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しおりを挟むガシャガシャとシャッターを叩く音がして目を開けると昼前だった。嘘だろ。
「アラタちゃーん!」
由美子ねえちゃんの声!
慌ててソファから飛び起きベランダに出ると、やっぱり由美子ねえちゃんが下の路地からこっちを見上げている。
「ああ良かった! 居た! 貼り紙もしてないし電話にも出ないから心配したじゃないの~~! 麻里~アラタちゃん居た居た」
まりっぺまで顔を出したけど、こんなふうに上から二人並んだ顔を見るとめちゃめちゃソックリでびっくりした。
「ごめん寝坊した! 直ぐ開けるから!」
「調子悪いわけじゃないのね? じゃあ杏奈の自転車見てやって~。空気入れても入れてもダメなのよ~」
自分で店をやるようになって二年、定休日の日曜月曜以外9:00~18:00の営業時間はしっかり守って来たと言うのに。
─────……まったくのノーダメージとは行かないもんだ。
いやいや、これはゆうべ湊がしつこかったせいで体がだな。
「アラタちゃん、やっぱり早くしっかりした奥さん貰わなきゃねえ」
「ばーば解ってないなあ。変にしっかりしてるのはアラタなの。それに世話焼きなとこまであるからさ、むしろちょっとだらしないくらいの相手がいいのよー」
「あらまあ! そーゆーもの!?」
「…………」
姉弟のように育って来たまりっぺだが、そんな断言できるほど俺のこと知ってんのか。知らんだろう。知られてたまるか。
「でもそうねえ。保にいちゃんも言ってたわ。晴子さんが亡くなったあと、アラタちゃんが家事一生懸命やってくれて申し訳ないって。ほんとアラタちゃん、小学生から苦労して……やっぱり早く家族を持って幸せに」
「イマドキだし男同士でもいいんじゃない?」
「あらまあ! ボーイズラブね!」
バーストしているチューブを引き千切りそうになったが聞こえないフリだ。平常心平常心。
「ばーば、どっちかっつーとおっさんずラブでしょ」
「あらあ~~どっちにしても素敵じゃなーい」
柔らかそうでフワフワしてそうな女の子達は年取っても元気だが、頭の中までフワフワのお花畑なうえ腐っとるのか。いやこの母娘の場合はアンコでも詰まっとるんだきっと。
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