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第1章 星降る夜に出会って
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リオが住む村は、世界の果てと呼ばれるほど辺境にあった。地図にも載らないその小さな集落は、深い森と険しい山々に囲まれ、外の世界とのつながりはほとんどなかった。
だが、リオはその静けさが好きだった。
朝は鶏の鳴き声で目を覚まし、昼は畑を手伝い、夜は焚き火のそばで星を眺める。そんな素朴な日々が、彼にとっての“世界”だった。
「リオ、また空を見てるの?」
幼なじみのミナが、畑から戻ってきたリオに声をかけた。
「うん。今日は星がよく見える気がして」
リオは空を見上げた。夕暮れの空が群青に染まり、やがて一番星が瞬き始める。
「星なんて、毎晩出てるじゃない」
「でも、同じ夜は二度とないよ」
ミナは呆れたように笑った。「詩人みたいなこと言って。ま、リオらしいけどね」
その夜、リオはひとりで村の外れにある丘に登った。そこは村で一番星がよく見える場所で、彼のお気に入りだった。
風が草を揺らし、虫の声が遠くで響く。
リオは寝転がり、満天の星を見上げた。
——そのときだった。
空の一角が、突然まばゆい光で裂けた。
「……流れ星?」
だが、それはあまりにも大きく、あまりにも速かった。まるで空そのものが燃え落ちてくるような、異様な光。
リオは思わず立ち上がった。
光は尾を引きながら、森の奥へと落ちていった。
「……あれは、何だ?」
胸が高鳴る。恐怖ではない。好奇心と、何かに呼ばれるような感覚。
リオは足を踏み出した。森の中へ、光の落ちた方角へと。
木々の間を縫うように進み、やがて開けた場所に出た。
そこに——彼女はいた。
倒れた木々の中心、地面に大きな焦げ跡が残るその場所に、ひとりの少女が横たわっていた。
銀色の髪が月光を反射し、白い衣が風に揺れている。年はリオと同じくらいだろうか。だが、その姿はどこか人間離れしていた。
「……大丈夫?」
リオが近づくと、少女はゆっくりと目を開けた。
その瞳は、夜空のように深く、星のように輝いていた。
「……ここは……?」
「ここは、エルナ村。君、空から……?」
少女はしばらく黙っていたが、やがて小さく頷いた。
「私は……セラ。星の巫女」
「星の……巫女?」
「この世界を救うために、星の国から来たの」
リオは言葉を失った。だが、彼女の瞳を見て、嘘ではないと直感した。
「お願い……力を貸して。星の封印を解かないと、この世界は……闇に飲まれる」
その声はかすれていたが、確かな意志が込められていた。
リオは迷った。だが、彼女の手が震えているのを見て、そっと手を差し伸べた。
「わかった。とりあえず、村に行こう。君を放っておけない」
セラは微笑んだ。
「ありがとう……リオ」
彼女が自分の名前を知っていることに、リオは驚いた。
だが、その理由を尋ねる前に、夜風がふたりの間を吹き抜けた。
星が、静かに瞬いていた。
—
だが、リオはその静けさが好きだった。
朝は鶏の鳴き声で目を覚まし、昼は畑を手伝い、夜は焚き火のそばで星を眺める。そんな素朴な日々が、彼にとっての“世界”だった。
「リオ、また空を見てるの?」
幼なじみのミナが、畑から戻ってきたリオに声をかけた。
「うん。今日は星がよく見える気がして」
リオは空を見上げた。夕暮れの空が群青に染まり、やがて一番星が瞬き始める。
「星なんて、毎晩出てるじゃない」
「でも、同じ夜は二度とないよ」
ミナは呆れたように笑った。「詩人みたいなこと言って。ま、リオらしいけどね」
その夜、リオはひとりで村の外れにある丘に登った。そこは村で一番星がよく見える場所で、彼のお気に入りだった。
風が草を揺らし、虫の声が遠くで響く。
リオは寝転がり、満天の星を見上げた。
——そのときだった。
空の一角が、突然まばゆい光で裂けた。
「……流れ星?」
だが、それはあまりにも大きく、あまりにも速かった。まるで空そのものが燃え落ちてくるような、異様な光。
リオは思わず立ち上がった。
光は尾を引きながら、森の奥へと落ちていった。
「……あれは、何だ?」
胸が高鳴る。恐怖ではない。好奇心と、何かに呼ばれるような感覚。
リオは足を踏み出した。森の中へ、光の落ちた方角へと。
木々の間を縫うように進み、やがて開けた場所に出た。
そこに——彼女はいた。
倒れた木々の中心、地面に大きな焦げ跡が残るその場所に、ひとりの少女が横たわっていた。
銀色の髪が月光を反射し、白い衣が風に揺れている。年はリオと同じくらいだろうか。だが、その姿はどこか人間離れしていた。
「……大丈夫?」
リオが近づくと、少女はゆっくりと目を開けた。
その瞳は、夜空のように深く、星のように輝いていた。
「……ここは……?」
「ここは、エルナ村。君、空から……?」
少女はしばらく黙っていたが、やがて小さく頷いた。
「私は……セラ。星の巫女」
「星の……巫女?」
「この世界を救うために、星の国から来たの」
リオは言葉を失った。だが、彼女の瞳を見て、嘘ではないと直感した。
「お願い……力を貸して。星の封印を解かないと、この世界は……闇に飲まれる」
その声はかすれていたが、確かな意志が込められていた。
リオは迷った。だが、彼女の手が震えているのを見て、そっと手を差し伸べた。
「わかった。とりあえず、村に行こう。君を放っておけない」
セラは微笑んだ。
「ありがとう……リオ」
彼女が自分の名前を知っていることに、リオは驚いた。
だが、その理由を尋ねる前に、夜風がふたりの間を吹き抜けた。
星が、静かに瞬いていた。
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