Marriage Interview~異種お見合い婚~

土筆祐依

文字の大きさ
3 / 201
始まりの章

始まりの始まり③

しおりを挟む
 
 教室に入ると、クラスメイトの話題はお見合いで持ちきりだった。八人の美姫、天界の文官すら勿体ないと言い切る美女に少年達の妄想は膨らむ一方だ。

「巨乳はいるかな?」

「俺は背の高いモデルみたいな女の子が良い」

「年上一択。お姉様に叱られたい」

「そこは癒やし系だろ!?」

「俺は年下かな~~」

 好みのタイプはそれぞれだ。友人は下校と同時に写真館へ向かうそうだ。

「空はどうするんだ?」

「しない」

「まあ、だよな・・・」

 我が道を行く空はお見合いに興味はない。

 空が応募しなくても、人族の有力者はこぞって参加するだろう。それにこれは人族に限った話ではない。六種族全てを対象としているのだから。当然だが龍・猫の王族は参加するだろうし、鳥、鹿、有鱗目族にも桁違いの金持ちは存在する。
 久是グループの跡取り息子とはいえ、学生の空の勝率は低いだろう。八人の美女に興味がないと言えば嘘になるが、勝率の少ない争いに自ら飛び込む自信も勇気もなかった。

 結婚に夢がない自分は参加する資格がない。きっと父のように相手を不幸にしてしまうだろうから。


「爺ちゃん、ただいま」

 あれから三月経った。

 クラスの話題はお見合いの二次審査で持ちきりだ。空もニュースで知ったのだが、招待状の送付が始まったらしい。
 
 ただ、空のクラスで招待された者は未だ0。友人はまだ諦めていないそうだ。だがニュースを見る限り、書類選考を通過した者は王族や金持ちが殆どだ。猫族なんかは八人中四人、つまり半分を娶る目標を立てて対策を練っているらしい。それに対抗しているのが少子化対策待ったなしの龍族だ。王を始めとした龍族自慢の美男子を揃えたとか。

 ・・・正直、人族と有鱗目族はこの辺り非常に不利だ。

 恐らく人族は黒狐族に最も嫌われ、有鱗目族は蛇・蜥蜴等の爬虫類。苦手な人は何があっても苦手だろう。

 まあ、自分には関係のない話だ。

 思考を切り替えた空は今日の晩ご飯は何かと考えた。出来れば魚が良い。煮魚だと更に嬉しい。

「空や、ちょっと良いか?」

 祖父が嬉しそうに手招きする。何か良いことがあったのだろうか?空が祖父の書斎に入ると、漆塗りのテーブルの上にA4サイズの茶封筒が置かれていた。

「?」

「空や、招待状が送られてきた。流石は儂の孫。空は儂と違っていけめんだからの」

「・・・ん??」

 祖父が何を言っているのか分からなかった。
 招待状とは、あの招待状なのだろうか・・・??

「爺ちゃん、俺、何も送っていないんだけど?」

「済まん・・・儂が代理で送った」


「はぁ!!??」
「済まん・・・空が結婚に興味が無いのは分かっておる。勝手だと分かっているがどうしても諦めきれなかった・・・」

 緊急特番の後、宵は代理での提出は可能か神殿に問い合わせた。「未婚なら可能」と回答を得た宵は直ぐに推薦状を書き、別紙で自慢の孫をこれでもかとアピールした。
 ただ、問題は写真だった。
 空を愛する宵は上半身だけの写真なら数多く持っている。だが全身となると一枚もない。新たに写真を撮りに行くとなれば空に代理提出がバレてしまう。どうする!?どうするか。

 ・・・悩み抜いた末、宵は高校入学記念で撮影した家族写真を提出した。
『今はここから更に十㎝伸びています!』『いけめんに磨きもかかっています!』『間違いなく首都一の美男子!』と付箋を貼りまくった結果、誰よりも必死さの伝わる推薦状と見合い写真が完成した。

 話を聞いた空は頭を抱えた。良くもまぁ、引かれなかったものだ。良いのか悪いのか分からないが、祖父の必死さが伝わり空は一次審査は通過となった。宵は茶封筒を手に取り、空に差し出した。

「空や、気が進まなくても二次審査に行ってくれないだろうか。どうか、この通りだ・・・」

 頭を下げる祖父を慌てて止める。そのまま封筒を受け取り、中身を確認する。中には二次審査に関わる注意事項が書かれた書類に、秘密保持の誓約書。会場となる神殿までの地図に、白い封筒に入った招待状が入っていた。

「空や、頼む。儂からの最後の願いだ・・・」

 ここで断れば、祖父は完全に諦めてくれるだろう。

 だがそれは祖父の気持ちを踏みにじってしまうようで、空は「行かない」とはどうしても言えなかった。ここまで育ててくれた恩義もある。ただ、これだけは伝えておかなければ。

「爺ちゃん、行くけど俺が選ばれる可能性は低いと思う。人族で、まだ学生だし」

「空や、儂は必ずお前を選んでくれる女性がいると思って応募したんだ。儂の勘は鈍っておらんぞ。こう、ビビッと来たんだ」

「何だよ、それ」

 空は思わず笑った。

 こうして空は招待状を手に、会場がある神殿都市へ向かったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

【完結】一番腹黒いのはだあれ?

やまぐちこはる
恋愛
■□■ 貧しいコイント子爵家のソンドールは、貴族学院には進学せず、騎士学校に通って若くして正騎士となった有望株である。 三歳でコイント家に養子に来たソンドールの生家はパートルム公爵家。 しかし、関わりを持たずに生きてきたため、自分が公爵家生まれだったことなどすっかり忘れていた。 ある日、実の父がソンドールに会いに来て、自分の出自を改めて知り、勝手なことを言う実父に憤りながらも、生家の騒動に巻き込まれていく。

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧井 汐桜香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

【完結】 メイドをお手つきにした夫に、「お前妻として、クビな」で実の子供と追い出され、婚約破棄です。

BBやっこ
恋愛
侯爵家で、当時の当主様から見出され婚約。結婚したメイヤー・クルール。子爵令嬢次女にしては、玉の輿だろう。まあ、肝心のお相手とは心が通ったことはなかったけど。 父親に決められた婚約者が気に入らない。その奔放な性格と評された男は、私と子供を追い出した! メイドに手を出す当主なんて、要らないですよ!

酒の席での戯言ですのよ。

ぽんぽこ狸
恋愛
 成人前の令嬢であるリディアは、婚約者であるオーウェンの部屋から聞こえてくる自分の悪口にただ耳を澄ませていた。  何度もやめてほしいと言っていて、両親にも訴えているのに彼らは総じて酒の席での戯言だから流せばいいと口にする。  そんな彼らに、リディアは成人を迎えた日の晩餐会で、仕返しをするのだった。

好きな人と結婚出来ない俺に、姉が言った

しがついつか
恋愛
グレイキャット伯爵家の嫡男ジョージには、平民の恋人がいた。 彼女を妻にしたいと訴えるも、身分の差を理由に両親から反対される。 両親は彼の婚約者を選定中であった。 伯爵家を継ぐのだ。 伴侶が貴族の作法を知らない者では話にならない。 平民は諦めろ。 貴族らしく政略結婚を受け入れろ。 好きな人と結ばれない現実に憤る彼に、姉は言った。 「――で、彼女と結婚するために貴方はこれから何をするつもりなの?」 待ってるだけでは何も手に入らないのだから。

【完結】お父様の再婚相手は美人様

すみ 小桜(sumitan)
恋愛
 シャルルの父親が子連れと再婚した!  二人は美人親子で、当主であるシャルルをあざ笑う。  でもこの国では、美人だけではどうにもなりませんよ。

処理中です...