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大学生編 Part.3
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以上が、彼の残した言葉だ。
主観的かつ自己中心的な文章から、衝撃が大きかったことが推測できる。ただ現実から目を背けたい。その一心だったに違いない。彼が受けたダメージがどんなものか、あらかた想像がつかないわけでもない。
そのうえで僕は彼に言いたいのだ。お前は達観しているつもりでも、何一つ見えていない、井の中の蛙同然の存在なのだと。自分の過ちを視界の外に追いやって、自分の良い行いのみにスポットライトを当てるなど、ご都合主義にもほどがあると。彼女が悩んだ計り知れない時間を知ろうともせず、表面的な事実だけで被害者ヅラをするなと。
この偽善者に、そう現実を突きつけてやりたかった。
香織さんは、受験に時間を取られているうちに僕への気持ちが薄れてしまったからだと言った。僕自身も紆余曲折で情緒が不安定な受験期を過ごしてきたから分かる。
僕にとっては理由が必要だった。それが僕にとっては恋愛だと思っていた。だからこそ受験という大波の中で、恋愛という助け舟に乗ったのだ。結果的にそれが助け舟になったかどうかは分からない。だが、そうすることで受験を乗り越えられたことは間違いないのだ。
彼女にとっては理由は十分すぎたのだ。受験の疲れを恋愛で拭おうとしたにすぎないのだ。結果的に彼女にとって楽しい時間はあったと願いたい。しかしその反面、辛い時間も同じようにあっただろう。受験の疲れを恋愛で拭おうとしたはずが、受験の悩みを恋愛にまでも及ばせてしまった。
それだけではない。間違いなく恋愛の悩みも彼女の時間を奪った。受験に恋愛を介入させたことで、解決される悩みと、解決されない新たな悩みが生まれてしまっただろう。
そんななか、恋愛が自分のそばから少し難しい距離に離れてしまったのだ。そうなってしまったことで、彼女には恋愛を残しておく必要がなくなってしまったのだろう。
彼女が好きだったから彼女を擁護したいというわけではない。彼女にとって僕はただの邪魔でしかなくなったのだ。
それからの数日間は何も手につかなくなった。後々気づくことになるが、僕はかなり極度な恋愛体質なのである。
辛い気持ちを抱えきれないとき、すがれるのは梨子だけだった。梨子は優しく僕を慰めてくれた。
香織さんとは連絡を完全にとっていなかったわけではなく、普通に話していた。渡せなかった誕生日プレゼントを香織さんの家に送ることにした。しかし、それから一月も経たずに香織さんとの連絡は途絶えることとなる。
大学のオンライン授業はほぼ全てすっぽかしていた。別れた影響があったかは分からない。だが、オンライン授業という方法が僕に合っていないというのは間違いなかった。与えられた課題をただこなすだけ。やりがいを感じられなかった。
実家の田植えの手伝いをしているうちに気がつけば6月になっていた。
暇な時間を使って教習所に通うようになった。しかし、オンライン授業はまったくやっていなかったので、教習所に行くギリギリまで通話アプリで誰かと話すのが習慣になっていた。かなりの人数と通話したに違いない。
実家にいるということもあり、夜に話せる時間はほとんどなくなった。そのため、梨子と話す時間は以前より少し減ってしまった。しかし変わらず仲は良かった。
そこからはひたすらに当たり障りのない日々が過ぎた。オンライン授業をサボっていることを親にバレることもなく、これといって目立った出来事もなかった。
8月に入ってそれは変わった。
いつもの通話アプリでかなりの変態である琴美と知り合った。彼女とは二週間ほどで縁が切れてしまうのだが、その短い間で付き合うことにもなりたくさん電話もした。結局彼女からの連絡が途絶え、音信不通になってしまった。
琴美と出会った数日後に、僕は大きな転機を迎えることとなった。
それは木下美奈との出会いだった。彼女は出会いたての時は、レナという名前を使っていた。
レナは自殺願望を持っていたが、僕との電話によって救われたと言っていた。彼女のことを知るうちに、子供っぽくて危なっかしい彼女を僕はどんどん好きになっていった。彼女と知り合って数日後、本免の学科試験に合格し免許を取ることができたときは、自分のことのように喜んでくれた。
そんな彼女に本気になり夢中になるうちに、梨子の存在が僕の自由を奪っていた。一人暮らしに戻ると同時に梨子との連絡をやめた。今でもたまに梨子を思い出すと、なぜか寂しくなる。
美奈は僕の二つ上で大学に通っており、彼女の実家と僕の一人暮らしのアパートがかなり近いことを少し経って知った。そのときは二人でびっくりして喜んだ。不思議なほどに、全ての事象が彼女と僕を親密にさせた。どんどん繋がりが強くなっていった。
そしてついに彼女と付き合うことになった。一人暮らしに戻って少し経った頃だった。
それから彼女と会うのに時間はかからなかった。一人暮らしに戻ったことで電話の時間も増え、会うのにも障害はなかった。僕に会う前に実家に帰っていたのだが、親との仲がそこまで良くないらしく体調とも合わさってとても辛そうにしていたのを覚えている。
そしていよいよ初めて会う日。
前日までに汚い部屋の掃除を全力で済ませ最寄駅へと向かった。電話でいつも声を聞いているというのに、どうしてこうも緊張してしまうのだろうか。歩いて駅へ向かうまでに、緊張による汗と残暑による汗が額からあふれた。もう少し薄着で来るべきだっただろうかと後悔してももう遅い。早めに駅に着いた僕は、トイレによって前髪を整えた。そして、駅の改札前で彼女を待った。
間もなく彼女は到着した。写真で見ていた彼女とは少し違い多少ぽちゃっとしていた。ドキドキを隠しながら、手を繋いで彼女と家を目指した。アパートへの道中は会話が途絶えることはなかった。しかし繋いだ手からはやはり汗がにじみ出ていた。
途中でコンビニに寄ることになって、急いでトイレへ行った。持ってきたポケットのハンカチでいくら拭いても、汗は止まる気配がなかった。鏡で見てみると、背中の汗がシャツににじんでしまっていた。コンビニで買い物している人の目線と隣にいる彼女の目線を気にしながら、飲み物を買いアパートへ向かった。日差しの暑さを甘く見ていた。彼女に初めて会うというのにさすがにTシャツだけでは心許なかった。
アパートに着いて、少しだけエアコンの効いた部屋に入る。残暑の暑さから逃れられても、息が詰まるような怒涛の展開からはどうも逃れられない。
部屋に着いてから少しすると彼女は眠たそうにしていた。二人でベッドで向かい合って横になる。すると彼女は気持ちよさそうに眠ってしまった。
そこでやっとひと息つく。心を落ち着かせながら、その一方で呼吸一つに気を遣う。一仕事終えたようなそんな気分だった。
僕はやっぱり美奈のことが大好きらしい。彼女の寝顔を見ていてふと確信した。
正直言ってしまえば、出会った瞬間から少しの間は失敗したと思っていた。会ってみなければ分からない雰囲気とスケールに翻弄されていた。違和感を感じていた。これが普通なのだ。
しかし、自分でも驚くほど自分の飲み込みは早かった。彼女の容姿のすべてを受け入れ、好きになっていたのだ。いわゆる、好きになった人が好き理論である。雰囲気や容姿などに対して、出会った瞬間は違和感を感じるのだが、いっしょにいることによって彼女の特徴すべてが僕にとって愛おしくなってしまうのだ。厄介極まりない。
彼女と何日もいっしょに過ごすことによって、明らかに二人の中は深まっていた。
朝起きて、ご飯を食べて、買い物に行って、テレビを見て、風呂に入って、寝る。普段一人でしていることや、家族や友達と当たり前にしているようなことが、彼女といっしょにすることで信じられないほど幸せな時間に変わった。彼女といっしょにいれることの幸せを噛みしめた。もちろん、彼女としかできないこともたくさんした。僕の匂いのついたシャツを彼女が着たり、写真を撮ったり、デートをしたり。いつも当たり前にしていることも、彼女としかできない特別なことも、どちらも特別で楽しい時間だった。
彼女が来てから三日経って帰る日になった。
主観的かつ自己中心的な文章から、衝撃が大きかったことが推測できる。ただ現実から目を背けたい。その一心だったに違いない。彼が受けたダメージがどんなものか、あらかた想像がつかないわけでもない。
そのうえで僕は彼に言いたいのだ。お前は達観しているつもりでも、何一つ見えていない、井の中の蛙同然の存在なのだと。自分の過ちを視界の外に追いやって、自分の良い行いのみにスポットライトを当てるなど、ご都合主義にもほどがあると。彼女が悩んだ計り知れない時間を知ろうともせず、表面的な事実だけで被害者ヅラをするなと。
この偽善者に、そう現実を突きつけてやりたかった。
香織さんは、受験に時間を取られているうちに僕への気持ちが薄れてしまったからだと言った。僕自身も紆余曲折で情緒が不安定な受験期を過ごしてきたから分かる。
僕にとっては理由が必要だった。それが僕にとっては恋愛だと思っていた。だからこそ受験という大波の中で、恋愛という助け舟に乗ったのだ。結果的にそれが助け舟になったかどうかは分からない。だが、そうすることで受験を乗り越えられたことは間違いないのだ。
彼女にとっては理由は十分すぎたのだ。受験の疲れを恋愛で拭おうとしたにすぎないのだ。結果的に彼女にとって楽しい時間はあったと願いたい。しかしその反面、辛い時間も同じようにあっただろう。受験の疲れを恋愛で拭おうとしたはずが、受験の悩みを恋愛にまでも及ばせてしまった。
それだけではない。間違いなく恋愛の悩みも彼女の時間を奪った。受験に恋愛を介入させたことで、解決される悩みと、解決されない新たな悩みが生まれてしまっただろう。
そんななか、恋愛が自分のそばから少し難しい距離に離れてしまったのだ。そうなってしまったことで、彼女には恋愛を残しておく必要がなくなってしまったのだろう。
彼女が好きだったから彼女を擁護したいというわけではない。彼女にとって僕はただの邪魔でしかなくなったのだ。
それからの数日間は何も手につかなくなった。後々気づくことになるが、僕はかなり極度な恋愛体質なのである。
辛い気持ちを抱えきれないとき、すがれるのは梨子だけだった。梨子は優しく僕を慰めてくれた。
香織さんとは連絡を完全にとっていなかったわけではなく、普通に話していた。渡せなかった誕生日プレゼントを香織さんの家に送ることにした。しかし、それから一月も経たずに香織さんとの連絡は途絶えることとなる。
大学のオンライン授業はほぼ全てすっぽかしていた。別れた影響があったかは分からない。だが、オンライン授業という方法が僕に合っていないというのは間違いなかった。与えられた課題をただこなすだけ。やりがいを感じられなかった。
実家の田植えの手伝いをしているうちに気がつけば6月になっていた。
暇な時間を使って教習所に通うようになった。しかし、オンライン授業はまったくやっていなかったので、教習所に行くギリギリまで通話アプリで誰かと話すのが習慣になっていた。かなりの人数と通話したに違いない。
実家にいるということもあり、夜に話せる時間はほとんどなくなった。そのため、梨子と話す時間は以前より少し減ってしまった。しかし変わらず仲は良かった。
そこからはひたすらに当たり障りのない日々が過ぎた。オンライン授業をサボっていることを親にバレることもなく、これといって目立った出来事もなかった。
8月に入ってそれは変わった。
いつもの通話アプリでかなりの変態である琴美と知り合った。彼女とは二週間ほどで縁が切れてしまうのだが、その短い間で付き合うことにもなりたくさん電話もした。結局彼女からの連絡が途絶え、音信不通になってしまった。
琴美と出会った数日後に、僕は大きな転機を迎えることとなった。
それは木下美奈との出会いだった。彼女は出会いたての時は、レナという名前を使っていた。
レナは自殺願望を持っていたが、僕との電話によって救われたと言っていた。彼女のことを知るうちに、子供っぽくて危なっかしい彼女を僕はどんどん好きになっていった。彼女と知り合って数日後、本免の学科試験に合格し免許を取ることができたときは、自分のことのように喜んでくれた。
そんな彼女に本気になり夢中になるうちに、梨子の存在が僕の自由を奪っていた。一人暮らしに戻ると同時に梨子との連絡をやめた。今でもたまに梨子を思い出すと、なぜか寂しくなる。
美奈は僕の二つ上で大学に通っており、彼女の実家と僕の一人暮らしのアパートがかなり近いことを少し経って知った。そのときは二人でびっくりして喜んだ。不思議なほどに、全ての事象が彼女と僕を親密にさせた。どんどん繋がりが強くなっていった。
そしてついに彼女と付き合うことになった。一人暮らしに戻って少し経った頃だった。
それから彼女と会うのに時間はかからなかった。一人暮らしに戻ったことで電話の時間も増え、会うのにも障害はなかった。僕に会う前に実家に帰っていたのだが、親との仲がそこまで良くないらしく体調とも合わさってとても辛そうにしていたのを覚えている。
そしていよいよ初めて会う日。
前日までに汚い部屋の掃除を全力で済ませ最寄駅へと向かった。電話でいつも声を聞いているというのに、どうしてこうも緊張してしまうのだろうか。歩いて駅へ向かうまでに、緊張による汗と残暑による汗が額からあふれた。もう少し薄着で来るべきだっただろうかと後悔してももう遅い。早めに駅に着いた僕は、トイレによって前髪を整えた。そして、駅の改札前で彼女を待った。
間もなく彼女は到着した。写真で見ていた彼女とは少し違い多少ぽちゃっとしていた。ドキドキを隠しながら、手を繋いで彼女と家を目指した。アパートへの道中は会話が途絶えることはなかった。しかし繋いだ手からはやはり汗がにじみ出ていた。
途中でコンビニに寄ることになって、急いでトイレへ行った。持ってきたポケットのハンカチでいくら拭いても、汗は止まる気配がなかった。鏡で見てみると、背中の汗がシャツににじんでしまっていた。コンビニで買い物している人の目線と隣にいる彼女の目線を気にしながら、飲み物を買いアパートへ向かった。日差しの暑さを甘く見ていた。彼女に初めて会うというのにさすがにTシャツだけでは心許なかった。
アパートに着いて、少しだけエアコンの効いた部屋に入る。残暑の暑さから逃れられても、息が詰まるような怒涛の展開からはどうも逃れられない。
部屋に着いてから少しすると彼女は眠たそうにしていた。二人でベッドで向かい合って横になる。すると彼女は気持ちよさそうに眠ってしまった。
そこでやっとひと息つく。心を落ち着かせながら、その一方で呼吸一つに気を遣う。一仕事終えたようなそんな気分だった。
僕はやっぱり美奈のことが大好きらしい。彼女の寝顔を見ていてふと確信した。
正直言ってしまえば、出会った瞬間から少しの間は失敗したと思っていた。会ってみなければ分からない雰囲気とスケールに翻弄されていた。違和感を感じていた。これが普通なのだ。
しかし、自分でも驚くほど自分の飲み込みは早かった。彼女の容姿のすべてを受け入れ、好きになっていたのだ。いわゆる、好きになった人が好き理論である。雰囲気や容姿などに対して、出会った瞬間は違和感を感じるのだが、いっしょにいることによって彼女の特徴すべてが僕にとって愛おしくなってしまうのだ。厄介極まりない。
彼女と何日もいっしょに過ごすことによって、明らかに二人の中は深まっていた。
朝起きて、ご飯を食べて、買い物に行って、テレビを見て、風呂に入って、寝る。普段一人でしていることや、家族や友達と当たり前にしているようなことが、彼女といっしょにすることで信じられないほど幸せな時間に変わった。彼女といっしょにいれることの幸せを噛みしめた。もちろん、彼女としかできないこともたくさんした。僕の匂いのついたシャツを彼女が着たり、写真を撮ったり、デートをしたり。いつも当たり前にしていることも、彼女としかできない特別なことも、どちらも特別で楽しい時間だった。
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