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68 ケータの迷宮攻略(クロト迷宮編)③
しおりを挟む「ゴギャアアァァァ!」
「なんだ!?」
見たこともない魔物だ。
上半身は人間の女性のような姿をしているが、下半身は魚のようだ。
そして何より、腹部からは犬の頭が6つ出ている。かなり気持ち悪い。
「詳細鑑定……スキュラ……?」
本当に聞いたことのない魔物だ。
とりあえず、さっきと同じように灼熱地獄で攻撃を仕掛けてみるか。
そう考えていると、スキュラが急に海岸に上がってきて、俺に向かってきた。
「嘘!? 陸にも上がってくるのかよ」
ものすごいスピードで距離を詰めてくる。
海岸近くに生えていた木々を薙ぎ倒して、スキュラの腹部に生えている犬の頭が木を捕食している。
「めちゃくちゃだな」
とりあえず陸に上がってこられると近距離戦になるため、灼熱地獄では俺にも被害が出る。
火魔法だと危険だと判断して、土魔法を行使しよう。
「ロックレイン!」
岩石雨によって無数の岩石を上空に出現させて、スキュラに向かって岩石が落とされていく。
ドドドドドドドド!!!
しかし、スキュラは下半身が魚とは思えないスピードで、無数に降り注ぐ岩石を回避していく。
しまいには、尾ヒレを使って岩石を振り払ったりもしている。
「厄介だな……」
どんどん俺に向かって移動してくるため、飛行魔法で上空へと避難する。
すると、今度はスキュラも尾ヒレを上手に使い、上空に飛び跳ねてきた。
俺に向かってスキュラの腹部にいる犬たちが口を開いて食べようとしてくる。
飛行魔法で飛んでいるため、上空ではこっちに地の利がある。
飛び上がってきたスキュラを回避してそのままスキュラは落下していく。
再度、上空から落下していくスキュラに対して岩石雨を行使する。
最初は岩石を尾ヒレで振り払っていたが、さすがに落下しながらの回避は難しかったらしく、一度岩石に直撃してからは血を吹き出し、苦しみながら落下していって地面に叩きつけられる。
俺はすぐさま、岩石をスキュラに落とし続けた。
無数の岩石によってスキュラの姿が見えなくなった。
「これでどうかな……」
これで倒せていたら嬉しいけど、どうなんだろうか。
普通の魔物ならこれで倒せるはずだが、この迷宮の魔物は普通じゃない。
しばらく待っても反応がないが、第五層に繋がる扉が現れないということはまだ生きているということだ。
「ギャアアアァァァァ!」
岩石で埋もれていたスキュラが岩石を振り払って姿を現した。
心なしか岩石雨によって損傷したはずの身体が元に戻っている。
「クソ! 岩石の中で回復してやがったか!」
今度はスキュラが海に戻っていき、潜っていくと姿が消えた。
バンバンバンバン!
突然海面から無数の水弾のようなものが飛び出してきた。
弾丸のようなスピードで放たれてきたが、1つずつの水弾は大砲のように大きい。
すぐさま回避したが、左手に1つの水弾が直撃する。
「ぐあああぁぁぁ!」
一瞬の出来事だった。
左手を見ると、肘から先が無くなっている……。
「やばい……」
この世界に来て初めてまともにダメージを与えられた気がする。
飛んでくる水弾を回避しつつ、すぐに光魔法を使って左手に上級回復魔法を唱える。
「ハイヒール」
左手が生えてくる。
初めて唱えたが、欠損部位が生えてくる状況はかなりグロテスクだ。
左手も回復したが、この状況はまずい。
すぐに転移魔法を使ってスキュラから距離を取る。
海の中にいるから、灼熱地獄を行使したいが、姿も見えていない海中で意味があるのか分からない。
海中から飛び出してこないかな。
魔法で海中から出ざるを得ない状況にしてみてはどうだろう。
転移魔法でスキュラがいると思われる海上付近に移動して魔法を行使する。
「アブソリュート・ゼロ」
絶対零度を海に向かって発動させる。
俺はすぐに転移魔法で上空に避難する。
瞬時に海が凍っていき、海中にいたはずのスキュラが急いで海上に飛び上がってきた。
俺はすぐにスキュラに向かって灼熱地獄を放った。
「インフェルノ!」
スキュラに直撃して炎に包まれる。
クラーケンと同じように自己再生を繰り返しては燃えるのを繰り返している。
ものすごい悲鳴みたいなのが聞こえているが、こちらも左手をやられているのでお互い様だ。
しばらくすると、スキュラが炭となり海岸に扉が出現した。
「やっと終わったか……」
第四層でここまで苦労するとは。
魔力もかなり消費した。
早く休みたい。
俺は扉を開けて第五層に向かった。
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