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43 教会に行ってみる②
しおりを挟むお祈りも終わり、帰ろうと後ろを振り返ると、さっきの男性とすごい華やかな祭服を着た男性がいた。
「本日はお越しくださりありがとうございます。私はこの教会の司教をしておりますマリッドと言います。多大なる寄付金をいただきまして、感謝申し上げます」
思ったよりも私はやらかしてしまったみたいだ。
司祭だけじゃなく司教まで挨拶に来るとは……。
「い、いえ。女神様にお祈りさせていただくのでそれくらいは……」
「せっかくですから、奥でお茶でもどうですか?」
なんか嫌な予感もするけど、せっかくだから話もしてみたいな。
「では、お言葉に甘えて」
そうすると司教に連れられて、奥の部屋に通された。
椅子に座ると、お茶が出てきて司教が話し始める。
「最近ですと教会に足を運んで女神様にお祈りをする方が減ってきまして……。信仰心が減衰しつつあります。数年前までは毎日たくさんの方が来て、祈りを捧げていたのですが、遺憾で仕方ありません」
なるほどね。
確かに私以外この教会には一般の人はいない。
それに私が寄付金を大量に送ったから、大切な信者に思われたのかな。
「そうなんですね。信仰心が薄くなったのは何か原因があるのですか?」
「純粋に女神様の存在に疑いを持っている人が多いのですよ。でも、確かに女神イスフィリア様は存在しているんです。昔のように信仰心が多い時は数年に一度、神託も授けてくれていましたから」
おい、イスフィリア何してんだよ。
あんたの存在自体が疑われ始めているぞ。
「それにしても、ここまで急に信仰心が無くなったのはちょっと不思議ですね」
「それについては理由があります。女神様からの神託を受けられるのは教会でも高位の神官だけなのですよ。この教会ですと、司教である私が該当します。5年くらい前にこの教会の司教が神託を偽装して、犯罪行為を横行していたのです。そして王都の住民はそのせいで、女神様を信用できなくなったみたいです」
ごめん、イスフィリア。
あなたのせいじゃないみたいだ。
同情するよ。
「それは、ひどい話ですね。その司教様どうなったんですか」
「首を切られました」
うん。まぁそうだよね。
クビって意味じゃないよ、物理的にだよ。
「ヒナタさん、ここには一般公開用の書物が置いてありますので、時間がありましたら読んでいってください。何かためになるかもしれませんから。それでは私はこれで失礼します」
そう言って、司教は部屋から出て行った。
書物か。教会にはどんなものが置いてあるのか気になるな、見に行ってみよう。
私は書物がある部屋に移動した。
すると、女神について記載されている書物があった。
私は一冊を手に取り内容を確認した。
その本には女神の歴史について記されていた。
内容を簡潔にすると、この世界の女神は500年程前に女神イスフィリアに変わったみたいだ。
初代は女神レアというものがいたらしい。
女神レアがいた時代はまだこの世界の人口が少なく、大地も荒れ果てていたため、女神の力で長い時間をかけて、自然豊かな世界を作り上げたそうだ。
それから、この世界も発展してきたところで、女神レアから別の新たな女神がこの世界の管理を受け継いだらしい。
しかし、その女神の名前は明らかにされていない。
そしてその後に、女神イスフィリアがこの世界を受け継いだような記載がされている。
ということは、この世界では最低でも女神が2回は変わっていることになる。
「女神にはこんな歴史があるんだね。見てみるとかなり面白い」
前世で歴史の授業を聞いても、あまり興味が唆られなかったけど、大人になると歴史って興味を持つよね。
そもそも女神が複数いることにも驚きだ。
1人のイメージが強かったけど、そんなこともないみたい。
なら女神にはどうやってなるんだろうか。不思議だ。
私は女神について記載されている本を閉じ、別の本を探した。
すると、1冊だけ黒色の本があった。
気になって題名を見てみると。
「蘇生の宝珠……」
題名には、そう書かれていた。
中身をみると、どうもベルフェスト王国にある、アスクレピオス迷宮という場所の最深部に蘇生の宝珠があるみたいだ。
これは死亡した者を蘇生させることができる、と書かれている。
しかし制限があり死亡してから30分以内で、そして蘇生の宝珠を手にしてから5分以内に使用しないと意味がないらしい。
本当かどうかはわからない。迷信かもしれないしね。
それにもし手に入れたとしても、この制限があるため使用されることはほとんどなさそうだ。
意味のないものがあるもんだね。
私はその後も書物を確認したが、女神イスフィリアについて書かれているものがほとんどだった。
外を見るともう日も傾き始めているので、私は教会から出て宿へと戻った。
宿に行くとカレンとシャルが食堂でご飯を食べていた。どうやら同じ宿を取ったらしい。
「カレンたちも同じ宿なんだね」
「おぉ! ヒナタじゃないか、偶然だな!」
カレンたちと一緒に夕飯を食べながら、久しぶりに飲んだビールは格別においしかった。
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