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灼熱の太陽 編

第58話 あの木の下で

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青空は完全に赤く染まっていた。まるで青色で塗ったキャンバスの上から血のような赤い絵の具で塗り替えしたように...........。

山の山頂近くにある崖の上で1人の男が剣を持ってその時を待っていた。

「見つけたぞバルハラ......」

バルハラが振り返るとそこには赤髪の青年リオがいた。バルハラは彼を見ると少し微笑み空を眺め始める。

「よくここまで来たな.........そうかアイツらもやられたか。はは...あっははははははははは!!!!」

「バルハラ....お前を過去に行かせるわけにはいかない!」

「あと数分で過去に繋がる穴が現れる。ちょっとだけ遊んでやるよ.......チェンジッ」

「絶対にさせない!!チェンジ!!」

リオは2枚のカードをかざして赤い本のようなアイテムを出現させると同時に現れたベルトに装填し天面のボタンを押す。

太陽展開!

Nonstop!Acceleration!炎竜解放!オーオーオーオォォォオ!!!我の名を叫べ!!プロミネンスドラゴォォォン!!!

Get the flare........。

バルハラの足元から血の水溜りが出現しそこから現れた何十本もの腕が彼を覆い尽くした。彼の身体が赤く光ると同時に腕は血の水溜りの中へと戻っていってしまう。

Give Requiem a sword of hatred!to bury everything in the dark!!


姿が変わった2人はお互いに剣を構え次の瞬間には辺りに剣がぶつかり合う音が響き渡った。

ズバッ!

「どうした!エレアの弟子よッ!アイツから叩き込まれた技はその程度なのかぁ!?」

ジャキン!

「なんだと?うぁあぁぁぁぁぁあぁ!!!」

リオはカードをデバイスにかざすとバルハラに向かって勢いよく走り出す。

ファイヤ ウィンド スラッシュ

バーニングトルネードスラッシュ!!!

「竜巻き炎舞斬りィィ!!」

リオの剣の刀身が赤く燃え彼の斬撃と共に炎の渦がバルハラに向かって動き出す。

「ふっ.....やはりその程度か。」

しかし炎の竜巻はバルハラの斬撃によって一瞬で消し去られてしまった。

「なに............。」

「簡単な事さ。お前の怒りという感情が技を不安定させている。感情が強ければ強いほど強くなる技だってあるし逆に不安定になる技もある。お前......少し怒りやすい性格だろ?自分に関わりを持ったやつを罵倒されたりしたら冷静さを失いやすい。それ直さねぇと後悔するぜ?」

「うるさい!!」



その頃ジャッジメントの屋敷では

「ジャッジメント様!空が赤く!」

「あぁもうすぐ日食だ」

彼はそういうと立ち上がり近くに置かれていたエレアの形見である剣を持ち外に出る。

「何をなさるおつもりですか?」

「成すべき事をするまでだ。確か山はあの方角だったな........久しぶりにこの力を使う。物体操作.........」

彼の言葉と共に剣は水色に光り始めた。ジャッジメントは剣を山の方角へと思いっきり投げ飛ばす。水色の光を纏った剣は輝きながら勢いよく飛んでいった。

「物を指定した場所に飛ばせる能力さ。彼に......リオに届くといいんだが」

「ジャッジメント様........」





「時間だな。」

彼が振り返った先には黒い穴ようなものが揺らめきながら広がっていく。

「あれが過去へ繋がる穴?」

「これを使ってあの場所へ戻り過去を変える!」

バルハラがその穴に近づくと吸い込まれるように消えてしまった。リオはただそれを見ることしかできない。

「止められなかった..........うっ...あぁぁぁあああ!!」

リオはバルハラに会うまでの道中でデバイスを使って知っていた。過去へ繋がる穴は不安定な存在でありいつ消えるか分からない。最悪の場合元の時代には戻れない可能性があることを.........もし倒せたとしても自分は戻れないんじゃないのか?その恐怖が彼の脚を止めていた。

その時だ。

ズバッ!!!

水色の光に包まれた何かがあの木の根元に突き刺さった。リオはそれに気づきゆっくりと近づく。彼が見つけたのはエレアの形見の剣であった。

「なんでこんなところに.........ッ」

リオはその剣を握る。すると彼の頭の中にある一つのイメージが伝わった。

「そう.....だったんですね......エレアさん。分かりました.....俺行きます。」

2本の剣を握ったリオが過去へ繋がる穴へと近づくと同時に彼の身体は穴へと吸い込まれ気づいた時には同じような場所についていた。









「ここが過去?空が赤い........あそこにいるのはバルハラ」

「お前も来たのか、いいのか?元の時代には戻れない可能性があるんだぞ?その剣はなんだ?」

「この剣はエレアさんの形見だ。この剣には貴方への想いが込められてた。」

リオはベルトからアイテムを取ると元の人間の姿へと戻った。

「想い?この森を滅ぼそうとした俺への怒りか?憎しみか?恨みか?」

「違う.......感謝と謝罪だ。」

「は?」

バルハラの身体は化け物のような赤い鎧を着た姿から元のエルフの姿に戻っていた。どういう事だ?とでも言うような表情をしている。

「エレアさんは貴方の事を恨んでなんかいない。恨んでるのは自分自身だ......大切な親友の心の影に気づいてやれなくて誤った道へと進ませてしまった自分自身に!!」

「やめろ.........」

「ひとりぼっちだった自分に初めてできた友......本当に嬉しかった。君と過ごす時間が宝物のように思えて仕方なかった。ルミーとオーロラ......4人であの木の下で遊んだ日の事を覚えているか?」

「それ以上言うな......」

「かくれんぼをしたり森に探検に行って私が川に落ちそうになった時君は私の手を掴んでくれた。守人になる為の筆記試験が難しくて私が頭を抱えていた時君も試験で忙しいはずなのに間を塗って教えてくれてそのおかげで合格できたんだ。あの時は2人で大喜びしたな........今の私がいるのは君のおかげだ。本当に感謝している。」

バルハラにはエレアが言ってるようにしか聞こえなかった。彼は頭を抱えると声を上げる。

「やめろぉぉぉぉおぉぉぉ!!!!」

「だから止めてみせるよ。エレアさんの大切な親友の貴方を.........。」

その時だ、太陽と月が完全に重なり金色の輪が生まれその光から黒い竜の影が現れる。リオが持っていた赤い本のアイテムが赤く光り始めその本の表紙がめくられると共にその中にいた赤い機械の竜は解き放たれた。

「プロミネンスドラゴン......そして月の竜......。」

太陽の竜と月の竜は交わるようにして空を飛び回る。リオが持っていた本のアイテムは赤色から黒へと変色していた。

「太陽と月の竜.....エクリプスドラゴンか。」

リオはそのアイテムをベルトに装填し天面の赤いボタンを右手に持っているエレアさんの剣の持ち手部分の底で勢いよく押す。閉ざされていた本は開かれてそれに反応するように2匹の竜はリオに向かって降下し始めた。









「チェンジ!!!!」

「「キシャァァァアァオン!!!!!!」」

まず赤の太陽の竜プロミネンスドラゴンが鎧へと変化しリオに装着されていく。その上から月の竜がリオを大きな翼で覆い隠す。


陽月重光!

太陽の竜よ!月の竜よ!今こそ重なりし時だ.........我の名を叫べッ!エクリプスッドラゴォォォォン!!!

2匹の力で最高に輝け!!


「漆黒の鎧ってわけだ。バルハラ.......これで終わらせよう。」

漆黒の鎧を纏ったリオの水色の目が美しく輝いていた。





デュリオン エクリプスドラゴン

数年に一度、日食の日に現れるとされる月の竜アルテミスドラゴンとリオが持つ太陽の竜プロミネンスドラゴンが交わり生まれた今回だけの特別な姿。赤い鎧から一転し漆黒の鎧へと変化しました。

腕や脚に目と同じ水色のラインがあるため暗闇の中でも美しく光り輝き続けます。この姿になれるのは2匹の竜が揃った時だけですので一度きりの変身の可能性が高いです。






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