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しおりを挟む今日塗装の予定だった原付の仕上げは明日に回そう……なんか天気が悪くなって来たし。天気予報は……
テレビではちょうどお天気お兄さんの葉山くん(可愛くて好み)が解説中だ。今夜は雨だけど明日には持ち直すらしい。週末はまた冷えて乾燥に注意。忙しいな。
「ねえアラタ、ばーばはあんな事言ってるけど気にしないでね」
「別に気にしてない。ってゆーかあんまり聞いてない。スマン」
「相変わらず飄々としてんのねえ。そーゆーとこ最近益々保にいちゃんに似て来た気がする」
由美子ねえちゃんは店の奥の小さなキッチンを勝手知ったる様子で使い、いつもの濃いめの玄米茶を淹れてくれる。まりっぺはエコバッグから竹皮の舟に盛ったみたらし団子を取り出した。どっちも親父の好物だ。
「“ささき” のみたらし団子は小振りで美味い」
「アラタ、昔っからアンコ苦手だもんねー」
「白あんのいちご大福は食べれる」
「アレ季節限定だし人気あんのよ。さっき売り切れたわ」
「残念」
生まれ育った小さな町に愛着はそれなり。人付き合いもそれなり。
イレギュラーが起きればこうして心配してくれる人達も居る。独り身で不都合は何もない。ほぼ天涯孤独のゲイの中年だろうと、なんだかんだで生きて行ける。そう思える。
「ポツポツ来たね」
「一雨ごとにあったかくなるわねえ」
季節はどんどん進む。一雨ごとに暖かくなって春が来たら直ぐに四十路だ。
俺はこうして何の変哲もない日常の中で死ぬまで生きて行く。
そんな俺にとって湊は大事な思い出。
もうそれでいいじゃないか。
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