Marriage Interview~異種お見合い婚~

土筆祐依

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浮舟の章

浮舟の章㉔

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「彼女達が住む地方はソロレート婚が盛んに行なわれてる場所でもありましたの。初期は娶る度に盛大な式を挙げていたそうなのですが、次第に面倒くさくなったのでしょう。ある年から姉妹がまとめて嫁ぐようになったのです」

 はぁ、と若紫はため息をついた。

「結婚式は女性にとっても夢ですのにね。と、いうわけでルーク殿。胡梅と冬梅をよろしくお願い致します」

 ニコリと笑う若紫にルークは慌てて反論した。

「ちょっと待って下さい!!彼女達を連れて帰ると言ったのはペットとしてであって、妻ではない!」

「そんな・・・酷い」

「私達を弄んだのですか・・・?」

「それは違う!!」

 ペットと聞いた胡梅と冬梅はとても傷付いた顔をしていて、ルークは即座に弁明した。

「知らなかったんだ。君達が黒狐族だったなんて」

「確かに犬と仰っていましたね」

「私をお膝に乗せてモフモフしていましたし」

「ぐっ・・・!」

 思い出すのはモフモフ達に癒やされた日々。
 撫でてこねくり回し、腹に顔を埋めたりした。

 黒狐族の女性と知っていたらもっと丁重に扱っていた。
 ルークは己の行動を深く反省していた。

「・・・ルーク様。私はあの日からルーク様をお慕いしておりました。お願いします。私達をルーク様の妻として迎えて下さい」

 胡梅は泣いて頭を下げた。

 ルークと出会ったあの日。
 胡梅は好奇心から余所見をしてしまい、皆とはぐれてしまった。

 神殿の中には女日照りで結婚できない六種族成人男子が大勢いる。
 正体が露見すればどんな目に遭うか分からない。
 
 胡梅は想像しただけで震えた。
 急いでキャットミントの花の中に隠れ、人気がなくなるまで身を潜めようとした。
 ジッとしているのに耐えられず、少しだけ動いたらルークが見つけてくれた。

 彼はとても優しい鹿で、胡梅を案内所まで連れて行ってくれた。

 その日から胡梅はずっとルークを見ていた。

 姉妹が一緒に嫁ぐ風習が色濃く残る地域出身なので、彼に嫁ぐなら妹も一緒だ。
 好きになった人を教えると、冬梅は胡梅のふりをしてルークに接近した。

 インテリ風イケメンが見せる甘い顔に冬梅もすっかり骨抜きにされてしまった。

 ルークが浮舟の最終候補者として選ばれたときは悲しかったが、敗れたのなら自分達にもチャンスがある。

 他でもない、ルークが一緒に来るかと言ったのだから。

 涙を流す胡梅を見るとルークは強い言葉で断れなくなった。

「・・・だが、鹿族は一夫多妻を認めていない」

「あら、そんな些細なことを貴方が気にしますか?」

 若紫は笑った。

「気骨のインテリさん。貴方の妻になりたいと胡梅が泣いてお願いをしているのです。断るのは無粋では?」

「・・・胡梅殿の気持ちは分かった。だが冬梅殿はどうなる?風習は尊重すべきだが、私は無理強いをしたくない」

「え?好きですよ。嫌じゃないです。是非お願いします」

 あっさり答えられてルークは天を仰いだ。

 彼女達は王女の侍女で、初顔合わせは王女の部屋。
 これはつまり、王女が仲介した見合いとなる。

 断るなど許されない。
 優雅な笑みを浮かべているが、ルークは若紫からずっと強い圧を感じていた。

 妻を二人も連れて帰れば批判は必須。総叩きに遭うのは目に見えている。

 ・・・それでも。

「「ルーク様・・・」」

 潤んだ瞳で見上げられると断れない。
 ルークは女性の涙に弱かった。
 
 それに他ならぬ自分が言ったのだ。一緒に帰るかと。

「任せなさい。権力圧力世論諸々と戦うのは慣れている。最早特技だ」

「「はい!!」」

 泣きながら抱きつく新妻達をルークは優しく抱きしめた。

 その後、ルークの結婚は国に大論争を呼び起こしたが彼は『風習』『伝統』という言葉を使って世論をねじ伏せた。


 胡梅と冬梅は正式にルークの妻となり、子供も産まれ幸せな家庭を築いたそうだ。

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