庭師と不思議な植物

ユウ6109

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庭師と不思議な植物

庭師のヘンリーは庭を愛していた。太陽の光が降り注ぐ中、土の匂いを嗅ぎ、手を動かすこと。それがヘンリーの人生だった。もう七十歳を過ぎたが、毎朝庭に出るのが日課であり、喜びだった。トマト、キュウリ、レタス。ありふれた野菜たちだが、ヘンリーにとっては愛しい家族も同然だった。
ある夏の日、ヘンリーはいつものように野菜畑の世話をしていた。キュウリの蔓が伸びすぎないように支柱を直し、レタスに水をやる。その時、ヘンリーは不意に足を止めた。トマトの木の根元に、見慣れない植物が生えていたのだ。それは、まるで星屑をまぶしたかのように、葉がキラキラと銀色に輝いていた。花びらは虹色に光り、ヘンリーが知るどんな植物とも違っていた。
「ほう…」
ヘンリーは思わず感嘆の声を漏らした。好奇心に駆られて、そっと触れてみる。すると、光の粒がヘンリーの指先にまとわりつき、暖かな光を放った。驚きながらも、ヘンリーはそれを引き抜くことはせず、静かに見守ることにした。
それから毎日、ヘンリーは不思議な植物を観察した。水を与えると、銀色の葉はより一層きらめきを増し、花びらの色も鮮やかになった。そして、ある朝、驚くべきことが起きた。ヘンリーが腰痛に悩まされながら植物のそばに座り込んだとき、風が花びらを一枚、ヘンリーの手に運んできたのだ。
その花びらを触った途端、ヘンリーの体中に暖かな熱が広がり、長年ヘンリーを苦しめていた腰の痛みがすっと消えた。ヘンリーは呆然とし、そして歓喜した。この植物は、ただ美しいだけではない。魔法のような力を持っているのだ。
ヘンリーの心は揺れ動いた。この植物の力を独り占めしようか。それとも、この力を人々のために使うべきか。欲望と善意が、ヘンリーの中でせめぎ合った。庭に魔法の植物があることは、ヘンリーだけの秘密だった。ヘンリーは誰にも話さず、植物のそばで考え続けた。
数週間が過ぎ、不思議な植物はさらに大きく育った。ヘンリーは、花びらを一枚摘んで、近所の足の悪い友人に差し出した。友人が花びらを手に取ると、一瞬にして痛みが和らいだという。友人はヘンリーに感謝し、その不思議な力に驚嘆した。
その夜、ヘンリーは決心した。この植物は、ヘンリーだけの喜びではない。この奇跡の庭を、みんなのために開こう。
翌朝、ヘンリーは庭の門を開け放った。近所の人々が次々と庭を訪れ、その植物の不思議な力に触れては、ヘンリーに感謝の言葉を述べた。ヘンリーは、不思議な植物がもたらす人々の笑顔を見て、何よりも満たされた気持ちになった。
庭は、以前にも増して賑やかになった。ヘンリーは、不思議な植物の世話をしながら、訪れる人々の笑顔を見守った。それは、ヘンリーが一人で土を耕していた時とは違う、新しい喜びだった。ヘンリーの庭は、いつしか「奇跡の庭」と呼ばれるようになり、ヘンリーの物語は、人々の間で静かに語り継がれていった。
(おわり)
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