神様のミスで女に転生したようです

結城はる

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45 不穏な雰囲気①

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「そこの金髪の女よ。見目がいいな。俺の愛人にしてやるからついて来い」

 本当にクソ貴族だな。
 公衆の面前で愛人になれって失礼すぎるでしょ。

「そ、そんな! 困ります!」

 当然のようにシャルが断るがクソ貴族も黙っていない。

「貴様。この俺の愛人になれるのだぞ。平民にとって名誉だろう」
「無理なものは無理なんです!」
「平民の分際で俺の誘いを断るとどうなるのかわかっているのか。ただでは済まんぞ」

 俺様キャラって初めて見たけどかなり痛いな。
 自分で言っていて恥ずかしくないのかな。
 貴族に脅されたためかシャルも怯えている。
 さすがに貴族の誘いを断り続けるのは難しいだろう。
 私が助けてあげないと。

「いくら貴族の方でも、そんな脅しをこんな公衆の面前で行っても良いのでしょうか」
「誰だ貴様は」
「彼女のパーティメンバーですよ」
「ふん、冒険者風情がいきがるなよ。貴様ら平民は貴族のために生きているんだから、その貴族のいうことを聞くのは当然だろうが」
「あなたのミスリアド家ではそういう考え方なのですね。それに、他の貴族もあなたの家と同じ考え方なんですね。そのような他家への侮辱発言は慎まれた方がよろしいのでは」

 クソ貴族が悔しそうな顔をしている。
 なんだその顔は。お前が言ったことだぞ。

「あなたの発言はここにいるお客様の全員が聞いています。明日にはこの王都でも噂が広がりそうですね」
 
 たたみかけるように私が言ったところ……。

「くそっ! 覚えてろよ!」

 クソ貴族は酒場を出ていった。
 というか、この言葉2回目なんだけど。
 もしかして毎回言っているのかな。
 
「ヒ、ヒナタさん。ありがとうございます……」
「気にしないで。あのクソ貴族が悪いんだから」

 それにしても空気が悪くなったな。
 私たちは酒場を出て宿へと戻った。

 私はカレンたちの部屋に行き、今日のことについて話していた。

「あの貴族はなんだったんだろうな」
「実は……、私は見たことがあるんだよ」
「え、そうだったんですか……」

 私は前にあの貴族に会った時のことを思い出していた。
 あの時も公衆の面前で子供に悪態をついていた。
 自分の権力を振りかざすのが好きな貴族なのかもしれない。

「うん。前に見た時も街中でぶつかった子供に悪態をついていたよ……」

 2人ともうつむいていた。
 あの貴族はそういう奴だと割り切った方がいいかもしれない。

「うん、今日のことは忘れた方がいいね」
「そ、そうだね。気にしないでおこう」
「はい」

 カレンの言葉に私とシャルが頷く。
 その日はそのまま3人で寝てしまった。


 翌朝目覚めて3人で話し合い、日帰りでできる依頼を受けることになった。
 早速冒険者ギルドに行き、依頼ボードを確認する。
 
「このオーガ討伐とかどう?」

 オーガか。まだ出会ったことないからぜひ受けたい依頼だ。

「私はオーガを見たことないから賛成かな」
「わ、私も大丈夫です」

 私とシャルも賛成する。
 ということで、今日の仕事は森で見つかったオーガ討伐だ。
 私の気配探知で魔物の位置はわかるから、歩いていればそのうち見つかるだろう。

 私たちは森に向かい、オーガの目撃情報があった周辺へとやってきた。

「どうヒナタ? この辺にいそう?」

 私は気配探知で周囲の反応を調べた。
 すると、ここから300mくらい先に反応があった。

「この先に反応がある。行ってみよう」

 先に進むとオーガが2体いた。
 こちらにはまだ気がついていないようだ。

「ヒナタ、ここはあたしたちに任せてくれ」
「え、うん」

 なんだ私も戦いたかったのに。
 でも、なんだかんだこのパーティで共闘したのってゴブリンキングくらいだ。
 2人にも活躍の場は設けた方がいいのかもしれない。

「いくぞ! シャル!」
「はい!」
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