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61 象徴の証②
しおりを挟む宿の部屋に行くと2人がいなかった。
「あれ? どこいった?」
私は宿の店主に2人のことを聞く。
「確か……、2時間前くらいに出て行ったよ」
「そうでしたか。ありがとうございます」
私は外に出て2人を探しに行く。
すると、街中で一際目立っているお店があり、そこに並んでいるカレンたちを見つける。
私は2人に近づいて話しかける。
「2人ともここで何をしているの?」
後ろから話しかけたからか、2人とも驚いていた。
「え、えっと……」
ん? どうしたんだろう?
2人とも目が泳いでいる。
「何かあったの?」
「木彫りの女神様のフィギュアを買いに来たんだ……」
「……は?」
女神様のフィギュアだと。
それって私のフィギュアってことだよね。
「なんでそんなのに並んでいるの?」
「き、記念にね……?」
なんの記念だよ。
でもさすがにそんなの買う必要ないでしょっていうのも気が引ける。
2人が欲しくて買うんなら私が止める権利はない。
「そ、そう。なら買ったら見せてね」
私は2人から離れて買い終わるまで待っていた。
どんなフィギュアなのか気になる。
買ってきたであろう住民がフィギュアを持っているがよく見えない。
しばらくして2人が戻ってきた。
「この女神様、ヒナタそっくりに作られているな」
私は手渡された女神様フィギュアを見る。
綺麗に塗装されていて風貌は完全に私だ。
そして岩石弾を放っている姿だった。
惚れ惚れするほどの躍動感。
たった数時間でこれを大量生産しているとか何人の人が関わっているんだよ。
でも唯一似ていないのは、私より胸が大きいことくらいか……。
余計なお世話だよ。
それにスカートの中のパンツが白になっている。
ここまで再現しなくてもいいじゃないか……。
「なんで3つも買っているの?」
「ヒナタにも買ってきたよ」
いや、いらねーよ。
そんな笑顔で渡さないでよ。
断れないじゃん。
「そ、そう。ありがと」
私は引き攣った笑顔でお礼を言った。
間違いなくこの姿で銅像が出来上がるよね。最悪だ。
って違う。フィギュアで忘れていたけどそんなことを言いたくてカレンたちに会いにきたんじゃない。
「2人とも。領主様から夕食の招待があったから、夜は空けておいてね」
「嫌なんだけど……」
「私も嫌だけど、断れないじゃん。だから道連れだよ」
「なんてことをしてるんだよ……」
カレンたちには呆れられたが、そんなことどうでもいい。
私のフィギュアと銅像がこの街で作られるということに比べれば大したことない。
「さ、宿に帰るよ」
私たちは宿に帰り、食堂で馬車の迎えを待っていた。
すると宿の店主も女神様の話題を出してきたので、恥ずかしくて部屋に籠った。
夕方になってきたところで、馬車の迎えが到着した。
馬車に乗り込んで、領主邸に向かう。
まさか1日に2回も行くことになるとは。
「よく来たね。ヒナタさんとお仲間の方」
「お招きいただきありがとうございます。こちらの赤髪で綺麗な女性がカレン。金髪の美少女がシャーロットです」
「カレンさんとシャーロットさんか。3人ともとても麗しい女性だ」
こんな恥ずかしいセリフをよく平然と言えるな。
貴族にとっては社交辞令みたいなものなのかな。
食事が用意されている部屋に案内されて、領主と私たちの4人で食事をいただく。
「噂だとケートスを討伐した女神様は空を飛んでいたと聞いていたが、実際はどうなんだ?」
まぁ空は飛んでいたけど……。
でも、自分の能力を教えるのは嫌だな。
「噂ですので、あまり間に受けない方がいいんじゃないでしょうか」
「確かに噂だからな。事実かどうかはどうでもいいな。何より、ケートスが討伐されたことを喜ぶべきだ」
その通りですよ。
あまり詮索しないでね。
「あと、女神様の銅像を作ることが正式に決まったわけだが、街で売られ始めたフィギュアと同じデザインでも問題ないか」
ダメですとは言えないよね。
フィギュアと銅像が違う女性だったら反発が起きるよ。
あと、カレンとシャルは隣で笑うな。
「空想の女神様なので特に問題はないと思いますよ」
ここまで話が進むと、もう諦めるしかないよね。
本当はフィギュアだって銅像だって嫌なんだよ。
勝手に噂に尾ヒレが付いて一人歩きしているんだから。
どうやってもこの騒ぎは止められない。
「分かった。銅像ができるのは時間がかかるだろうが、またこの街に来たときは見てもらいたい」
どうせまた新鮮な海産物を求めて来るだろうから見ることにはなるだろう。
この街にいるのも少しだけ窮屈なので、さすがにそろそろ王都に帰ろう。
サーシャにも会いたいし。
私たちは、領主様との堅苦しい食事会も終わって、かなり疲れたので宿に戻りすぐに眠った。
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