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葵の章
葵の章②
しおりを挟む「う~~~ん。やっぱり、最後はこれね!」
葵の手にはトレーディングカードの束。
テーブルには専用のプレイマットが敷かれていた。このプレイマット、実は葵専用の特注品である。
「これで私の夫を決めるわ!『ワンダフルワールド』で相手の性格を見極めるの。黄玉はどう思う?」
「葵様のお心のままに」
「そうよね!ここでは私が絶対!ルールも好きに決めて良いの!」
っしゃあ!と葵は気合いを入れる。
葵は男だらけの男系家族に生まれた紅一点。故に極稀に、言葉遣いが乱暴になる瞬間があった。
「先ずは三人の様子を見るわ。空とミハエル、エドワードはどう出るのでしょうね?」
ふふ、と笑う葵はとても美しい。
葵を巡る恋の戦、開幕である。
「葵ちゃ~~ん!今日も可愛いね!」
笑顔のミハエルは豪華な花束に指輪、若い女性に人気の高級ブランドバックなど、大量のプレゼントを持参してやって来た。
「本当にそう思ってる?何か薄っぺらいのよね・・・」
「本気本気!葵ちゃんには何時だって真剣よ。今すぐ嫁に来て!」
「ふ~~~ん。そう言いながら国には控えが何人も居るんじゃないの?」
「大丈夫!割り切った関係だから!」
「自慢げに言うんじゃないわよ!」
夫婦漫才のようなやり取りを黄玉は微笑ましく見守っていた。
葵は一見すると気難しそうな上に扱い辛そうだが、あくまでそれは見た目だけだ。性格は表裏がなく、言葉も真っ直ぐで馬鹿正直に自分の思いを伝えてくる。
末っ子長女の特徴か、無自覚な愛され体質でもあった。
「信じられない!!愛人がいる男なんて絶対嫌よ!!」
「違う違う。女の子達はお金目当てだから!」
「うわ・・・・。最低・・・・」
「え!?俺??」
「どっちもよ!!」
ドン引きする葵はもう何処からツッコんで良いのか分からなかった。
葵の実家はかなりの資産家で、父もその気になればあと二人妻を迎えられた。
実際縁談もあったようだが、愛妻家の父は全て断ったそうだ。
一途で格好いい男。葵の理想だ。
ミハエルみたいなタイプは本来好みではないのだが、なにせ顔が良い。
軽い性格も好みではないが、何でも言う事を聞いてくれる所は好きだった。
「言っておくけど、私は遊びでも女が近づいてくるのは絶対嫌!全部切って!今すぐ!」
「もう切っているから大丈夫。葵ちゃんだけだよ」
柔らかく微笑まれるとイケメン度合いが増す。これはズルい。葵は扇で顔を隠した。
「何で隠すのさ。可愛い顔を見せてよ」
「嫌よ!ば~~かっ!!」
「馬鹿だから見たい!お願い!」
「絶対嫌よ!!」
その後も夫婦漫才のようなやり取りが続き、ミハエルは最後に手紙を置いて螺鈿の間を出た。
葵との会話は楽しい。
直球の感情をぶつけられると嬉しくなる。
ちょっと不器用な所はあるが、そこも可愛らしくて益々好きになる。
葵は正に理想の『我が儘なお嬢様』だ。何としても彼女と結婚したい。
ミハエルは次のプレゼントを考えながら、ご機嫌にホテルへ戻った。
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