あるクズ人間の奇譚

ひいらぎ

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高校生編(通信制高校編その三)

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 スクーリングの時期が迫るなか、新井の友達が転校生として入ってきた。そいつのあだ名は、もりきょう。もりきょうは僕よりも頭のいい進学校に通っていたのだが、やめて入ってきたらしい。そもそも、3年生の秋という謎のタイミングで入ってくるのが不思議でならなかったが、同じゲームをやっていたこともあって、すぐにとても仲良くなった。そしていつものグループに入った。

 スクーリングの日がやってきた。今年は10月末に2泊3日で行われた。1年生のときは苦痛に感じていたスクーリングが、2年生から楽しみに変わっていた。ほぼ勉強しかしていないものの、その学校にとって唯一の旅行のようなものだったし、友達も多くいたので不安はなかった。

 スクーリングではいつものグループで、悪ふざけをしたり馬鹿な話をしたり夜の時間にはワード人狼をしたりと、ものすごく楽しかったのを覚えている。

 そして2日目の話だった。受験仲間として、当時最も一緒にいた悟が同じ高校の一つ年下の子と連絡先を交換するということになった。ことの経緯を説明すると、その子は受験部の授業でよくいっしょになっていた萌だった。萌が密かに悟に気があるらしく、淳の彼女である佳奈に繋いでもらって連絡先を交換したということだ。

 それをグループで囃し立て、あだ名をつけたり悪口を言ったりしていた。いつものことだ。そんな、悪意のない冗談のような悪口や辛辣な話がとても楽しかった。夜には早速電話することになってそれを盗み聞いてはみんなで馬鹿にしていた。悟もまんざらでもないような感じだった。

 そしてここでとある連絡が入った。

「先輩、一つ質問があるんですけど、スクーリングの前と後で聞くのどっちがいいですか?」

 珍しくいい予感しかしない。

うわつく気持ちを抑えながら、友達とのバカ騒ぎを続ける。バカ騒ぎを続けながら冷静に対応をしていく。

 当然ながら後に引き伸ばすわけにもいかない。次の日のテストに影響がでることを心配したのだろうが、それではかえって悪影響だ。

「前に告白のことは忘れてくださいって言ったじゃないですか。それは好きではなくなったってことですか?」

 もうこの後する会話の内容が理解できる気がした。

「自信がなくて、嫌われたり迷惑をかけてしまうことがこわくて。でも、好きなのは今も変わらないです」

「この質問をしたのは、私も先輩のことが好きだからです!」

 時間は2時をまわっていた。

 僕はさすがにバカ騒ぎしている空間から逃れ、廊下で座って落ち着くことにした。

  その間に友達が通ったが、家庭の事情がなどと言って誤魔化した。いつものグループの人はみんな、根は驚くほどに優しい。それを聞いた彼らは、何も言わずに部屋に戻った。

 信じられないほどに高鳴る気持ちを抑えながら、抑えようとしながら、冗談ぽくかつ最悪のケースをカバーするために僕はこう返した。

「それは友達として、ですか?」

 ただ返ってくるありきたりな台詞をどうしても聞きたかっただけかもしれない。

「いいえ、男性としてです」

 そこから彼女からもう一度連絡が来るまで、3分ほど思考が止まっていた。

「大丈夫ですか?」

それからお互いの気持ちをありったけ話した。緊張していること、眠れないこと、これからのこと。

 そして彼女が、自分のせいで眠れなくなるのは嫌だからと、寝てほしそうにしていた。やはり明日のテストに影響を与えたくないようだ。いまさらだが。

 僕は彼女の気持ちを汲み取り、寝たことにした。寝たように装ったということだ。寝れるわけがないだろう。また明日と送ったあとしばらくは頭が回らなかった。

 部屋に戻って少ししたが、珍しくグループの友達はそれほど騒いでいなかった。みんな疲れたのだろう。

 静寂がなんとなく嫌で、音楽を聴きながら横になっていると知らぬ間に眠っていた。

 スクーリングが終わった帰りのバスの中でも、これからの話など恋人としての会話に花を咲かせた。

 あいにくそのあとは3日間学校が休みだった。電話することを提案し、30分ほど話した。付き合いたてという感じで全く話が進まなかったが。

 そこからは、駅まで15分足らずの道をいっしょに登下校するようになり、そのせいで友達にはバレてしまい、悟にはスクーリングのとき人のことを盾にしやがってと散々言われた。下校のときには初めて手を繋いだりした。彼女からしたいと言わせてしまったのが、初めてできた彼女だということを物語っている。

 文化祭の日が来た。文化祭と言ってもそこまで大きいものではないが、受験を忘れて一日楽しんだ。彼女は体調を崩してしまい来れなかったので、とても心配だった。

 その日の夜に、淳と悟と新井と忌み嫌っていたお好み焼きを食べに行った。色々な具材を小麦粉で固めて焼いて、何が美味しいのかと思っていた。何を食べているかよく分からないのが好きではなかった。

 僕は天邪鬼だ。というかだんだんと天邪鬼になっていた。それは、自分に個性や誇れることが何もなかったからかもしれない。だからこそ、天邪鬼になって個性を出したかったのかもしれない。

 そんなメンバーでお好み焼きを食べに行ったとき、実はもう1人いっしょに食べに行った人がいた。それが萌だった。側から見れば、悟と萌は付き合っているようにしか見えなかったが、はっきりとは伝えてはいないことを悟から聞いていた。

 食後にみんなで話していたときだった。僕には受験期になっても唯一続けていたゲームがあった。そのゲームは他のみんなもやっていたものだった。そんなゲームのとあるランキングで僕は上位に入った。周りのみんなは大盛り上がりしていたが、僕はその数日後そのデータを消した。受験勉強に打ち込めなくなるからだ。

 これでも僕は成長していた。ほんの少しだけだとしても、他の人から見たら大したことはないとしても、成長していたのだ。きっと。

 そのあとにはスポーツ大会があった。ここで僕は少し辛い思いをすることとなった。自業自得ではあるが。

 僕には自分をよく見せようとする癖があった。原因は自信がないからだ。自信がないから、自分の弱いところを見せるのにとても抵抗を感じていて、嫌われたりつまらない人間だと思われたくなかったのだ。そのため、できるだけ見栄を張って強いように見せていたのだ。ほんとうは誰よりももろく弱かった。そうしてできる人を演じていると、当然そのせいで大きな沼にはまることになる。

 スポーツ大会のとき、僕は勝手にスポーツ万能だと思われていた。悟や萌が囃し立てていて、彼らにとっては僕がいくら否定しても謙遜にしか聞こえなかったのだろう。そこで僕は醜態を晒すことになった。

 実際の僕は不器用で体も驚くほど硬く、運動音痴と言っても言い返す言葉が見つからないほどだった。そのため、サッカーをしていたときは、視野を広くしたりスタミナをつけて誰よりも走るようにしていたのだ。足元が下手でも、ボールを追いかけて相手にプレッシャーを与えることはできるし、視野を広げてパスコースを確保したりすることもできる。

 しかし、バスケやバレーやバドミントンではそうは行かなかった。ずっとやり続けているサッカーが下手なのに、他のスポーツが上手いわけがない。

 僕はそこで、ことごとく心を折られた。香織さんはバドミントンがものすごく上手で、それを見てなおさらやるせない気持ちになった。その夜に彼女が優しく励ましてくれたことを僕は覚えている。

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