神様のミスで女に転生したようです

結城はる

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63 運命の出会い

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 私がハナフダに向かって叫ぶ。

「どうするヒナタ!?」

 カレンが私に意見を求めてくる。
 私たちの護衛対象はあくまでハナフダだ。
 でも、魔物に襲われている人を放置もできない。
 なら、私だけでも行ったほうがいいだろう。

「私が先行していくよ! カレンたちはこのまま進んで!」

 私は急いで馬車から飛び降りて、身体強化を使って走り出す。
 久々に使ったが、かなり有用なスキルだ。
 すごいスピードで走れる。100メートル8秒くらいで走っている気がする。
 前世なら私もオリンピックで金メダルが狙えるよ。

 襲われている馬車が見えてくると、5体のオーガがいた。
 馬車の護衛がすでに倒れている。
 ちょっとまずい状況だ。私が先行してきて正解だ。

「ロックショット!」

 岩石弾ロックショットをオーガ5体に放つ。オーガの頭に命中させてオーガがその場で倒れる。
 もう、岩石弾のコントロールが完璧すぎる。
 100メートル離れていても、オーガの頭に当てることに成功した。

「無事ですか!?」

 馬車の扉を開けて中にいた女性に声をかける。

助けが来ましたか……」
「え?」
「いえ、なんでもありません。お名前を伺っても良いでしょうか」
「冒険者のヒナタと言います」

 中にいた女性はかなりの美人だ。
 背中まで流れるピンク色の長髪で、さらに長身の美しい女性だ。
 ここまでの美人は初めて見た。

「ヒナタ様。助けていただいてありがとうございます。私はサンドラス王国が第一王女ソティラス・サンドラスと申します」

 おっと、王女様でしたか。
 通りで美人なわけだ。
 なんか王族とか貴族の女性は美人のイメージが強いけど、王族はまた別次元だな。

「王女様でしたか。これは失礼致しました!」

 礼儀作法は知らないが、以前国王と謁見した時みたいに片膝をついて頭を下げる。

「助けていただいた方に頭を下げていただく必要はありません。どうか頭をお上げください」

 言われた通りに頭を上げる。

「護衛の騎士もオーガによって殺されてあのままだと私も危なかったでしょう。ヒナタ様には感謝の言葉もありません」
「いえ、たまたま通りかかっただけですので……」

 王女と2人きりで話すのは緊張する。
 まさかこんな場所で王女と会うとか誰が想像するよ。

「ヒナタ! 大丈夫か!」

 ちょうど良いところで、カレンがやってきた。
 ナイスタイミングだよカレン。

「馬車の中にいた人は無事みたいだな」
「あ、カレン。うん、王女様だけは助けられたよ」
「は? 王女様?」

 カレンの目が点になる。
 この顔は初めて見るな。面白い。

「うん。サンドラス王国の第一王女様だったみたいだよ」
「……マジで?」
「マジで」
「……失礼しました!」

 カレンが勢いよく土下座をした。
 やばい、カレンが面白い。
 私がカレンを見て微笑んでいると、王女様が話し始めた。

「えっと、カレン様ですか。ヒナタ様のお仲間の方でしょうか?」
「はい! ヒナタとはパーティメンバーです!」

 カレンは土下座したまま話し始める。
 私はそれを見て失笑する。

「カレン様もそのような態度は不要です。楽にしてください」
「……ありがとうございます」

 カレンの顔が青ざめている。
 かなり緊張しているみたいだ。
 でもカレンはまだ私と2人だから良いじゃん。
 私はさっきまで2人きりだったんだよ。

「申し訳ないのですが、騎士が殺されてしまったので王都までご一緒させてもよろしいでしょうか?」

 王女様も王都まで同行するとかどんな罰ゲームだよ。
 御者ができる私かシャルが王女様の相手をすることになる。
 シャルは絶対そういうのはできないから、消去法で私だ。

「では、私が御者と護衛を致します」

 3人で揉めたくないので、率先して立候補する。

「ヒナタ様。ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いします」

 王女様と2人で王都に帰ることになりました……。
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