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44 カレンの試練
しおりを挟むみなさんこんにちは。ヒナタです。
私はカレン、シャルと一緒に王都でお買い物をしています。
どうも、カレンが新しく剣が欲しいみたいです。
そのため鍛冶屋に行くことになりました。
どうも王都には有名なドワーフの鍛治師であるガレットという人がいるらしいです。
「この前のゴブリンキングで剣が欠けちまったよ」
私を庇ってゴブリンキングの大剣を受け止めてくれた時にどうやら欠けてしまったみたいだ。
「ごめんね。私のせいで。お金は私が出すよ……」
「そんなこと気にすんなよ! 長い間使っていたからガタがきてたんだよ!」
カレンは優しい女性だ。
私の責任じゃないとずっと言ってくれていた。
「次はもっと丈夫なミスリルの剣でも買おうかな」
カレンがそう言って私たちは鍛冶屋に着いた。
「いらっしゃい」
中に入るとドワーフの人が出迎えてくれた。
店の中にはたくさんの剣が置かれている。
「ガレットさん! また剣を買いに来たんだけど、そろそろミスリルの剣でも買おうかなって思ってさ」
出迎えてくれた男性がどうやらガレットらしい。
「おう、カレンじゃねーか。見たことのない娘もいるようだがどちらさんだ?」
「この子はヒナタだよ。あたしたちの新しいパーティメンバーだよ」
私はガレットにお辞儀をする。
「ほう。カレンたちにも新しい仲間ができたのか。それはめでてぇな!」
どうやらカレンたちとガレットは仲が良いみたいだ。
昔からカレンはこの鍛冶屋でお世話になっているような雰囲気だ。
「すごい魔法使いなんだから! あたしたちが足を引っ張ってるよ」
「そ、そんなことないよ!」
カレンの発言に私は否定する。
迷惑をかけている自覚はあるからね。
「そうなのか。ヒナタと言ったか。カレンたちをよろしく頼むな」
「は、はい。私も迷惑にならないように頑張ります」
さて、私の紹介も終わったところでカレンが本題に入る。
「ガレット、ミスリルの剣ってまだ余ってる?」
「1本だけ余っているぜ。でも、おいそれと売るわけにもいかねぇ。ちゃんと使い手の実力を見てから売るようにしている。もちろんカレンも同じだ」
意外と厳しいね、
でも確かに、宝の持ち腐れっていうのかな。
剣が上等なものだと自分の実力も上がってように錯覚するかもね。
そんなこともあって私の短剣は安物を選んだ。
「おう! 構わないぜ!」
「ならこっちに来い」
ガレットに案内されてカレンは店の奥の方に行った。
私とシャルも付いていってどんなことが行われるのか見にいった。
店の裏にある庭に案内されて、ガレットが1本の剣と何かの鉱石をを出してきた。
「ここに、ミスリル鉱石がある。これを鉄製の剣一振りで、ミスリル鉱石を切断させることができたら合格だ」
なるほど。これはかなりの剣術がないと難しいな。
そもそもミスリル鉱石は硬い。
それを鉄製の剣で切るなんて困難だろう。
とは言っても私には剣術の才能はないからよく分からないけど。
「なるほどな。これは難しいな」
「合格するのは剣術が相当出来上がった剣士だけだ。今までも4人くらいしか成功していない」
カレンは鉄製の剣を握りしめミスリル鉱石に向かって剣を振り下ろした。
……すると、予想通り鉄製の剣が弾かれる。
「やっぱりか……」
「そんな簡単なもんじゃねぇよ。時間をやるから練習してみな。今日1日でできるようになったら合格だ」
カレンが真剣な顔つきになった。
その後もひたすらミスリル鉱石に向かって剣を振り下ろしている。
「ヒナタにシャルは暇だろうから、どこかに行っててもいいよ」
「え、カレンのことを応援しているよ。邪魔だったらいなくなるけど……」
シャルも私の隣で頷く。
「邪魔じゃないよ。ならしばらくは付き合ってくれ」
その後も何度も挑戦するが、なかなか思う通りには行かない。
でも、少しずつではあるが、感覚を掴んだみたいだ。
切断まではいかないが、ミスリル鉱石に亀裂が入ることもあった。
傷んできたミスリル鉱石を何度も交換して、剣を振り続ける。
それから数時間経ったところで、とうとうミスリル鉱石が綺麗に切断できるようになった。
カレンは急いでガレットを呼びに行く。
「よし、やってみてくれ」
ガレットが庭にやってきて、カレンに告げた。
カレンはさっきまでと同様にミスリル鉱石に向かって剣を振り下ろした。
すると、まるで豆腐を切ったかのような鮮やかな切り口でミスリル鉱石が切断された。
「やった!」
「ふっ、合格だ。おめでとうカレン」
カレンは両手を上げて喜んだ。つられて私たちも喜んだ。
「こっちに来い。カレンにぴったりの剣があるからよ」
ガレットがそう言って、店の中に入る。
ガレットが準備していたのは今までカレンが使っていた剣よりも少しだけ剣幅が狭いものだった。
「これは細剣よりは太いが、かなり軽くて頑丈な作りだ、それに切れ味は抜群だ。女が使えるように作った剣だ」
カレンが剣を持って眺めている。
とても綺麗な剣だった。
「うん、軽いね。これなら攻撃の幅も広がりそうだよ」
カレンも満足した顔をしている。
カレンはお金を支払い、私たちはガレットにお礼を言って店を出た。
「カレン、お疲れさま」
シャルがカレンに向かって労いの言葉を言った。
「2人とも付き合ってくれてありがとうね。そうだ! もう遅くなっちゃったし、酒場にでもいって夕食にしよう!」
そうして、3人で酒場へと入った。
案内された席は出入り口付近だったが、店の角だったため周りに客がいなくて落ち着いた場所だった。
席について、つまみ用に肉や野菜を食べながら、ビールを飲んで楽しく盛り上がっていた。
「それにしても、あのガレットさんの試験は難しそうだったよね」
「あれは、かなり難しかったよ。ミスリル鉱石なんて切ったことなかったから苦労したな」
カレンでも苦労したんだから相当難しいのだろう。
でも1日でできるようになるなんて流石はカレンだ。
絶対私には真似できない。
3人で会話をしていると、遠くの席が騒がしくなっていた。
「おい! 酒はまだ来ないのか!」
「はい! 今すぐ持っていきますので!」
「遅すぎるぞ! この店を潰されたいのか!」
どうやらクレーマーだ。
あんなこと言って恥ずかしくないのかな。
席が離れていてよかったよ。
「俺はミスリアド家の者だぞ! ここの平民の誰よりも早く持ってくるのが当然だろう!」
そう言って、店員の男性を殴っていた。
本当に勘弁してほしい。
この世界の貴族はブルガルド家以外はこんなのしかいないのかよ。
「も、申し訳ありません!」
「もういい! もう帰る。俺を怒らせたんだから、金なんか払わんぞ」
なんて理不尽なクソ貴族だ。
あんなのとは関わりたくないから目を逸らす。
でも、残念なことに私たちがいるのは出入り口の近くの席だ。
こっちに向かってクソ貴族が来るが、関わらなくて済むように3人とも目を逸らしていた。
「おい、そこの金髪の女よ。見目がいいな。俺の愛人にしてやるからついて来い」
シャルに向かって、クソ貴族が絡んできた。
シャルも顔が引き攣っている。
近くでクソ貴族の顔を見てみると、前に子供にいちゃもんつけていた貴族だ。
ケータによって逃げ出していたが、まだ懲りずにこんな横暴なことをしているのかよ。
本当にどうしたものか……。
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