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第1章『運命の出会い』

第7話 大綱《たいこう》

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「第2公園で、風船を離しちゃった子の、風船を取って上げたい……んですが……」

 参謀長が一礼いちれいし、他の参謀たちを見回す。

 参謀たちは姿すがたかたちや大きさが、てんでんばらばらで、各々おのおののサイズに合わせた椅子に腰掛けている。


「情報参謀」

 ……参謀長が指名すると、俺たちと同じくらいの背丈だが、明らかに異なる外見の、ひょろ長いやつ一礼いちれいし、台座ごと、正面に移動した。

 すると、壁の一部が左右に割れ、スクリーンらしき物が出現した。 そこには、泣いている子供と、飛んで行った風船が写っている。

「え~、今次こんじ作戦に関しまして~、検討致しました所ぉ~」 ……見た目通りのコミカルな声に、思わず笑いそうになったが、何とかこらえた。

「この浮揚性玩具はぁ~、第18族元素の中でもぉ~、最も軽い気体を充填し~」

 ……情報参謀の言葉を聴いていたら、大学時代の化学の授業を思い出し、条件反射で、ついウトウトしてしまった。


「総司令閣下」

「……」

「総・司・令・閣・下!」

 ……。 やべっ、寝ちゃってた。 ……総司令って…… あっ! 俺か!

「は、はいっ、何でしょ?」

今次こんじ作戦の大綱たいこうが定まりました。 作戦参謀より、説明致します。 ……作戦参謀!」

「はっ」 

 ……今度は、打って変わって、いかにも無骨ぶこつそうな、キズだらけの参謀が立ち上がり、俺に一礼してスクリーンに向かった。

先程さきほどの情報参謀の分析から、次に示す方法で、浮揚性玩具を占有者の手元に帰還させようかと思う」

 スクリーンに、模式図が表示された。

ず、狙撃により、当玩具にベントべんを打ち込み、浮揚性ガスを排出させて高度1150ひとひとごまるまで降下させ、弁を閉じる。 いで、送風機により、目標まで誘導し、占有者が玩具の持ち手を掌握しょうあくすると同時に、再び狙撃により、当玩具の給気口近傍きんぼうに超小型バラストタンクを打ち込む。 最終工程としてバラストタンクをブローし、浮力を与え、任務を終える。 ……このような作戦で、宜しいか?」

『宜しいか?』 と言われましても…… こちとら、風船を取って貰いたいだけ……なんですが……。
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