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朧月夜の章
朧月夜の章⑨
しおりを挟むその晩、ディアゴはある人物と落ち合う予定になっていた。
相手をされない可能性があったが、どうしても彼の言葉が頭から離れなかった。
手紙を送ると、返事は直ぐに来た。ディアゴは以前、ミハエルにご馳走になって以来お気に入りとなった高級寿司店にその人物を呼び出した。先に着いたディアゴは予約した個室に入り、彼の到着を待つ。
遠くからシャラン、と耳飾りの音が聞こえた。
来た。襖を見ると、その人物は音を立てずに部屋に入ってきた。
「・・・ふむ。良い店であるな」
「ああ。今日は応じて貰った礼として俺が出す。遠慮なく食べてくれ」
「では、お言葉に甘えて」
ディアゴの対面に座ったのは蒼淳だ。朧月夜を巡るライバルであるが、ディアゴはどうしても彼に聞きたい話があった。
だが、先ずは食事だ。酒は飲まないが雰囲気が好きなようで、蒼淳はノンアルコールカクテルを注文した。ドリンクが届くと拘り抜いた食材を使ったコース料理が次々と運ばれてくる。
蒼淳も味に満足したようで、パクパクと食べ進めていた。
「うむ、美味い」
「友人に紹介して貰った店なんだ」
「良き友だ。次から私も利用させて貰おう」
ディアゴもだが蒼淳も意外と量を食べる。追加注文のために店員を呼び出そうとしたが、蒼淳に止められた。
「一通り食べたのでな、先ずは話を聞こう。その為に私を呼び出したのであろう?」
流石は龍族一のシャーマン。ディアゴの目的を分かっているようだ。
「・・・父についてだが」
「うむ」
「・・・応援している、というのは嘘ではないか?」
「何故そう思う?」
「それだけの仕打ちをしているからな」
何を、とは言わなかったが蒼淳は知っているようだ。
「暴力沙汰については父上殿は許しておる。まぁ、話だけ聞いた私でもあれは仕方ないと思うぞ」
「・・・そうか」
「母上殿の言葉は響かなかったか?」
「・・・見栄を張る男についてか?」
「そうだ。私も多かれ少なかれ、男は見栄を張る生き物だと思っている。父上殿のやり方は確かに間違っていたが、家族への愛に嘘と見栄はなかった」
確かにそうだろう。見栄なんかなかったから、母に全てを丸投げして遊び回っていたのだから。
「甘えだ。その所為で母は過労死した」
「・・・母上殿は全て理解していた。彼女が優秀であればあるほど父上殿の劣等感は深まっていった。彼女を困らせる事でしか自分を保てないほどに」
「最低だな」
ディアゴは吐き捨てた。
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