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62 王都に帰る
しおりを挟むみなさんおはようございます。ヒナタです。
タラサの街は連日、女神様の話題で盛り上がっています。
どこを歩いても女神様の話が出てくるので、かなり居づらいです。
私の話が出ているわけではないですが、なんか容姿が私に似ていることから女神の御使い様扱いされて、声を掛けられるようになりました。
そしてもちろん、あのビーチバレーをした男どもも声を掛けてきた。
本当に勘弁してもらいたい。
でも、御使いではないけど女神イスフィリアとは親しい仲だから、あながち間違っていないのかも?
「カレン、シャル。王都に帰ろう……」
このままタラサの街にいると私の精神がもたない。
街を歩いていて話しかけるのはまだ分かる。
ひどいのは、わざわざ御使い様を一目見ようと宿に来ることだ。
実物の私を見て、御使い様は胸が控えめなんですね、とか言ってくるし。
余計なお世話じゃボケ。
討伐した本人ではあるけど、女神様でもないし御使い様でもないんだよ。
「そうだな……」
私の気持ちを察してくれて、カレンも帰ることに同意してくれる。
私はこの街にいると住民から話しかけられて大惨事になるので、フードで顔を隠して冒険者ギルドに行く。
依頼ボードで王都への護衛依頼を見つけて受付に持っていく。
「あ、ヒナタさん。この街を救ってくれて本当にありがとうございました」
ミルファが私に向かってお礼を言う。
やはりフードを被っていても分かる人には私って分かるみたいだ。
私たちは依頼も正式に受注したので冒険者ギルドから出る。
「いい街だったね」
「そうだな。活気があっていい街だったよ」
シャルの言葉にカレンが返す。
2人にとってはいい思い出の街なんだろう。
私にとっては、最初は海鮮丼が食べられて良い印象だったけど、御使い様扱いされてから嫌な思い出だけで埋め尽くされたよ。
ほとぼりが冷めるまではこの街には来られないだろう。
私たちは宿に戻り、街を出ることを伝えた。
そして御使い様への住民の訪問で迷惑をかけたのでお詫びの品として、昔に作ったパンケーキを差し上げて宿から出た。
依頼主の元へ行きカレンが代表して挨拶をする。
「冒険者のカレンとシャーロット、そしてヒナタです」
「よろしくお願いします。カルタ商会のハナフダと言います」
カルタ商会ってここに来るときにお世話になった商会だよね。
今度は別の人が王都に向かうんだ。
お互いの挨拶も終わったので、馬車に乗りタラサの街を出る。
「それにしても、タラサの街で噂されている女神様は本当にいたと思いますか?」
依頼主のハナフダからもこの話題か。
王都に行くまでは、この話題から逃れられないのかもしれない。
会話はカレンに任せて、私は気配探知に集中しよう。
「あ~……。どうだろうな。でも、実際に見た人がいるなら、信じても良いかもしれないな……」
カレンが私を見ながら言っている。
こっち見ないでよ。
「やはりそうですか。私もタラサの街に女神様が舞い降りたと信じております」
「あたしが言うのもなんだけど、なんで信じられるんだ?」
「長い間、行商人として各地に回っていますから分かるのですが、海の魔物を倒すのは困難を極めます。軍隊でも呼んで何隻も船を出しての討伐になりますから。それなのにあの海の魔物を一晩で討伐するのは人間では不可能です。なので女神様が討伐してくれたと考えます」
「……人間には不可能か」
それくらい私が非常識なことをしたということか。
もし私がタラサにいなかったら、軍隊でも呼んで討伐していただろう。
そして被害も多く、人もたくさん死んでいたと思う。
私が飛行魔法を覚えていてよかった。
あとカレン、私を見るな。
女神様の話はその後も続いていたが、カレンが対応していた。
たまにカレンが私を見てくるから、睨んでやったよ。
夜になったので、野営の準備をして、ハナフダから提供された食料を食べる。
タラサへと行くときと同じで干し肉と野菜スープだ。
カルタ商会は夕食にこれを提供する商会と覚えておこう。
夜はカレン、シャル、私の順番で見張り当番だ。
これもタラサに行くときと同じだ。
今回は盗賊の心配もないので、ゆっくりできそうだ。
噂だと私たちが捕らえた盗賊からアジトを聞き出して、壊滅させたみたいだ。
でも警戒はしたいので、気配探知で周囲の反応を確認しながら朝を迎えた。
「おはようー」
「おはようございます」
カレンとシャルが起きてきた。
少し寝間着がはだけて興奮する。
朝から刺激が強すぎる。
「おはよう」
私も挨拶を返して、朝食を食べた後、馬車に乗って出発した。
しばらくすると、気配探知に反応があった。
400メートルくらい先に魔物の反応が5つある。
でも、魔物の反応がする中央には人間の反応もある。
ということは魔物に襲われているってことだ。
「すいません! この先で人が魔物に襲われています!」
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