あるクズ人間の奇譚

ひいらぎ

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中学1年生編(後編)

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 居残りは部活が終わる前に終わるようになっていて、居残りが終わった後に部活に参加できるようになっていた。しかし、僕は行けなかった。先生1人ならまだいい。だが、たくさんの先輩方や仲間のところへ居残りが終わったあとに行く勇気は無かった。

 居残り初日は正面玄関からこそこそと帰った。グラウンドからは丸見えの正面玄関だ。誰かに見つかったかもしれないという不安に押し潰されそうになった。

 サッカー部では朝にランニングをすることになっていた。それまで1日も休むことは無かったが、行けるわけが無かった。親のことは朝練休みだからとか言って騙していた。廊下で部活の仲間とすれ違う時は毎回死にそうなぐらい緊張した。

 2日目の居残りが終わった後は部活動が終わる時間まで待ち、他のみんなが帰ったところで僕は帰った。まだ親にはバレていなかった。

 そして居残り3日目。この日は少なからず、自分の人生を狂わせた日だろう。2日目同様、みんなの部活が終わるまで待とうと考えていた。そんな時にとある問題児が教室に入ってきた。問題児はみんなから嫌われているが、特定の人にはしつこくまとわりつくことで有名だった。僕はその特定の人だったらしい。しかし、僕はその時はまだ問題児をそこまで悪く思っておらず、少し話した。

 その後に問題児は、ちょっと鉛筆を貸してと言ってきた。よく分からなかったが貸すと、僕のノートの切れ端に嫌がらせの言葉を書いて、女子の机の中に入れたのだ。僕はあまり良くは思わなかったが、結局それを黙認した。明日に何が待ち受けているとも知らずに。

 翌日の朝に騒ぎになっていた。そして皆で犯人探しをしようということになり、教室の後ろにある学習旅行の紙新聞の字とその字を比べていった。そして間も無くその字と似ている字の人を見つけたと女子が騒ぎ始めた。それは出席番号でいうと2番。つまり僕だった。確かにあの場に僕はいた。だか間違いなく字を書いたのはあいつだった。しかし、女子達は僕の後の出席番号の人の字には目もくれず、僕を犯人だと言い放った。訳が分からなかった。僕があの場にいたのは紛れもない事実だが、なぜ他の人の字を見ずに僕だと断定するのか。僕が書いた訳ではないのに。

 僕はテストの点数を見せ合っていた2人に本当のことを打ち明け、2人には信じてもらえたが、他のクラスのみんなには何も言えなかった。その後は特に何もなかったからいいが、多くのクラスメイトに嫌われ、変な目で見られるようになった。当然のことだった。しかし、そんなのはどうでも良かった。それはとある出来事があったからだ。

 それは居残り3日目の日。問題児のあいつと別れた後に、僕は下駄箱から外履きを取り出して、学校の裏口から逃走した。見つかったら大問題になっていただろう。しかし、誰かに見つかったらどうしようという不安から一番安心できる裏口を選んだのだ。

 脱出は成功した。帰り道で脱出成功!なんてはしゃいでいたことも今思えば謎の行動の一つだろう。

 そして家に帰り、夕飯を食べ終わった後に危惧していたことが起きてしまった。母に他のサッカー仲間のママ友からメールが来たのだ。「最近部活休んでる見たいだけど大丈夫?」と。僕は母に問い詰められ、完全に凍りついた。弁明のしようがなかった。その後、1時間は怒られただろうか。だが、怒られている間も頭の中にあったのは部活のことだった。「どうしよう、どうしよう」ただただその言葉がぐるぐる回っていた。

 この時、母も言っていたがこれで良かったのかもしれない。バレていなかったら、僕はどうなっていただろうか。このまま毎日毎日部活から逃げる日々を続けていただろうか。挙げ句の果てに退部にでもなっていただろうか。
 
 そしてやっと夏休みの宿題を終わらせ、久々に部活動に参加できる日が来た。怒られるんじゃないかと緊張しながら部室に着いた時、あることに気づいた。僕はサッカーをするのに必要なレガースを久々の部活ということもあり、忘れてしまっていた。先輩や同級生からは完全に呆れられた。

 結局、その日はピッチの外でただただボール拾いで立っていることしか出来なかった。悔しさは無かった。ただ本当に情けない気持ちでいっぱいだった。この時の影響もあったのかもしれない。苦しみを味わうことになったのは。      

 夏が終わり3年生の先輩が引退したと共に、新人戦が始まった。ベンチに入れるメンバーは18人。2年生の先輩が8人、1年生が10人だったのでちょうど18人だった。僕の中学校は、サッカーでは名前も知られていない中学校だった。しかし、3年生の先輩が2人しかいなかったため、2年生の先輩は3年生の試合にも出ていたので2年生の先輩はかなり強かった。そして、新人戦で地区初の県大会優勝を果たした。僕は一切試合に出ていなかったが、県大会優勝チームの一員であることに、とても感動し誇りを持っていた。

 そして冬休みに入る頃、僕の運命を狂わす出来事が起きた。元々はサッカークラブに所属していたために、パソコン部に所属していたやつがクラブを辞めてサッカー部に入部したのだ。つまりは1、2年生合わせて19人。来年度の中体連は誰か1人だけがメンバーを外れることになるということだった。

 そんな不安もあったが、気づいたら1年生の課程が終了していた。そして卒業式の日にいつもよく遊んでいたあいつは転校した。見送った時はそこまで悲しさはなかった。

 それよりも離任式の前だっただろうか。教室でたまたまさくらちゃんと二人きりになる時間があった。本当にたまたまだった。入学してから全くと言っていいほど話をしていなかったが、その日久々に彼女と会話した。あの時はとても幸せだったに違いない。そのことを鮮明に覚えている時点で幸せだったのだろう。 
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