Marriage Interview~異種お見合い婚~

土筆祐依

文字の大きさ
49 / 201
朧月夜の章

朧月夜の章④

しおりを挟む
 

 翌日もディアゴは朧月夜の元に通った。鏡の池には既に他の候補者がいたようで、ディアゴは終わるまで長椅子に座って待つことにした。時折聞こえる朧月夜の笑い声と、自分以外の男の声。

 嫉妬などしないと思っていたが、彼女が関わると恥ずかしくなるほど小さな男に成り下がってしまう。今すぐ駆け寄って引き離したい衝動を理性で抑えつける。慎重な性格で本当に良かった。彼女の前で醜態を晒したくない。

 ・・・見栄を張るのが男だと、母の言葉を思い出した。



 ディアゴは南方にあるフォルクバングの領主であった父と、父が三番目に迎えた妻から生まれた待望の嫡男だ。
 ただ、当時は決して裕福ではなく寧ろ貧しい暮らしを送っていた。原因は父の見栄による散財だ。

『フォルクバングの領主ならこれ位は必要だろう』

『今買っておかないと明日には無いと言われてな』

『私にだけ特別に、と販売してくれたんだ。ディアゴ!立派だろう!』

 ・・・残念ながら、父は領主の器ではなかった。領民が重い税を課せられ、食べるのもやっとな日々を送る中でディアゴの家だけは立派になる。
 領民が襤褸を着ているのに、自分だけオーダーで仕立てたスーツを着ては毎晩飲み歩く。当然だが領民の不満は溜る一方だった。
 その尻拭いをするのは何時も母だった。

『ディアゴ、仕方ないの。見栄を張るのが男なの。お父様も、ああ見えて本当は気が小さいの。だからお金を持っているってアピールする事でしか自分を保てないの。可哀想な人なのよ』

 可哀想とはこれっぽっちも思えなかった。食べ物がなく、痩せた子どもを見るのが何より辛かった。
 ディアゴは自分が領主を引き継いだら、まずは痩せた子どもをお腹いっぱいにしたかった。その為に何を為べきか自分は知らない。
 ディアゴはその日から良き領主になるために、必死に勉学に励んだ。

 そんな中、父の代わりに領地の運営を担っていた母が倒れた。急いで医師を呼び寄せたが、懸命な治療も虚しく母は帰らぬ人となった。

 過労死だ。使用人を使って呼び出したが、父は帰ってこなかった。怒ったディアゴが町中を探し回ると、父は友人に酒を振る舞って大笑いしていた。
 その金も全て、領民が必死に納めた税から出たものだ。母がこれ以上領地を荒れさせないために、必死で働いたから得られたものだ。ブチッと堪忍袋の緒が切れた音がした。

 ――ディアゴは気が付いたら馬乗りになって父を殴り続けていた。周りが必死になって止めた頃には父の顔はボコボコになって原形を留めていなかった。
 ざまぁみろ!それだけしか頭に浮かばなかった。

 妻を亡くした上、息子からも見放された父親は引退して別荘に引き籠もってしまった。

 不規則な生活が祟ったのか、父親は数年前に亡くなった。肝臓癌だ。余命僅かと言われてもディアゴは会う気が起きず、手紙も全て燃やしていた。領主を引き継いだからこそ分かる。母がどれだけ苦労していたか。あの男がどれだけ好き勝手に生きていたのか。

 ・・・死に際になって後悔しているのか知れないが、知ったことではない。

 ディアゴは父親の見舞いより領地の立て直しを優先した。
 フォルクバング産の麦は早く金を手にしたい父親の足下を見られ、相場よりも安く買いたたかれていた。ディアゴが先ず着手したのが、適正価格の見直しと販売ルートの新規開拓だ。そして以前から考えていた、農家による直接販売に着手した。

 ディアゴは自らネット通販を立ち上げ、フォルクバングの民達が大切に育てた農作物を販売していった。
 自分が作った農作物を、希望価格で販売できる。オーガニック、有機栽培などの付加価値を付ければ驚くほど買い手が付いた。
 最初は乗り気で無かった者達も、次第にディアゴに協力するようになっていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

【完結】一番腹黒いのはだあれ?

やまぐちこはる
恋愛
■□■ 貧しいコイント子爵家のソンドールは、貴族学院には進学せず、騎士学校に通って若くして正騎士となった有望株である。 三歳でコイント家に養子に来たソンドールの生家はパートルム公爵家。 しかし、関わりを持たずに生きてきたため、自分が公爵家生まれだったことなどすっかり忘れていた。 ある日、実の父がソンドールに会いに来て、自分の出自を改めて知り、勝手なことを言う実父に憤りながらも、生家の騒動に巻き込まれていく。

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧井 汐桜香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

【完結】 メイドをお手つきにした夫に、「お前妻として、クビな」で実の子供と追い出され、婚約破棄です。

BBやっこ
恋愛
侯爵家で、当時の当主様から見出され婚約。結婚したメイヤー・クルール。子爵令嬢次女にしては、玉の輿だろう。まあ、肝心のお相手とは心が通ったことはなかったけど。 父親に決められた婚約者が気に入らない。その奔放な性格と評された男は、私と子供を追い出した! メイドに手を出す当主なんて、要らないですよ!

酒の席での戯言ですのよ。

ぽんぽこ狸
恋愛
 成人前の令嬢であるリディアは、婚約者であるオーウェンの部屋から聞こえてくる自分の悪口にただ耳を澄ませていた。  何度もやめてほしいと言っていて、両親にも訴えているのに彼らは総じて酒の席での戯言だから流せばいいと口にする。  そんな彼らに、リディアは成人を迎えた日の晩餐会で、仕返しをするのだった。

好きな人と結婚出来ない俺に、姉が言った

しがついつか
恋愛
グレイキャット伯爵家の嫡男ジョージには、平民の恋人がいた。 彼女を妻にしたいと訴えるも、身分の差を理由に両親から反対される。 両親は彼の婚約者を選定中であった。 伯爵家を継ぐのだ。 伴侶が貴族の作法を知らない者では話にならない。 平民は諦めろ。 貴族らしく政略結婚を受け入れろ。 好きな人と結ばれない現実に憤る彼に、姉は言った。 「――で、彼女と結婚するために貴方はこれから何をするつもりなの?」 待ってるだけでは何も手に入らないのだから。

【完結】お父様の再婚相手は美人様

すみ 小桜(sumitan)
恋愛
 シャルルの父親が子連れと再婚した!  二人は美人親子で、当主であるシャルルをあざ笑う。  でもこの国では、美人だけではどうにもなりませんよ。

処理中です...