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しおりを挟むまあ田舎の良くある話、良くある光景だ。いや、全国的にそうなのかも知れんがおばちゃん達の元気さと来たらもう。
流石に眩しさは覚えんものの、あのバイタリティだけは純粋に羨ましい。生きる熱も意欲もついでに血圧・血糖値も低めなおっちゃん群には会話数分でもいっぱいいっぱい。せめてそこで枯渇しないだけの『元気の蓄え』が欲しいもんだわ。
軍手を嵌めようと視線を落とすと我ながら情けなくなるほど年を感じる手。専門に通っていた頃から自分の手がツルピカに綺麗になった事は無いけれど、それを差し引いたとしてもシワシワでゴツゴツで……
親父の手とそっくりだなと思う。
湊は……俺が死ぬ時も親父にしてやったように手を握って見送ってくれるんだろうか。
─────……っておい、何をアホな妄想しとる何を。
慎ましく細々と暮らし、誰にも迷惑を掛けず穏やかに死んでゆく。可もなく不可もなく、しょーもない人生だったとしても誰の記憶に残らなかったとしても全然オッケーさ。
ずっとそうやって生きて人生の折り返し地点(日本人男性平均寿命を元に算出)を無事迎えたとゆーのに……ここへ来てこんなザワザワする事態が起こるもんかね。
人肌とは残酷なもので。
温もりを合わせる前は一人なんて少しも怖くなかったのに、事後の今ではなんかもう色々と怖くなっている。
湊はいつまで俺の部屋に居てくれるのか
いつまで俺の作ったメシを食ってくれるのか
いつまで……俺の事を抱いてくれるのか
それはもう色々あり過ぎて怖過ぎる。
いや、一番怖いのはこんな事ばっかり考えてる俺自身だと言う現実、これに尽きますわ。
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