あるクズ人間の奇譚

ひいらぎ

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高校生編(通信制高校編そのニ)

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 そして僕の今後を大きく変えることになるできごとは始まった。

 それはお盆休み前日のこと。ゲームでさえだんだんやらなくなってきて暇を持て余し、なおかつ努力の理由を無意味に探していた時期だった。そう努力の理由だ。努力の理由さえあれば…とそう考えていた時期でもあった。

 いつも通り学習室で勉強していると、教室の隅で勉強していた女の子が気になった。気になって勉強が手につかなくなってしまった。何を血迷ったのか、一目惚れ?なのか。

 そしてその気持ちを伝えようと思うに至るまでは長くはなかった。気になったその日に伝えようとしたのだ。あまりにはやすぎる。

 自分の口から直接言うなんて到底無理だった。僕はとりあえずノートをとり出してその真ん中のページを1枚ちぎると、それにありったけの想いを書き殴った。そしてそれをその子がいないうちに机に置くと、逃げるように本を買いに本屋に逃げた。お昼ごろだった。

 恋愛をしたいというのと努力の理由が欲しいというので手紙を渡したため、かわいいとは思っていたが好きという感情ではなかったことは認めたい。そしてそれに対して僕は謝らなければならない。ごめんなさい。

 本屋に逃げこんだ僕はそれから1時間ぐらい時間を潰した。そして学校に戻り学習室の扉を開けるとき、僕の緊張は最高潮に達していた。僕には予想したことは当たらないというジンクスがある。いろいろ最悪な状況を想定していた。

 1時間ほど扉の前でうろうろしていただろうか。意を決して扉を開けたがそこには彼女の姿はなかった。代わりに僕の机の上には「山口 香織」と書かれたメモが置いてあった。悪い想像しかできなかった。

 とりあえず後でゆっくり読もうと思ったのはいいものの、集中できずすぐに読むことにした。内容はおおまかに言うとこんな感じだった。「あなたのことをよく知らないので友達からでもいいですか?考えてみてください。」

 やはり僕のジンクスは本物だ。予想とは全く違ったメモの内容に処理が追いつかなかった。
 
 そしてお盆休みに入った。なぜお盆休みに入る前日に告白してしまったんだろうと思ったが、1週間ほどのその期間が僕に考える時間をくれた。友達からでも十分すぎるほど僕にとっては嬉しかったので、当然だがOKする気でいた。しかし色々考えたうえで、やっぱりいいやと諦めたりもしたのだ。でも、自分のしたことは自分で責任を負うべきとの考えのもと、僕は彼女と友達になることを決断した。

 お盆明けの日に僕は彼女に直接答えを言うことにした。と簡単に言っているが当時の僕にとってはハードルが高すぎた。ちょっと前に友達に「最近しゃべった女子は?」と聞かれて、「女の先生とお母さんかなぁ」と冗談ぽく、がしかし事実である回答をしたほどだ。

 でも背に腹は変えられない。僕は意を決して直接話しかけた。ここ最近で一番緊張していた。伝えたのはおそらく、友達からでもお願いしますということと、あまり干渉しないということだ。おそらくとつけたのはここら辺の記憶が曖昧過ぎるからだ。一緒にお昼ご飯をたべたいとも言った気がするが本当によく覚えていない。それだけ緊張していたのだろう。彼女は終始「大丈夫ですよ」と優しく声をかけ続けてくれた。

 しかし、そのあと数日は学校で会っても一言も話さなかった。お返事のメモに書かれていたように彼女は人見知りで、なおかつ僕も奥手だったからだろう。それに耐えきれなくなった僕は彼女にまた手紙を送ることにした。主に声をかけられなかったことに対する謝罪とLINE交換をしたいというお願いだった。そのメモを置いた日のうちにLINE交換することに成功し、そこからお互いを探り合うようなLINEでの会話が続いた。

 とにかくできるだけ話を相手に合わせたり、知らないことばかりだったため知りたいことを捻り出しては質問したりしていた。話題を出すことにどれだけ苦労したことか。今考えると馬鹿らしい。このときの僕は驚くほど童貞すぎるのだ。しかし程なくして、少しずつ打ち解けていくようになった。

 香織さんは同い年だが学年は一つ下だった。受験勉強をしすぎた反動で体調を崩して学校を留年してしまい、通信制高校に入ってきたらしかった。まだ2年生なのにも関わらず、受験勉強ばかりしていて、それはまさに受験ノイローゼだった。

 看護師になりたいという強い強い志があって、国境なき医師団に憧れていた。僕とは正反対で夢をひたすらに追いかけている人だった。

 しかし、そんな彼女のことを僕はどんどん好きになっていた。守りたい、助けたいと思っていた。彼女のほうもどんどんスタンプを使うようになったり、絵文字を使うようになったりしてだいぶ気を許してくれていた。

 しかし、打ち解けていくうちに、僕はふと気づいてしまったのだ。おそらくこの恋が発展することはないと。根拠があるわけではない。ただ自信がないだけだったのかもしれない。その当時の叫びを僕はこう記していた。

 "間違いじゃなかった。僕が好きなのは君だった。君は僕より全然強かった。強がりの僕の弱さに気づいて助けてくれた。真剣に話を聞いてくれたし、こんな僕に対してもたくさんの優しい言葉をくれた。君を救いたいと本気で思っていたのに、気づけば自分が救われていた。可愛らしくて努力家で真面目で誠実な君は、まさに天使のような存在だった。 それなのに君は身体が弱くて、色々な壁を乗り越えて来たのだろう。そんな君に負担をかけたくないし、こんな僕では君を救えるとは到底思えない。だから僕はこの恋を捨てる。でも別れを告げるわけにはいかないから、残りの半年は僕の偽善を貫き通す。僕は前ほど君に干渉することはない。僕の夢は君に少しでも楽しい時間を過ごしてもらうことと、少しでも君の心に寄り添うことだ。それさえできれば僕はもう何もいらない。君みたいな素敵な人に出会えて僕は嬉しかった。そして君みたいになれるように僕も頑張ります。だからどうか僕に優しくしないでください。"

これがその原文そのままだ。

そう。もう僕は諦めていたのだ。自分が彼女の足を引っ張っているとしか思えなかった。それだけ彼女はすごかった。自分とは正反対の努力の塊のような人だった。でも自分から始めたことだからと、とりあえずはそのままでいることにしたのだった。
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