風味の記憶

ユウ6109

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第5話 オムライスの告白

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🍳 第5話「オムライスの告白」
「先生、オムライスって…告白に向いてますか?」
料理教室「風味の記憶」に現れたのは、大学2年生の青年・佐野悠真(さの ゆうま)だった。黒髪を無造作に束ねた彼は、どこか落ち着かない様子でエプロンを握りしめていた。
佐伯遥は笑みを浮かべた。
「告白に向いてるかどうかは、気持ち次第じゃないですか?」
「いや、でも…彼女、オムライスが好きなんです。高校の頃、学食でいつも食べてて。だから、手作りしたら…ちょっとは伝わるかなって」
悠真は、大学のサークルで一緒になった先輩・美咲への想いを胸に秘めていた。彼女は料理が得意で、いつも手作りのお弁当を持参していた。そんな彼女に、自分の手で作った料理を届けたい——それが、悠真の告白の形だった。
「じゃあ、今日はとろとろ卵のオムライスを作りましょう。ケチャップライスにふわふわの卵を乗せて、デミグラスソースをかけるタイプです」
「…それ、めっちゃ本格的ですね」
「本気の告白には、本気のオムライスです」
遥の言葉に、悠真は深くうなずいた。
まずはケチャップライス。玉ねぎ、鶏肉、ピーマンを細かく刻み、バターで炒める。悠真は包丁を握る手がぎこちなく、何度も遥に確認しながら進めた。
「料理って、こんなに集中するんですね。なんか…彼女のことばっか考えてたけど、今は目の前の玉ねぎしか見えない」
「それが料理のいいところです。気持ちを形にするには、まず手を動かすこと」
ライスが完成すると、次は卵。遥は卵3個をボウルに割り入れ、牛乳と塩を加えて混ぜる。
「火加減が命です。強火で一気に、でも焦がさないように」
悠真は緊張しながらフライパンに卵液を流し入れ、菜箸で素早くかき混ぜる。表面が半熟になったところで、ケチャップライスの上に滑らせるように乗せた。
「…できた」
ふわふわの卵がライスを包み、艶やかなデミグラスソースがその上にかかった。悠真はしばらく見つめていたが、やがて小さく笑った。
「これ、渡したら…なんて言えばいいんだろ」
遥は静かに言った。
「言葉は、料理のあとでいいんです。まずは、味で伝えてみてください」
翌日、悠真は美咲を呼び出し、手作りのオムライスを渡した。彼女は驚きながらも、笑顔で受け取ったという。
「これ、悠真くんが作ったの? すごい…お店みたい」
「うん。昨日、料理教室で習って。美咲先輩が好きだって言ってたから…」
「…ありがとう。すごく嬉しい」
その後、ふたりはゆっくりと距離を縮めていった。告白は、言葉よりも先に、オムライスの温もりが伝えてくれた。
数日後、悠真は再び教室を訪れた。
「先生、彼女…喜んでくれました。まだ付き合ってはないけど、今度は一緒に料理したいって」
遥は微笑んだ。
「それは、素敵なスタートですね。次は、ふたりでオムライスを作りましょう」
悠真は頷いた。
「その時は、もっと上手に作れるようにしておきます」

📝 レシピ:とろとろ卵のオムライス(デミグラスソース添え)
材料(2人分)
ケチャップライス
•  ご飯:400g(温かいもの)
•  鶏もも肉:100g(小さめに切る)
•  玉ねぎ:1/2個(みじん切り)
•  ピーマン:1個(みじん切り)
•  バター:10g
•  ケチャップ:大さじ3
•  塩・こしょう:少々

•  卵:6個(1人分3個)
•  牛乳:大さじ2
•  塩:少々
•  バター:10g(焼き用)
デミグラスソース(簡易版)
•  市販のデミグラスソース:100ml
•  赤ワイン:大さじ1
•  ケチャップ:小さじ1
•  ウスターソース:小さじ1
•  バター:5g
作り方
ケチャップライス
1.  フライパンにバターを熱し、玉ねぎ・鶏肉・ピーマンを炒める。
2.  火が通ったらご飯を加え、ケチャップ・塩・こしょうで味を調える。
3.  皿に丸く盛りつけておく。

1.  ボウルに卵・牛乳・塩を入れてよく混ぜる。
2.  フライパンにバターを熱し、卵液を流し入れて強火で手早くかき混ぜる。
3.  半熟状態で火を止め、ケチャップライスの上に滑らせるように乗せる。
デミグラスソース
1.  小鍋に材料をすべて入れて弱火で加熱し、よく混ぜる。
2.  とろみが出たら火を止め、オムライスの上にかける。
ポイント
•  卵は強火で一気に加熱し、半熟で止めるとふわとろに。
•  ケチャップライスは具材を細かく刻むと食感がなじむ。
•  デミグラスソースは市販品をベースにアレンジすると簡単
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