Metal Blood World 〜ようこそ選ばれしプレイヤー達〜

風鈴ナツ

文字の大きさ
75 / 95
灼熱の太陽 編

第59話 バルハラ

しおりを挟む
数百年前のエルフの村

日が沈みかけたエルフの森。1人の青年が剣を腰につけて帰路に着こうとしていた。エルフには珍しい黒髪と黒い瞳......青年は微笑みながら家の扉を開ける。家の前に着いた時には辺りは暗闇だ。

「母さんただいま!」

部屋の明かりはついておらず青年は自分が使える魔法の一つ「ファイヤ」を使って小さい人魂のようなものを出現させる。リビングの机に置いてあった照明に火をつけた。

「ごめんね今日は早く帰れる予定だったんだけど思った以上にミノタウロスの討伐が難しくて........母さんもしかして寝ちゃったの?」

青年は暗い母親の寝室を方に近づく。そこで彼が見たのは照明の光で少しだけ照らされた床に見える浮いた脚の影。寝室の照明にも灯りをつけた。

「母さ.......あ......あぁああああ!!!!母さん!!!」

そこにあったのは泣きながら首を吊る金髪のエルフの母親の姿だった。彼女の瞳には光はなく窓が開いていてそこからくる風でゆっくりと揺れている。

「うわぁあぁぁぁあぁぁぁ!!!」

ズバッ!ゴトッ

青年は泣きながら首を吊っている母親のロープを腰につけていた剣で切り落とす。母親の身体が床に倒れた。首を絞めていたロープも外す。かなり強く絞められており解こうとしてもなかなか解けない。

この時の彼はベッドに置かれていた遺書には気づいていない。



数日後には彼女の葬式が開かれた。葬式参列した人は少なく青年の友人や近所の人ばかりだ。青年はただぼーーっと棺に入った自分の母親を見ていた。すると木の下にいる近所のエルフのおばさん達が喋っている声が聞こえた。

「やっと死んだわね~」

「あんな子産むからよ.....人間との間に生まれた子供なんてね~」

「私達は悪くないわ、あの女が勝手に自殺したの。」

青年は耳がいい。その会話を全て静かに聞いていた。青年は知っていた自分の母親が自分を産んだ事を原因で差別されていた事を........。その日以来青年の目に映る村の景色が全て汚れて見えるようになった。




「俺なんて生まれるべきなんかじゃなかったんだ。母さんも俺の事を恨んでいる.........」

「恨んでなんかないよ。貴方のお母さんは貴方に幸せになって欲しいと思っていた」

ズバッ!ガキーン!

漆黒の鎧を身に纏ったリオがバルハラにゆっくりと近づく。バルハラを何度も斬撃を放つがリオには一切その攻撃は通用しなかった。

「そんな事分かるはずねぇだろッ!!」

「貴方の母親.....元々ジャッジメントさんの直属の部下だったらしいんだよ。俺のプロミネンスドラゴンにはこの森で生きてきた守人の記憶の断片が映し出される。」

リオはベルトに装填された黒い本のような形のアイテムの天面にあるボタンを3回押す。リオは両手に持った二つ剣を構えてバルハラに向かって走り出した。

「近づけさせるかァァ!!!いけシャドウ!!」

バルハラの影から数十体のシャドウ達がナイフのようなものを構えながらリオに向かって動き出す。しかしその数十体が一瞬でリオの斬撃により数メートル先まで吹き飛ばされてしまった。崖から落ちてしまうシャドウもいる。

「なんだと.............」

「これで終わりにしようバルハラ!陽月重炎斬!!!」

タッタッタッタッタッタッ!!!

ズバッ!!ズバァァァァァァァァア!!!

「ぐぁあぁぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁぁ!!!!」

ドガァァァァァァァァァアン!!!!


エクリプススラッシュ!!!エンド..........


リオの持つ2つの剣でバルハラの身体を斬撃で切り裂く。バルハラの身体にXのような斬撃の跡が浮かび上がった直後に激しい爆発が起こった。黒い煙の中から傷だらけのバルハラが立ち上がる。


「まだ.......終わらない。終わらせてたまるかよ........」

「終わらせるよ。真実を知る時が来たんだ。」

リオがそう言った瞬間は地面に倒れ込んでしまった。

「ぐっ........なんだ......この映像は?どこだ....ここは....」






バルハラの脳裏に映し出された映像。それは暗い牢屋の中に鎖で繋がれた1人の金髪のエルフの少女の姿だ。そこに人間の男が何人もやってきた。

「おい、このエルフ。腹にガキがいるぞ。これじゃもう売れないな」

「まぁいい。使えなくなったら捨てればいいんだからな....アッハハハハハ!!!」

「...............。」

それから数ヶ月後のある日。彼女は無事檻の中で出産。少し汚い布に包まれた黒い髪の赤ん坊をただ微笑みながら見つめていた。するとその赤ん坊は瞳を開け彼女の目を見つめたあとゆっくりと笑った。

「ふふっ.....初めて私の赤ちゃん。今日から私が貴方のお母さんよ」

泣きながらエルフの少女は笑顔で赤ん坊にそう告げた。





「これは.............。」

バルハラの身体が足元からゆっくりと黒い灰になって消えていく。彼の目には大粒の涙がこぼれ落ちていた。

「あの時斬撃に貴方の母親の記憶の断片を込めて放った。それが真実だよ」

「俺は.......やり直せるか?」

「過去は変えられないんだ。無理矢理変えようとしてもダメだ。でもね未来は変えられる........またいつかどこかで会おうバルハラ」

「はは.......世界が少し綺麗に見えたよエレアの弟子」

バルハラの身体が消える直前の会話だった。数秒後にはバルハラの身体は完全に消え去りカードも残っていない。完全な消滅だ。

「変えられるよ未来なら.......そろそろ戻るか」

リオが変身を解除しようとしたその瞬間だった。どこからか剣と剣がぶつかる音がする。その方向にリオは近づく。そこで見たのはバルハラと金髪の少女が戦う姿だった。

「あれは過去のバルハラ?だったらあれは若い頃のエレアさん..........」






「やめてくれ!私はお前と戦いたくない!」

「お前の意見なんてどうでもいい!!お前は敵だ!!」

「やめて......やめてくれ.......。」


バシッ!!!

「うっ!!」

バルハラの攻撃でエレアの剣を崖から落としてしまう。このままでは彼女の命はないだろう。

「これで終わりだな.........レクイエムストラッシュ!!」

バルハラはエレアに近づいて剣先を彼女の顔に向ける。エレアは怯えたような表情で彼の顔を見つめていた。


「嫌.........嫌だ........。」

彼は剣を振り上げる。逃げる事なんてできない。彼が剣を振り下ろした、その時だ.........。リオの身体は既にもう動いていた。




ガキーーーン!!

「何?」

「え?」

バルハラの剣が弾かれ、エレアの目の前には黒い騎士が2本の剣を構えて現れてた。過去と現在を繋ぐ穴は消えてしまう可能性がある、それなのにリオはエレアを助ける事を選んだ。


「この人は殺させない!!」

「誰だお前?」

「絶対に......絶対に.........!!」

そう言うと彼は2本の剣で斬撃で攻撃を開始する。青い炎と赤い炎の二つの激しい斬撃でバルハラを襲う。


ジャキーン!ジャキーン!

「くっ........!!そんな馬鹿な。」

「............エンディングを見せてやる。」

彼は2本の剣に炎を纏い息切れをするバルハラに向かって剣を大きく振り下ろす。剣の持ち手を使ってベルトに装填したアイテムの天面の大きなボタンを3回押す。

「陽月重炎斬ッ!!ハァァァア!!」

ズバァァァァァァァァァァァァァァア!!

2本の剣を振り下ろすとそこから赤いドラゴンと青いドラゴンが現れバルハラに向かって放たれる。

「ぬァァァァァァァァア!!」

「今です!」

彼はエレアに持っていた剣の一本を渡す。金髪の少女は戸惑いながら彼に問いを投げかける。

「なんで?」

「貴方が最後を決めてください.........。」

黒い騎士の鎧を纏ったリオの青い瞳が水色に光輝く。若かりし頃のエレアはうなづくとエレアの形見である剣の持ち手を握って立ち上がった。

「分かった.....うぉおぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉお!!」

かつての友に一撃を与える為、彼女は走り出す。



「やめろぉぉおぉぉぉぉおぉ!!」

エレアは彼に向かって剣を振り下ろす。赤い炎が彼の身体を切り裂いた。

ズバァァァァァァァァァァァァァァア

「あ.....あ.......ぐはぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁぁあ、いつか必ず!!」

彼の身体は消え、一枚のカードがその場に落ちた。エレアの形見の剣は耐えきれず砕け散って消えてしまった。リオはその様子を見た後に静かにその場から立ち去る。

「これでいいんだ.........さよなら、また未来で」







しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...