リーティアの領地経営

優義

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第3章 初めての冬越え

第28話 手紙

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 クロエとドーガを雇って1週間、領主としての仕事だけでなく商会長としての仕事もかなり忙しくなってしまった。報告だと領内だけでなく帝都にまで商品の発注が来ているらしい。売る商品、リバーシだけにするべきだった。

「何を仰いますか!リンスはこの時期で正解でしたよ!」

 ドーガがデカい声で話す。リンスの話を聞いたときの顔凄かったよな、コイツ。

「え、なん............あぁ、社交界か」

「さようでございます。商会長も仰っていたではないですか!日々の手入れが大切だと!」

 うん、まぁ。そうだね、そう言ったね。
この国の社交界シーズンは前世でいう6月から7月までにある。皇帝が招待状を送る建国パーティーから始まり各貴族達が行うパーティーやお茶会、はてには狩猟大会や魔術評論会なんてもんもある。

 幼少期の私?教会のお祈りぐらいだったよ、顔出すのは。出てくれと教会側から連絡が殺到して毎回無理矢理連れて行かれたなぁ。

ちなみに現在リンスはクロエだけじゃ製造を回せないので他の錬金術師を抱えている商会や錬金術師ギルドに下請けさせている。意外と食いつき良かったな..........レシピを安くすることが良かったのだろう。まぁ、1年ぐらいはレシピは割高だが安くなった時は平民用の大容量リンスとかも売るとするか。

 はぁ、でも書類が溜まりまくってキツい。結構部下に割り当ててる筈なのにキツい。手が痛い、代筆は手紙ぐらいしか許されてないから自分で書かなければいけない。

コンコンッ

「領主様、手紙を持って参りました」

 ジャックが執務室に入ってくる、そして持ち込まれたトレーには大量の手紙があった。え、何あの量。軽く見積もっても50以上はあるよね?

「中身を拝見した所、縁談のものが多いです」

 手紙を読んで見ると、縁談の話でかなり上目線からの結婚してやるという内容だった。
こちらは元とは辺境伯であり、どちらが失礼かは目に見えている。すぐに断りの返事を入れなければ。
それにこの手の連中の商品やら薬草やら領地、あとはAランク冒険者の血統が欲しいという下心が見え透いている。こちとらもうアラフォーぞ?

ハッキリ言って縁談する気は無い、まともな人なら歓迎だが少なくとも手紙を書いた人物にそのような人間は居ない。

「縁談の手紙は全部丁重に断りの返事を、下心が見える」 

「畏まりました。」

「ふむ、近頃は農民の男性でも良い口説き方をするのにかなり酷い言い文句ですなぁ」

 ドーガが手紙を読んで評価する、やっぱ断って正解だろうな。

「ドーガ殿もそう思われますか、やはり領主様のお相手は勇者ほどの人格者で無くては!」

 ドーガとジャック仲良いな。あといつ人が結婚願望持ってると言ったよ、あとなんだよ勇者って。
あー、でも引き継ぎは探さないとなぁ。面倒だなぁ、市長選とか導入出来ないかなぁ。

 ん?まだトレーに手紙が乗ってる?

「そのトレーに残っているのは?縁談以外の手紙?」

「それなら【失墜の騎士団】の皆様と____」

「皆からか!見せてくれ!!」

 ガタッと席を立つ、久しぶりのウキウキにジャックが微笑みながら手紙4通を渡す。1番上のはモーリスのか。

「リーティアへ
  久しぶりなんだな、リーティアの噂はボクまで届いているんだな。
今ボクは移動治療院として働いているんだな、かなり忙しいけど楽しく働いているんだな。

実は実家から連絡が届いてて王国が戦争の仕度をしているらしいんだな、リーティアの所は国境地帯じゃないけど気をつけるんだな。
             君の友人 モーリスより」

 移動治療院か、かなり過酷とは聞くが冒険者時代よりかはマシそうだ。そして慈悲深い彼らしいとも言える。
モーリスは【失墜の騎士団】ウチの、おふくろ的存在で裁縫、料理はお手の物だった。今の仕事先でもその手腕を振るっているだろう。
あと王国の動きの情報はかなり貴重だな、でもモーリス実家大丈夫なのだろうかこんな情報流して。もう帝都に引っ越して来いよ、それかウチへ。

 次はエルリックか。

「リーティアへ
  過酷すぎて書類仕事から逃げてないことを願ってるエルリック様だ。
こっちの教官仕事は楽じゃねぇよ、全員昔のこと聞き出そうとするんだ、しかも俺じゃ無くってお前やジャンヌのことを、呆れるよ。まぁこれでも楽しくやってるよ、大繁殖してた魔物も狩ったお陰でだいぶ大人しくなったようだしな。
そうそう、聞いたぞ。有名盗賊団しょっ引いたってな、ソイツらにはこっちも手を焼いてたらしいから助かったって兄貴からの伝言を載せておくぜ。

 P.S.
  お前に上から目線で縁談送ろうとしたヤツがいたからしめといたぞ、感謝しろ。

          イケてる騎士 エルリックより」

.............私に縁談を送ろうとしたヤツは平気なのだろうか、少なくとも暫くは病床生活だろうな。
エルリックはナンパに命を懸けるとよく言う軽そうな男ではあるが、実のところかなりの紳士であるし仲間思いだ。かなり怒ったのだろう。南無三。 

 さて、気を取り直して、次はジョフか。

「リーティアへ
 仕事を放りだしてないか心配になっているジョフだ。こっちは駆け出し生意気冒険者を叩きのめしながら働いている毎日だ。炭鉱だからか乱暴者も多くてクレームもかなりあって辟易している。
君の状況はギルドの上層部や噂で聞いた、かなり活躍しているようだな。元仲間として嬉しい。

 それと何故冒険者時代に複式簿記を作ってくれなかった?何故経理出来るくせに手伝わなかった?
会ったら覚悟しておけ
   
           お前の友人 ジョフより」

 .................絶対再会したら魔術とジョフお得意の槍の嵐だろうな。うわー.............会いたくねぇ.............。てか、パーティーの経理やるって言ったのお前じゃん!

 最後は.......ジャンヌか。

「リーティア
 そっちの仕事ぶりは聞いたわ、流石といった所ね。私は今、貴女の母校である学術院で働いているけど中々筋の良い子がいて楽しいわ。それに卒業生である貴女の話を聞きに来る生徒や教師が大勢居るわ、大人気ね。学術院の近くに寄ることがあったら来なさいね。

 P.S.
  何故リンスを冒険者時代に作らなかったの???会ったら覚悟しておいてね 
     
            貴女の仲間 ジャンヌより」 

 お 前 も か 。

だって材料手に入りずらかったし、風呂すら無かったじゃん!理不尽.....................。まぁ、会わなければ良いだけだし無視しよ~。

「まぁ、皆充実してて良かった。返事は速めに書いて送らないと..........」

「あのー、領主様、実はあと1つ手紙がございまして....」

「縁談でも無く仲間以外の?」

「はい、差出人は見れば分かりますので........」

 差し出された手紙には緑色のシーズニング。差出人の名前を見て変な冷や汗が出てきた。

「な、何で今になって..........」

「さぁ.........」

 慌てて手紙を読むととんでもない事が書かれていた。

「な、なんだってぇぇぇぇぇぇっ!!!!」
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