神様のミスで女に転生したようです

結城はる

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42 教会に行ってみる①

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 みなさんこんにちは。ヒナタです。

 コリン村での騒動も終わり、アンナたちにお別れの挨拶をして、夕方には王都に帰ってきました。

「なんか久しぶりに帰ってきた感じがするなー」
「そうだね」

 カレンとシャルが呟く。
 私は一度王都に帰ってきたので、そんな感じはしないが、2人にとっては、2週間近くも離れていた事になる。
 なんだかんだ、アミット村でのゴブリン討伐の依頼を受けたのに、ゴブリンキングもいて大変な思いをしたかと思えば、帰りにアンナを助けて、コリン村でのアンナのお母さんの看病とトロールの襲撃で思ったより王都に帰って来るまで時間が掛かってしまった。

「2人はどうする? 私は宿でも取って少しゆっくりしようと思うけど」

 とにかく私はゆっくり寝たい。
 安全な場所で、周囲の索敵をしなくても休める環境で寝たいのだ。
 王都を出てから索敵のため、気配遮断を発動させていたし、気配探知を取得してからは脳内マップで周囲の確認もしていた。

「そうだね。私たちもゆっくりしたいから、しばらくは自由行動にしようか」
「そうですね」

 カレンとシャルも自由行動をするみたいだ。
 私の勝手なイメージだけど、この2人は常に一緒にいるように見える。別々で行動することもあるのかな。
 そんなことを考えながら、私は前回と同じ宿に泊まることにした。
 部屋に入り布団に入る。
 すると、疲れが溜まっていたのかすぐに眠ってしまった。



 目が覚めると、外はすっかり明るくなっていた。かなり寝ていたみたいだ。
 私は今日何をしようか考えていると、ふと思いついた。
 そういえばこの世界に来てからもう3ヶ月が経過している。
 教会に行って、女神イスフィリアにでも挨拶をしておこうかな。
 私はすぐに支度をして、宿を出て教会に向かった。初めて教会に行くので少し緊張する。
 しばらく歩くと、教会が見えた。白い外装でいかにも教会って感じだ。
 緊張しながらも、私は教会の中へと入っていく。

「ようこそいらっしゃいました」

 白い祭服のようなものを着た男性が、出迎えてくれた。

「本日はどのようなご用件でしょうか」
「えーと、お祈りをしに来ました」
「はい。この道をまっすぐ行けば女神様の像がございます」

 私は男性に寄付金として金貨10枚を巾着袋に入れて渡した。
 相場がわからないから、どのくらい寄付するのかわからないしね。とりあえず多めには入れた。
 寄付金を受け取った男性の目が見開いていた。
 あれ? やっぱりあげすぎた?
 私は女神イスフィリアの像に向かって歩き出し、像の目の前でしゃがみ込んで目を瞑りお祈りを捧げた。

「女神イスフィリア様、久しぶりに会いに来ました」

 すると、私の意識が神秘的な空間に移っていた。

『ヒナタさんよく来たね! 思ったより早かったよ!』

 おー、本当に来られた。
 ここは神界かな。不思議な空間だ。

「久しぶりだね。女神様」
『そう? そんなに経ってないと思うけど……?』
「私にとってはもう3ヶ月もこの世界にいるからね」
『そんなに経っているんだ! 人間だと3ヶ月でも長いからね』

 さすが神様だ。
 時間の感覚がバグっている。

「今日はね。お礼を言いに来たんだ」
『お礼?』
「そう。私をこの世界に転生させてくれてありがとうってね。最初は女になったから複雑な気持ちもあったけど、最近は慣れてきたし、それに前世では考えられないくらいにたくさんの人に信頼されるようになったんだ。こんな気持ちになったのは初めてだったし、すごく嬉しくてさ。だから女神様には感謝を伝えたくてね」
『うぅ……。そんなこと気にしなくてもいいよ……。これも神様の仕事なんだからさ……。でも、何百年もこの世界の神様をやっているけど、こうやって感謝の言葉を伝えられたのは初めてだよぉ……』

 女神イスフィリアが泣き始めた。
 この人は少し天然だけど、すごくいい人だからこれからも仲良くしていきたい。
 神様と仲良くってかなり失礼だけど。

「じゃ、私はそろそろ戻ろうかな」
『あ、待って。一応ヒナタさんにも伝えておきたいことがあるの。ヒナタさんを転生させた時に不思議なことが起きたの』
「ん? どういうこと?」
『普通この世界の人が死んだらその魂は神界に来て、私が別の生命に転生をさせているの。それなのにヒナタさんを転生させた時にこの世界で死んだはずの男性の魂が神界に来る前に消滅したんだよね』
「それって、私が転生した時に近くにいた男性のこと?」
『その人じゃなくて別の国にいた人の魂よ』
「でも、女神様なんだからその原因を簡単に調べられるんじゃないの?」
『それがね、その魂が消滅した後に残るはずの男性の肉体はどこかに移動してるんだよね。しかも、その男性は私も感知できないようになっているの』
「そんなことってあり得るの?」
『通常じゃあり得ないよ。だから少し私も調べている途中なの』
「そうなんだ。私に何かすることってあるの?」
『今のところは特にないかな。ただ嫌な予感はしたから、ヒナタさんにも伝えたくてね」
「そっか、何か分かったらまた教えて」

 よく分からないけど、私の転生時に別の国で死んだ男性の魂が神界に辿り着く前に消滅したと。
 さらに、死んだ男性の肉体がその場からなくなって、女神イスフィリアも感知できないと。
 でも、そんなこと言われたって私にはどうすることもできないよね。
 女神様に頑張ってもらうしかない。

「じゃあ、今度こそ戻るね」
『うん! また会いに来てね!』

 そういうと、私の意識は女神イスフィリアの像の前にしゃがみ込んだ姿でお祈りをしていた。
 どうやら、戻ってきたみたいだ。
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