのは、
ラクリエル王国とはまったく異なる、重厚で荘厳な風景だった。

「わたくし、思っていた以上に“王国”らしい王国に来てしまいましたわ……」

リアーナは窓から見える荘厳な城郭と、衛兵の並ぶ整列に思わず口元を引き結んだ。
華やかというより、厳格。整然とした町並みは美しいが、どこか無機質にすら感じられる。

隣で、リセルがそっと声をかけた。

「緊張されてますか?」

「緊張“しか”していませんわ。
そもそも、あちらの方――槍の持ち方、明らかに“歓迎”というより“警戒”ですわよね?」

「……あれは、もともとそういう顔つきなんです」

「……顔の問題でしたのね」

ふっと笑った彼の横顔に、ほんの少しだけ“王子の空気”が宿っていた。
かつてラクリエルで出会ったリセルではなく、“アルヴェルト王国第二王子”としての表情。

「リアーナ嬢。ここからは、すこし私の“役目”が戻ってきます。
でも、絶対に置いていきませんから。隣にいてください」

「言われるまでもありませんわ」

リセルが立ち止まる。
駅構内に、王国旗を掲げた迎えの騎士団が並んでいた。

中央に立つのは、老齢ながら威厳に満ちた人物。
リセルが帽子を取り、深く一礼する。

「リステラ公。お久しぶりです」

「……戻ってこられましたか。殿下」

それは、王宮筆頭宰相。
リセルが国を出る直前、最後まで王位継承に反対していた男だった。

彼の目が、リアーナに向けられる。

「その方が――?」

「私の婚約者、リアーナ・フォン・グランツレーヴ嬢です。
ラクリエル王国セファール公爵家の令嬢にして、私の決断の理由でもあります」

「……はじめまして。リアーナと申します。王子の選んだ国で、誠実に生きてまいりました。
今後とも、どうかよろしくお願いいたします」

リアーナの挨拶に、リステラ公は目を細めた。

「この国は――決して優しくありませんぞ。
令嬢のような“自ら決める意志を持つ女性”は、特に敵を作りやすい」

「でしたら、慣れております。わたくし、母が“かつて悪役令嬢”と呼ばれていたものでして」

沈黙の後、リステラ公の口元に、僅かな笑みが走った。

「……肝が据わっておられる」

「よく言われます」


---

その後、二人は城内に案内された。
石造りの階段、王族専用の回廊。
歩くたび、歴史と重圧の音が足元に響く。

「ここが、あなたの生まれた場所……」

「ええ。……でも、いつの間にか“逃げたい場所”になっていました。
今は、“共に変えたい場所”だと思えます」

そして、重厚な扉の前に立つ。

「父上が、リアーナに会いたいそうです」

「……緊張、増し増しですわね」

「大丈夫。私が隣にいます。……約束しましたから」


---

扉が開かれる。
王の間に光が差し込む。

そこでリアーナは初めて、“王子の隣に立つ”という意味を知る。

――愛の重さも、国の重さも、すべて引き受けて、ようやくその隣に並べるということを。
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